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第71話:文化祭への一歩

第七十一話

 運動会も終わり、クラスの親睦がそれなりに進んだかと言えばそう言ったわけでもない。朝のHRが終わって一時間目までの短い休み時間で小競り合いがあったりする。

「お前のせいで負けたんだ」

「いいや、球投げなんて子供のやることだとかいってお前がサボっていたからだろ」

「お前だって陰で誰かにぶつけてただろっ」

 まぁ、争う連中もいれば辛酸を舐めされられた者達もいる。

「まさか我々のデルタフォーメーションが校長先生に破られるとはな」

「ああ、完全に相手を侮っていたようだ」

「来年こそは校長を討ち取って見せようぞ」

 ジョニー、大五郎、ヘルベルトは決意を新たに結束を強めていたのだった。

「勘弁してくれよ」

「うわ、その怪我どうしたのさ…」

 友人は友人で絆創膏を貼られまくっている。

「あの連中のパイロットだったのさ」

 ため息つきながらジョニーたちのいる方向を親指で示す。

「でもまぁ、お前が女子と二人三脚なんてやってなくてよかったぜ」

「相手が校長先生だったからね」

「本当、あの姿は全生徒が固唾を飲んで見守っていたからな………ありゃ市中引きずりまわしの刑そのものだわ…」

 思いだしただけでもぞっとする……と言いたいところだがあいにく記憶があまりない。

「うーん……まぁ、なんだ。運動会でも誰かといちゃいちゃするかと思えばそうでもないんだなぁ」

「え…あー、そりゃあそうだよ。っというか、僕はいちゃいちゃなんてしてないよ」

 保健室での何かが頭をよぎって行ったが急いで消し去った。

「日差しが強かったのにお前は日焼けしてないみたいだし……なんだか、肌がきめ細やかになってきたな」

 そういってしげしげと有楽斎の肌をなだめていた。

「白いしなぁ」

「そうなんだよねぇ……なんでだろ」

 夏休み以降、肌の白さは日を追うごとに白くなってきているのだ。

「それによぉ、有楽斎の近くにいると涼しい気がするんだわ」

「最近よく言われるよ」

「……お前、もしかして身体から冷気を発する冷凍人間だったのか……」

「そんなわけないでしょ」

 それなりに合っている答えなのだが有楽斎がそのことを知る由もない。

「ま、運動会終わったら今度は文化祭だからなぁ。つくづくスケジュール設定がおかしいと思うよ」

「今度もまたクラス委員決めるんだよねぇ」

「お前は運動会のクラス委員やったからなぁ。多分自薦しない限りなることはないだろうな」

 友人がそう言ったところでチャイムが鳴った。そして、先生が入ってくる。

「よーし、全員席につけよ。一時間目だが……早速文化祭のクラス委員を決めるぞ」

 誰もかれもが面倒だと言う表情である。

「先生、俺がやりますよ」

 そんなクラスに舞い降りた救世主……源友人は左手を挙げて振っていた。クラスメートたちがこれで面倒から解放されたと言う表情を見せたのだった。

「じゃあ源でいいか。反対意見がある者は挙手で発言しろ」

 誰も手を挙げないのを確認すると黒板に汚い字で『源友人』と書かれる。

「決定だな。じゃあ自習だ」

 先生はさっさと教室を後にして生徒たちは騒ぎだした。

「友人、よくやる気になったね」

「そりゃまぁ、あれだよあれ。こういうのは率先してやっておけば女子からの株が上がるだろ。合法的に女の子と近づけるはずだからな」

 片目をつぶって見せたが似合っていない……というのは置いておくとして、こいつで大丈夫なのだろうかという不安がよぎったりする。

「俺もたまには目立つようなことをしないといけないからな……明日が何するか決めるからいい案考えておいてくれよ」

「いい案ねぇ…」

 特にこれと言って面白いようなものは思いつかなかった。



――――――――



「へぇ、今度は文化祭なんだね」

「うん、一般開放もやるみたいだから雪も来るといいよ」

 運動会当日は調子が悪かった為に家で寝ていたのである。有楽斎が再び倒れたと聞いて心配していたのだが……普通に帰ってきて驚いた。

「明日は何をするのか決めるんだけど特に何かがやりたいってわけでもないんだよねぇ……何も要望が無かったら休憩室になると思う」

「ふーん」

「喫茶店とかやるとしてもどこもやってそうだしさぁ……」

「大変だね」

「うん」

 雪は有楽斎の影に注目していた。何かが変だと思ったら完全に角が伸びきっているのだ。もちろん、有楽斎に角なんて生えていない。

「………」

「どうしたの」

「う、ううん。別に何でもないよ」

「ならいいんだけど…」

 今のところは何も影響が無いようだし、鏡に映る有楽斎はもはや別物……雪女みたいだと雪女の雪が思うのだから誰が見ても雪女なのだろう。有楽斎が気が付いていないのだけが救いだろうか。

「何かいい案はないかなぁ」

「え」

「あ、いいや……ほら、有楽斎君が困っているようだから私も考えてみようかなって……あ、あー……ほら、紙芝居とかやったら面白いかもよ」

「紙芝居かぁ……」

 何とかごまかせたようだと雪はほっと一息ついた。霧生からは一切連絡が無いし、とりあえず様子見をしておいた方がいいだろう。

「あ、悪いけど今日部屋の掃除したからね」

「ありがと…あ、理沙から電話だ」

 掃除も兼ねて久しぶりに有楽斎の部屋に監視カメラを設置もしている。もちろん、プライバシーを覗き見する為ではなく、一応『有楽斎の体に変化が起こらないか』というちゃんとした理由があるのである。念のためだが、雪はあくまで有楽斎の事を思ってのことである。決して最近になって理沙からの電話が増えたから探るために監視カメラなどを設置したわけではない。


いわば一区切り前の最終章です。此処から先は各自をピックアップしたような感じで話を進めていきたいなぁと思っています。

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