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第65話:運動会クラス委員

第六十五話

 夏休みも終わりを迎え、教室では久しぶりなどといった言葉が聞こえてきたりする。

「有楽斎久しぶりだなー」

「ああ、友人か」

「友人か………じゃないよ、全く。聞いたぞー、お前夏休みは女の子達と夏祭りに行ったり、水族館にいったりしたんだってなぁ…」

 実に恨めしそうな顔が有楽斎に近づいてきたがそれを押し返す。

「まぁ、事実だけど…理沙と榊さんと御手洗先輩だよ……あと、居候している子と一緒だったけどさ」

 そういった有楽斎の肩に手を当てて友人はため息をついた。

「それ、どう見ても自慢話にしか聞こえないからな。よかったなぁ、有楽斎。俺が俺でなかったら今頃お前は逆さづり市中引きずりまわしの刑だったよ……それより…」

 顎に手を当て、友人は言うのだった

「お前、日に焼けてないどころか肌が白くなってねぇか」

「………やっぱりそうだよねぇ。それなりに外に出たりはしたんだけどさ」

「女子がたまーにお前の肌の白さを盗み見てるくらいだからなぁ………」

「ははは、そんな馬鹿な…」

 ふと見た女子グループがこちらを見ている気がしてならなかった。

「気のせい、だよね」

「さぁなぁ……ま、ともかく俺はお前が女子といちゃいちゃするのが心の底から憎いってことだ」

「相変わらずだね…ところでさ、なんだか今日って二年生や三年生が一年生の廊下に結構いたりするけどなんでだろ」

 友人はメモ帳を取り出すとめくってスケジュールを確認しているようだ。どうせ見なくてもわかるが、女子とのデートなんて入っていないすかすかの寂しいメモ帳なのだろう。

「今日は運動会のクラス委員を決める日だからなぁ……先輩に聞いた話によると重たい作業とか結構やるからそれのお願いして周ってるんじゃないかね」

「なるほどね」

「ま、俺らみたいなひょろ男がやる必要なんてまったくねぇよ。ほら、このクラスにはジョニー、大五郎、ヘルベルトがいるからな。あの三人の誰かがなるだろうよ」

 友人の予感は大いに外れることになった。



――――――――



「…推薦で野々村有楽斎があげられたぞ。対立候補はいるか」

 誰一人として手を挙げることのない運動会クラス委員。先生が一回目の時に友人がいっていたジョニー、大五郎、ヘルベルトが手を挙げて声をそろえて言うのだった。

「「「先生っ、野々村有楽斎君が適任だと思いますっ」」」

 何故、そんなに親しいと言うわけでもない相手から推薦されるのだろうかと首をかしげたのだが理由がわからない。三人はその後、有楽斎の方を見て親指を立てていた。

「いないようだな…野々村、これでいいか。嫌なら嫌で構わんがその場合は自分に代わる対立候補を選べ」

 つまり、自分に代わる生贄を差し出せば辞めてもいいと言う事である。友人の方を見たが、そっぽを向かれた。

「……はい、僕でいいです」

「よし、じゃあこのクラスの運動会委員は野々村に決まったぞ」

 ありがとう、野々村君っ、僕達の代わりに犠牲になってくれて………といった視線をたくさん受けてため息が出そうだった。

「今日の放課後、会議室で顔見せの集会があるからな。まぁ、一年は基本的に雑用だから先輩の指示に従えばいい」

「わかりました」

「残りは自習だ。先生は職員室にいるから静かに騒げよ」

 面倒なことになったかなぁと思ったが、指示に従うだけなら比較的楽だろう……有楽斎はそう思いながら自習道具を取り出したのだった。



――――――――



 放課後、とりあえず筆記用具だけを持って教室を後にする。そんな彼の肩に手を置いて友人は言うのだった。

「有楽斎、マッチョな先輩達に囲まれておぼれそうになった時はすぐさま先生に助けを求めるんだ」

「………なにそれ」

「女子成分なんて期待するなよ………夏休みは女の子に囲まれたんだから今度はマッチョに囲まれて苦しむがいい………くくく……」

「…………はぁ」

 行かないことには終わらないと友人を無視して歩を進める。会議室は廊下を曲がってすぐのところだ。

「あら」

「ん」

 一年の教室から見知った顔が出てきた。

「有楽斎……」

「理沙…」

 今帰る途中なのかと思ったが、鞄を持っていない。

「あんた、今から帰るところよね………その割には学生鞄持ってないけど…」

「これから運動会の委員会とやらに行くんだよ。推薦されちゃってさ」

「あ、そうなんだ。私もそうなのよ」

「へー……じゃ、僕は行くね」

 通り過ぎようとした有楽斎の襟を理沙は思い切り掴んで引っ張った。

「ぐあっ」

「待ちなさいよ。こういうときは一緒に行くもんでしょ」

「………そうかな」

「そうなのよっ」

 少しだけ照れているのか有楽斎の方を見ずに歩きはじめる。

「まぁ、曲がってすぐのところだけどね」

「そう、よね…」

 距離として短いもので、何か話すこともなく会議室についてしまうのだった。


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