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第130話:分裂消滅

第百三十話

 文化祭もほど近くなり、暑さもそろそろ控えられてきた。日中はそれなりに気温が高いが夜は少し肌寒い。文化祭も四日後に迫っており、有楽斎は鬼の役となっていたりする。

「今いいかのぅ」

「あ、どうぞ」

 吉瀬家を訪ねてきたダニエルを家に上げ、有楽斎はお茶を出す。

「………今晩、もう一度野々村屋敷に忍び込んでくるわい」

「何をするんですか」

「いわば強行偵察じゃ。あの屋敷には地下があるといったじゃろう」

「……はぁ、確かにあるって言ってましたね」

 老人がお茶をすすった後、有楽斎は首を振った。

「あの、まだ手が戻っていないんで僕は無理です」

「わかっておる。お前さんが来ても足手まといになるじゃろうからな」

「まぁ、そうですけど」

「あくまで今回は偵察じゃ。いずれお前さんの力が再び必要なると思うからそれまで身体を休めておいてほしいんじゃ。ほれ、妹さんと一緒にこれを食べるといい」

 どこか旅行にでも言っていたのか『東印の零一饅頭』と書かれていた。

「それなりに美味しいぞ」

「ありがとうございます」

「じゃあわしは行くからの」

 老人を見送って家の中に戻る。

「お兄ちゃん、あのおじいちゃんって何してる人なの」

 兄と妹の綿密な時間を邪魔されたと毎度毎度言っている真帆子にも未だに老人の素性がわからなかった。それなりに探りを入れたりしているのだが途中で逃げられてしまったり謎のメカが道を塞いだりするのだ。

「うーん、科学者……かなぁ」

「科学者かぁ」

「うん、道場がいきなり真っ二つに割れたりして秘密基地でもありそうだったよ」

「それってすごい事だよねぇ」

「そう、なんだろうね……」

 まさか忍者でしたとは言えないし、いまだに信じられなかったりする。

「饅頭持ってきてくれたし、食べようか」

「うんっ」

「文化祭も近いけど真帆子たちのところも捗っているかな」

「うん、喫茶店なんだけどね。午後からお兄ちゃんと一緒に文化祭を回る為に予定を開けておいたよ」

「そっか、じゃあ僕も午後から開けてもらうよう頼んでおくよ」

 その日、有楽斎はいつもより早く部屋に引っ込んで眠る事にした。偶然だったのだろう、いつもより一時間程ばかり早かった。

 有楽斎が饅頭に舌鼓を打っている頃、隣の野々村家の屋根には人影があった。どこからどう見ても忍者のその人物は有楽斎が襲撃していたルートへと足を伸ばす。

「また来たわねっ……って忍者……」

 用心棒として雇われていた榊理沙はてっきり有楽斎がやってきたと思ったのだが違ったようで驚いていた。

「こっちに忍者が来るのは意外でしたね」

 隣にいた子子子子美奈代も現代にいる忍者を少しの間物珍しげに眺めていた……が、相手が刀を抜いたところで身構える。

「たとえ相手が普通の人間だったとしても雪先輩の家を滅茶苦茶にしたからには容赦しませんっ」

 穏便に物事を進めたかった忍者だったが静かに手の前で印を結ぶと声高らかに言うのであった。

「忍法、分身の術っ」

「古っ」

 古いかどうかはさておき、忍者が七人になった。二人が別ルートに向かって走って行き、残りは正面突破するつもりなのだろう。

「来たわよっ」

「わかってますっ」

 美奈代はいつも使っている枝ではなく非常に細い棒を振り回す。信じられない事に真空波のようなものが忍者たちを切り裂いて行った。

「どれも偽物ね」

 理沙は舌打ちをして辺りを見渡す。老人本体は庭の方へと一旦ひいていた。

「なるほどのぅ、このお譲ちゃんなかなかやるわい」

「待ちなさいよっ」

 理沙と美奈代が庭までやってくる。屋内とは違って非常に広く、戦いやすい。何気に真空波の一部が野々村家の廊下などに当たって大惨事になっているが二人は見ていない事にしておいた。

 再び分身の術で人数を増やして美奈代、理沙へと殺到させる。ちなみに、理沙は戦闘要員ではなくサポート役の為にほとんど役にたたない。

「来たわよっ」

「わかってますってば」

 居合いのような構えを取って美奈代は一度で分身達を吹き飛ばし、消滅させた。

「妖怪用とはいえ、生身の人間が喰らえば怪我では済まされませんよっ。もう大人しくお縄についてくださいっ」

「そうよっ」

 美奈代の影から理沙がそういう。あの忍者を捕まえれば有楽斎が普通の高校生活を送れるんじゃないかと考えていた。

「次で最後にするかの……」

 再び分身の術を使うが、今度は三人だけ。三人が一度に刀を抜いて美奈代達に襲いかかる。

「秘技、水面割っ」

 三体の分身は全て消滅。その後も美奈代の素晴らしい秘技は生き続けていたりする。

「ほっほっほ、楽しかったぞ、お譲ちゃん達」

 野々村家の屋根の上には忍者が笑っていた。

「じゃあこれで失礼するかの」

「あ、待ちなさいよっ……子子子子、行くわよっ」

「はいっ」

 野々村家の庭は美奈代の技などで荒らされていた。常人が技を喰らえばひとたまりもないので毎回結界を張っているわけなのだが……美奈代の放った技は理沙が張っていた結界の一部を破壊し、隣家との塀、安寧と緊張を与えるトイレ、そして子供部屋を破壊した。

 もちろん、それだけの間を通して居るので人間に当たっても問題は一切ないはずだった。ただ、この『水面割』という技は妖力に反応、増幅して襲いかかる技だったりする。分裂反応を起こさせる為に複合状態の相手に使うとどうなるのかさっぱり分からない。

 隣家は吉瀬家、トイレの隣には有楽斎の部屋があった。腕を出したまま眠ってしまった有楽斎がただで済むわけがなかった。


140~150内で一旦区切りですかね。別の物語でも書こうかと思っています。構想は以前も書いたとおり若干暗めにしようかとも…まぁ、文才ないですからしょぼくなること間違いなしですけどね。

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