第37話:対応と対策と
第三十七話
期末テスト四日目である。ここまできたら教室内で騒いでいる人たちは既にいない。
「我々は無我の境地にいるのだ」
「ああ、尽力して超えた壁の向こうには虚しさだけが残るんだな……」
「涙を拭け、まだ私たちの戦いは終わっていない………第二、第三の敵がこれから先やってくるのは確定済み………当然、それの対策をしなくてはいけない。無我の境地に言っている場合ではないぞ」
「そうだったな」
「俺たちの戦いはこれからだ」
ジョニー、大五郎、ヘルベルトは学生鞄を持って教室を出ていくのであった。
「あー………ようやく期末テストが終わった………」
「お疲れだねぇ」
友人の目の下にはクマが出来ている。相当勉強していたのだろう………ようやく有楽斎はそれに気がついた。
「あとは夏休みだな。おっと、その前に告白イベントがあるんだったわ………じゃ、行って来る」
どうせフラれて帰ってくるんだろう。かわいそうに……。
「いってらっしゃい」
「おいおい、羨ましそうな顔をするなよ。俺が週一で子供と一緒に公園でキャッチボールしているところを見ても怒るなよ」
話が速い男だな…………と思いつつも笑顔で見送ってあげる有楽斎であった。
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双子の奇襲が来るのではないかということも忘れていつものように帰る有楽斎。当然、隙を見せた時にやられるもので久しぶりに双子揃って現れた。
「うらちゃんみーっけ」
「金づる、ちょっと付き合いなさいよ」
「あ」
その双子を見て有楽斎は目をそらす。
「………ごめん、今日はちょっと用事があるからまた今度ね」
「え、あ、そうなの………じゃあ仕方ないっか………いたっ、痛いってば、里香」
違うでしょと言わんばかりにわき腹をつつかれる理沙。
「私たちより大切なものなんてうらちゃんにはないよねぇ」
里香が何か言いたげに有楽斎を見てくる。しかし、いまいち理解できていない有楽斎は首を傾げたりしていた。
「そ、そうよっ。あたしたちより大切なものなんてあんたにはないでしょ」
「約束とかじゃないかなぁ」
「そうね、約束は大事だから仕方がない………って、痛い、痛いってばっ」
何やら今日は違うようだなぁと有楽斎は思うのだが気のせいかもしれない。
「まぁ、ともかくまた明日ねえーと……じゃ、またね理沙と榊さん」
そういって有楽斎は去って行った。
「珍しいけどなんだか本当に忙しそうね。しょうがないっか………ねぇ、里…」
「…………」
理沙は里香の顔を見て黙り込んだ。実に怖い表情である。
「何、どうかしたの」
「………だって、うらちゃんが言う事聞いてくれなかったんだもん」
「そりゃまぁ、そうだけどさぁ………いつも聞いてもらえてないでしょ。大体、お父さんから言われている許嫁だの何だのって実際面倒なだけなんじゃ………」
「もう許嫁でもなんでもないんだから理沙は諦めたらいい」
ぷいっと歩いて廊下を歩いて行ってしまう。理沙は頭を掻きながらため息をついた。
「ど~いう心境の変化なんだろ。ここ最近嬉しそうにしていたから何かあったのかなとは思ったけど潮時だって思ってるのかなぁ……」
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授業が終わったらとりあえず部室に行くのが日課ではあるが、今日は断りを入れる為にやってきた。
「御手洗先輩、今日は部活を休ませてもらいます」
「あら、どうして」
「デートの予習をするためです」
そう言うとものすごく変な顔をされる。きっと言葉が伝わっていないのだろうと詳しく説明することにしたのだった。
「僕、デートの事は知っているんですが詳しくは知らないんですよ」
「いい心がけね。でも予習なんてそんなにかからないと思うわよ」
花月の頭の中ではタウンマップを眺めながら午前中はなにをして、何を食べて………などの計画だろうと思っていたのだが実際は違ったりする。
「いや、不測の事態が起こった場合を考慮していますし、予習といえど結構かかると思うんです」
「そう、そこまで野々村君が言うのなら休むのを認めるわ」
「ありがとうございます」
「本番気張りすぎて倒れないように注意しておいてね」
「はいっ、がんばりますっ」
有楽斎はそういって部室を後にする。何やら裏庭のほうから『すみませんっ、入れる下駄箱間違えてましたっ』という声が聞こえてきたのだがきっと気のせいだろう。
好きな色は何かと聞かれると黒と答えますが、実際は灰色とかも好きです。黒でもない、白でもない実に曖昧な色ですね。色にも色々ありますから『深紅戦隊 アカインジャー』というのを毛集してみるのもいいかもしれません。もちろん、構成メンバーは『赤』『レッド』『マゼンタ』『スカーレット』『アッシュローズ』ですね。全員が己がリーダーを主張し、熱血。合体武器も全員がさきっちょ部分を担当。赤が足りない戦隊に派遣されて戦うという無意味な寄せ集めに……