第88話:新聞部
第八十八話
部活動にはちゃんと来るようにと言われている為に行かなくてはいけないだろう。たとえ、フラれた相手がその部の部長だったとしてもだ。
まぁ、有楽斎としては相手に会いたくないと言う事でもないのでしっかりと部室に訪れている。
「吉瀬君だっけ」
「呼び捨てでもいいですよ」
たった二人しか部員数が居ないと言うのに部室は広かった。立派な木の看板もこさえてもらっている。
「そう…吉瀬君、今年から帰宅部に入ろうとした生徒はどこかの部活に所属しないといけないのよ」
「えーと、つまり帰宅部にはなれないって事ですか」
「そういうことね」
それを最初から言ってもらえればこんな部活に入らないんだけどなぁ……とは、さすがに部長が居る前では言えなかった。
しかし、入ったものは仕方が無いので新聞部について知っておこうと考える。もしかしたら帰宅部になるよりもメリットがあるかもしれないからだ。
「新聞部って何をするんですか」
「何もしないわ。ま、何か気が向いたらするけどね」
そういってノートパソコンを立ち上げ始める。
「改めて自己紹介しておくけど御手洗花月よ。よろしく」
「はぁ、よろしくお願いします……何もしないって…この高校の学校新聞とかつくらないんですか」
「それは他の部活がやってくれるわ」
そういえばもう一つ新聞部があったような気がしないでもない。
「私が部長で、あなたは必然的に副部長よ」
「それはまぁ、いいですけど」
非常に適当な部活なのだが、それで本当にいいのかと思う。そもそも、活動しない部活なんて学校側から見たら部室等の無駄遣いではないかと思われるだろう。
「あのー、活動しないのならやめたいんですけど……」
「あら、昨日は私に告白してきたのにもうやめたいっていうの」
「ええ、フラれましたから」
「意外とあっさりしてるのね。ストーカーにでもなるかと思ったのに」
「まぁ、信条でして……で、どうやったらやめられるんですか」
「そうねぇ……」
簡単な書類手続きで辞められるのなら御の字だろう。もちろん、手続き等が簡単で、入会したりしても退会するときは非常に面倒な手続きなどを踏まないとやめられないといったこともあったりする。
「じゃあ『野々村関連施設連続襲撃事件』についてちょっとしたレポートを書いてきてもらおうかしら」
「え………」
ノートパソコンを閉じて移動式のホワイトボードに『野々村連続襲撃事件』と書いていく。
「あの、やめたいんですけど…」
「活動ないからやめたいんでしょ」
「ええ、まぁ…」
その課題をやったら辞めさせてくれるのだろうかと思ったのだがどうやら違うようである。
「新聞をにぎわせているこの事件のことについて一学期中にまとめること。もちろん、感想文を書くんじゃなくて自分が得た情報をまとめてレポートにするのよ。学校新聞なんて甘っちょろいものなんて書いていられないわ」
書くのは僕みたいなんですけど……と言ってみたが花月は無視していた。
「わかったかしら」
「……わかりました」
「そう、それならいいわ。このお題の期限は一学期中だけどあまり軽く見ては駄目よ」
変なことを言わなければよかったなとため息が出る。
「あら、足りないかしら」
「充分です」
「喜んでもらって私も嬉しいわ」
「嬉しくないですよっ」
まさか部活動で宿題が出てくるとは思いもしなかった…とりあえず学生手帳に期限を書いておく。
「ここで作業してもいいんですか」
「ええ、パソコンは此処にあるからね。吉瀬君の家にあるのならそっちでやってもいいし、手書きで出してくれても構わないわよ」
「御手洗先輩も書くんですよね」
「気が向いたらね」
「部長なのに…」
「部長だからよ」
偉いなら別にしなくてもいいのよ、やりたくないのなら部長の座を奪ってみなさいっ……花月の目はそう語っている。
「副部長に何か権利ってないんですかね」
「ないわね」
きっぱりと切り捨てられた有楽斎はため息をつくのであった。
有楽斎の以前いた位置に雪がいる。そう思っていただいて結構です。地位、金、許嫁……すべて雪が手に入れています。