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第46話:四分の一を占めるもの

第四十六話

 世間は夏だが雪女の住んでいるところは当然雪が降り積もっている。年中雪合戦をしているのかと聞かれればそうでもない。

出来るだけ人間の作りだした文明には手を出さないようにと長老から言われているのだが、中にはブローカーを介してハイテク機器を取りそろえている雪女も存在する。

 こんなに人里離れた場所、結界まで貼られているのだがどういった原理で動いているのかわからないがインターネットもできて、安定した状態の回線でネットゲームを楽しむ雪女もいたりするのだ。

「私のランク一位は不動ね」

「時代も変わるものじゃな」

 雪女の里の長老である先代の雪は小屋から聞こえてくる独り言にため息をついた。そして、独房へと足を伸ばす。

 この独房は人間に影響を及ぼしすぎた、もしくは雪女達に結果として迷惑をかけた者が入れられるものだ。

「吹雪よ、お前の出番じゃぞ」

「しょうがないねぇ、お鉢があたしに回ってきたのか」

 蒼い着物を着た雪女がパソコンから顔を外す。首には『零一』という札がかけられている。長髪で冷たい瞳だったが唇をゆがめて笑う為に冷徹そうな感じはしない。髪の毛もぼさぼさである。そして、連日の夜更かしのせいか肌は荒れて目の下にはクマが出来ていた。実に不健康な雪女である。

「独房から出してやるからわしの言う事を聞け」

「別に独房の中でいいけどねぇ。ネット環境は素晴らしいし、めんど~な行事の参加や後片付けなんてしなくていいからねぇ」

 どうしてみんなせっせせっせとがんばるのかあたしには理解できないねぇ……雪女の吹雪はため息をついている。

 その言葉を無視して吹雪を乱暴に連れだした先代雪は一枚の写真を取り出した。

「お前も知っているだろう。雪が一人の合いの子を調査していると」

「ああ、知ってるよ。どっかのぼんぼんだったっけ」

 写真をじっくり見ながらうんと頷く。

「なかなか好みの男じゃないか。で、あたしはどうすればいいんだい。この坊やと合体でもしてこいってか」

 ぼんぼんの嫁さんになるなら生活が安泰だね。あ、子供は三人ぐらいがいいかなぁと一人で勝手に未来計画していたりする。

「始末して来い」

「おやおや、これまた物騒なことでまぁ……恐ろしいねぇ」

 写真を着物の袂に入れて札を自分で取り外す。

「で、そこまでする理由を教えてもらおうかねぇ」

「さっきも言っただろう。そいつは雪女と人間の合いの子だ」

「たったそれだけの理由じゃないだろう」

「………鬼塚霧生が絡んでいるそうだ」

「鬼塚霧生かぁ……人間と鬼の合いの子だって噂だけど十年ぐらい前に鬼にやられたって話を聞いたと思ったけどねぇ……ま、妖怪婆の頼みだから往復一週間ぐらい待っていてくれ。全力を持って無に帰してくる。暇があったら鬼塚霧生とやらを拝んでくるよ」

「頼んだぞ」

 雪女の刺客、吹雪は野々村有楽斎を始末するために解き放たれたのであった。



――――――――



「それで、有楽斎君の秘密って何よ」

「最初に言うが坊ちゃんは雪女、人間、そして鬼の血をひいている」

「え」

「母が雪女、父が人間だが………坊ちゃんの父親である秀樹さんの片親が鬼だったそうだ」

「そうだって………」

「確認するすべなんてないさ……ただ、俺が坊ちゃんに初めて会ったときは少なくとも鬼の血をひいていると感じたよ」

 生まれてはじめて恐怖を覚えたとため息をついていた。

「あの、話が見えないんだけど」

「他の鬼はともかく、俺は時たま何かを襲いたい衝動に駆られる」

「物騒ね」

「何、子供の頃の話だ。今は理性で十分抑えられる……初めての衝動でどうすることもできなかった俺はあの時偶然会った坊ちゃんに襲いかかった」

 懐かしいように話しているが、その手は震えていた。顔も青白くどうも当時の恐怖がよみがえったようである。

「駄目だ、駄目だと思っていたんだがな……人間を手にかけてしまったと確信したよ。何より、手ごたえがあったからな。えらく後悔した」

「…………」

「哀しんだのは一瞬で次の瞬間には生まれて初めて鬼を見たね。恐ろしい力だ………頭が潰されるとしょんべんまで漏らしたね。ただ頭を掴まれているだけなのにな。はっきり言うがお前なんて目じゃなかったぐらいの恐ろしさだ」

「それって本当に有楽斎君……なのよね」

「当然だ」

 そうじゃないと俺が坊ちゃんの近くにいるわけないだろう。

「その後、俺は秀樹さんに助けられて雇われた。坊ちゃんがもしも暴れた場合は想像したくないからな………」

 これが坊ちゃんの秘密だと霧生は言ったのだが、雪は首をかしげていた。

「でも、鬼の気なんて感じないけどなぁ……大体、有楽斎君から雪女のような感じもしないし、普通の人間っぽいけど」

「普段はそうだろうな。ただ、坊ちゃんの意識がないときに妖怪がちょっかいだしたら力吸って目を覚ますぞ。俺が段々坊ちゃんに近づかなくなったのもそれが一つの原因だ」

「でも今は呼んでもいないのに出てくるじゃない」

「お前が居るからな」

「ああ、なるほど」

 合点がいったとばかりに手を叩く。

「じゃあ私が近くにいない方がいいんじゃないかな」

「実際はお前の言う通りなんだが、坊ちゃんが意識のないときに極力近寄らなければいい。あんまり近寄ると取り込まれるぞ」

「………」

「坊ちゃんに興味を持ってちょっかいを出してくる相手が被害を被るのは自由だが他の人が巻き込まれるのはさすがにまずいからな。誰かが見てやらないといけないんだよ。ともかく、俺は一週間出かけるから坊ちゃんの事を頼んだぞ」

「わかった」

 雪はこっくりとうなずいて霧生を送り出した。

「鬼……か」

 ため息をついて雪は自室に戻るのだった。


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