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第57話:調査

第五十七話

 スーツ姿の鬼塚霧生が野々村家に帰ってくると玄関には雪が待っていた。

「おかえり」

「ただいま………まさかお前が迎えてくれるとはな。坊ちゃんはどうした」

「それより、有楽斎君が大変なことになってるの」

「………どういうことだ。で、お前がそんな話をするということは今、坊ちゃんは出かけているのか」

「うん、理沙が遊びに来て一緒に行っちゃったからいないよ」

「そうか。邪魔するぞ」

 お土産を持って野々村家の廊下を歩く。有楽斎の部屋の前で立ち止まると鼻で何かを嗅いでいるようだった。

「………雪女の匂いがするな」

「あ、う、うん。吹雪って言う雪女が来たんだけど………」

「吹雪か」

 何やら聞いた事のある名前だなと霧生は自分の記憶をさかのぼっていく。

「ああ、あいつか。まさかあいつが坊ちゃんにちょっかいを出すとはなぁ………」

 困ったものだとため息をつくのであった。



―――――――――



 理沙と有楽斎は特に目的はなかったのだが街をぶらぶらと歩いていたりする。

「んで、これからどこに行くのさ」

「閉店しちゃっていたからしょうがないでしょ」

「まーそうなんだけどさ。ところで榊さんはどうしたの」

「私も榊なんだけど」

「僕はいつも理沙を呼ぶときは理沙、妹のほうを呼ぶときは榊さんって呼んでるのしってるでしょ」

「そうね。でもなんで私だけ呼び捨てなのよ………いたっ」

 何かにぶつかったようで理沙は尻もちをついた。よそ見をしながら歩いているのが悪かったらしい。

「理沙、大丈夫」

「あいたた………ちょっと、ぼーっと突っ立ってるんじゃないわよっ。あんた、私に喧嘩でも売ってるつもりかしら」

「あ~、何だお前ら」

 街の不良さんたちだった。

「こんな道の往来で立ってるなんて邪魔でしょ。どっか行きなさいよ」

「ちょ、ちょっと理沙。ほら、お邪魔になっているから行こうよ」

「金づるは黙ってなさいよっ」

 三人組の不良が近づいてきている。有楽斎は弱ったなぁとため息をついていた。

「な~に、理不尽なことを言ってるんだよっ。お前がぶつかってきたんだから謝ればいいだろ」

「はぁ、何それ。私が悪いなんてあるわけないでしょっ」

 どう考えてもわき見していて人にぶつかったのだから非があるのは理沙のほうである。道行くサラリーマンに助けを求める視線を送るも、誰も面倒事には関わり合いたくないらしい。

 ふと、視線を動かした先には人が立っていた。バーコード頭の黒ぶち眼鏡リーマンが有楽斎を見て目で語りかけてくる。



「この程度の問題事を処理できんというのなら社会に出て通用せんぞっ」



「えー…」

 なんだそりゃと思いつつも、仲介役はどうやら自分しかいないようだった。理沙とぶつかった不良の間に入って頭を下げる。

「あ、あのー、連れが迷惑をかけてしまったようで………すみません。今後はぶつからないようにわき見で歩かせないよう教育しておきますんで」

「はぁ、そんなのいいからさっさと土下座しろよ、土下座」

「土下座………ですか」

「そうだよ、土下座だよ。みたところ金とか持ってなさそうだし、女のほうもスタイル悪そうだし、口は悪そうだし、面倒くさそうだからなぁ。お前らと関わるのは時間の無駄そうだから土下座したら許してやるよ」

「…………」

 理沙のほうを見るが、まだ相手を睨みつけているようだった。

「誰が土下座なんて………」

「わかりました」

「え、ちょっと………」

 理沙が止める間もなく、有楽斎はさっさと土下座をするのだった。

「ぶつかってすみませんでした」

「そうそう、最初っからそうやって謝ってればいいんだ。みんな、もう行こうぜ」

 いまどきの不良にしては珍しく、それだけで満足したらしい。ここらがまだまだ片田舎だからだろうか。



―――――――――



「霧生は吹雪さんと面識あるってことよね」

「ああ、あいつはまぁ、妖怪駆除を生業としていたところの息子と雪女の間に出来た子供だからなぁ……修行を積んでいるから雪女のくせして恐ろしく強いんだ」

 俺もガキの頃襲われて大変だったんだよとエピソードを語っている。

「坊ちゃんのところに吹雪が来るとは思わなかったんだが、それで、吹雪はどうしたんだ」

「それが………」

 野々村家にやってきての経緯を話した。その話を聞いて霧生は首をかしげて雪にこたえる。

「それはまた変な話だな。適当な性格している割には嘘をついたりはしないから……坊ちゃんを始末しようとしたのは本当なんだろう。坊ちゃんが吹雪を返り討ちにしたと言うのはちょっと考えにくいしなぁ………」

「そうだよね。後も残ってなかったもん」

「まぁ、雪女の遺体って言っても雪解け水みたいなものだからな。坊ちゃんが知らないって言うのなら知らないのだろうし………いや、待てよ………」

 何かを思い出したようで霧生の表情が険しくなった。

「お前、もしかして坊ちゃんに何かちょっかいだしたのか」

「え、ちょ、ちょっかいって………」

「坊ちゃんが寝ている時に近くにいたとか、そんなのだ。もちろん、坊ちゃんにはそれなりの封印が施されているからな」

 そうなんだ、それならよかったとため息をついた雪に霧生はチョップをくらわした。

「あいたっ」

「中途半端に解除された状態だからな。もしも坊ちゃんの封印が完全に解除されたら………鬼になって暴れて、有名になって大変なことになるぞ」

「大変なこと…。まぁ、さすがに角が生えたら大変だよね。帽子とか被れなさそうだし」

「違うだろっ。危険と見なされれば相当数の討伐隊が結成されるはずだ」

「……あ、そうか」

 この女は………馬鹿なんだろうかと霧生はためいきをついた。

「ともかく、今後坊ちゃんに何かあったら注意しておけ。俺はこれからお前の里まで行って長老に話を付けてくる」

「え、ば、場所知らないでしょ」

「坊ちゃんのお母さんに教えてもらってるっ」

 こうして霧生はエッフェル塔が描かれたボールペンを二つ置いて旅立ったのだった。

「あ、大きい土産物は全部送ってもらっていると坊ちゃんに伝えておいてくれ」

「う、うん」

 意外と律儀なところがあるんだなぁと霧生に対して抱いていた『乱暴』というイメージが少しだけ消えたりする。


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