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第23話:期末テストに向けて

第二十三話

 学校では基本的に試験が行われる。そして、試験は当然ながら有楽斎たちが通っている高校でも行われるのである。こればっかりは避けては通れぬ道だろう。

 一学期の期末テスト。中間テストの事を全く知らなかった雪は有楽斎が帰ってきたときに偶然置いた保護者向けの紙を見て初めて気が付いたのである。

「あ、期末テストがあるんだ」

「うん、そうだよ」

 コーヒーをカップに注ぎながら能天気そうに答える。焦りとか、自信とかそう言ったものは一切感じさせない自然体だった。

「来週の月曜から始まるそうだよ」

「ふーん。でもさぁ、最近有楽斎君が勉強しているところを見たことないんだけど」

 有楽斎が帰ってきて行う事と言えばうがい、手洗い、服を着替えると言ったところだろうか。雪はその光景を逐一モニターでチェックしている。

「だって勉強は学校でしているからね」

「へ」

「あー、ほら、ちゃんと授業を聞いて、ノートに必要なところを書いて、見直せば大丈夫でしょ」

「なるほどぉ」

 なるほど、こいつは余裕綽綽で満点に近い点数を叩きだす嫌な奴だと雪は思った。なんでそんなに悪い点数を周りが採るのか本当に理解できないとか言いだす奴でもあろうなぁ。

「ま、有楽斎君が大丈夫って言うのなら私にはあまり関係ないかな」

 そういって冷蔵庫に入ってあった冷えた麦茶を飲む。

「期末テストが終われば一学期も終わりだからね。意外と早かったよ」

 有楽斎のそれなりに長い七月は始まったばかりである。彼はそれを知らないし、雪もそれを知らずにいたのだった。



―――――――――



 日曜日、有楽斎はいつもの時間帯に目を覚まして庭へと出た。雪の部屋からは寝息が聞こえているところをみるとまだ夢の中にいるらしい。

「どうしたもんだろうか」

 謎の少女に手渡された紙を眺め、左手に握っている携帯電話を今度はじっと見る。何かの罠かもしれないと思ったのだが何の罠なのかわからない。

 なんとかなるだろう、そんな軽い意志で有楽斎は自分の携帯電話を使ってその番号へとコールしてみるのだった。

 実際のところは何かのいたずらで、『この番号は現在使用されておりません』といったものが返ってくると思っていたのだが数回のコール音の後に何処かにつながった。



『も…もしもし』



 なんだかおびえたような声が聞こえてきた。

「もしもし…」

 相手が出たからにはいたずらではないのだろう。さて、どんなふうに話をすればいいのだろうか。数ある質問項目から一番無難そうなものを有楽斎はチョイスし、実際に口にするのだった。

「あのさ、この前…僕の家まで来て番号渡して帰っちゃった子…だよね」



―――――――



『あのさ、この前…僕の家まで来て番号渡して帰っちゃった子…だよね』

 眠気をぶっ飛ばす言葉を聞いて雪はあわてて目を覚ましていた。

「え、有楽斎君がおどおどしながらしゃべる相手なんていたっけ…」

 よく聞こえるようにヘッドフォンを装着して神経を集中する。この前つけた盗聴器はばっちりと有楽斎の声をチェックしてくれている。



―――――――



『えっと、はい。そう…です。あの、今日の正午…駅前で待ってますから』

 それだけ言って電話が途絶えた。

「あ、ちょっとっ」

 有楽斎の言葉は相手にしっかりと伝わらなかったらしい。無情に鳴り響く音を聞きながら有楽斎は電話から耳を離した。

「………まぁ、日曜だからいいか」

 特に予定もない日曜日だったので興味が出てきた有楽斎は家に戻ってとりあえず朝食の準備を始める。

 そして、雪のほうも支度を始めていた。

「えっと、サングラスと麦わら帽子…冷却パックにお守り…あ、ビデオカメラとボイスレコーダー忘れるところだった…」

 楽しい楽しい日曜日の始まりである。


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