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第13話:馬鹿らしい妄想

第十三話

「小学生って言っても、もう卒業前だったよ。そうだね、卒業式の一日ぐらい前だった」

 まるで当時を懐かしむように両目を閉じ、今度はゆっくりを目を開ける。

「ふーん」

「いつものように学校から帰ってくる途中で女の子が数人に囲まれていてね」

「待てよ、どうせその女の子が榊ちゃんでしたぁとかそんなオチだろ。全然おもしろくないぜ。大気圏外から突入してきて目の前のアスファルトに突き刺さった……それが榊理沙との最初の出会いだったとかなら納得できるけどな。その後はエースパイロットになって謎の機械生命体と闘いましたとか」

「………もはや人間ではないと思うけど」

 友人のほうはどうやら未知のロボットと出会いたいらしい。

「話を続けるけど面倒だったし、巻き込まれたくなかったし、なにより当時欠かすことのなかったアニメを見たかったからスルーしようとしたんだ」

 友人はその話に眉を動かした。実に面白くもない話だな、そう物語っていた。

「なんだ、お前がその少女を助けてそいつが双子の理沙ちゃんでしたってオチかよ」

「さっき聞いたよ」

「ひねりのねぇ、おもしろくもねぇ、過去にはこんないいことがありましたーって感じかよ~。もっとひねってくれよ。マグマにほど近いところに埋まっていて笛を吹いたらやってくるとかさ」

 あんたロボット好きだなーという視線を送ったのだが気が付いていないらしい。

「そのあとは助けた双子ちゃんとひとつ屋根の下で暮らして衝突しつつも絆を深めあって中学卒業時に告白を二人からされるが、答えは高校卒業式まで待ってあげると言われた……」

「いや、違うよ。ちゃんと話を聞いてほしい」

 しかし、友人は全くこちらの話を聞いておらず、元気に暴走中のようだ。

「それから三人で同じ高校に入学。いろいろと事件や面倒事に巻き込まれつつ有楽斎と双子はさらに仲良くなっていく。両手に花の状態が続いた有楽斎は幾度となく『榊姉妹親衛隊』、『榊姉妹拝み隊』、『榊姉妹専属特殊部隊(通称:S.S.S.T)』を退けていちゃいちゃを繰り返す。そして、とうとう約束の高校卒業。有楽斎の性格からいってへたれなので『僕には…選べないよ』とか言って二人を困らせるんだろう。双子はどうすればいいのかさっぱり分からずに困り果てる。それから数日後に双子は決断を下した。やはり、双子が望んだのは有楽斎が決めるべきだということにいたったのだ。双子はお互いの事を考えすぎていたから自分を優先になんてできなかった。その事を有楽斎に告げ、双子はそれぞれの部屋に籠った。朝日が差し込む頃になってようやく有楽斎は決断した。きちんと片方の双子を選んだのだ。大学へと進学していた三人はいまだ仲良しだったが有楽斎にフラれたほうは未だに忘れることが出来なかった。有楽斎の事を忘れるために出来るだけ彼に会わないようにし、写真の有楽斎を見て涙を流す日々だった。そして、双子の片方はある日、一日だけデートがしたいと有楽斎の彼女となった片方に頼みこむ。これを最後にきっぱりと有楽斎の事を諦めると言ったのである。哀れに思った有楽斎の彼女はこの願い事に頷いた。ただ、条件付きでその条件は『ひとつ、有楽斎の彼女である私としてデートすること。ふたつ、夜までには帰ってくる事』だった。自分自身としてデートできなかったのだが彼女にとって『有楽斎とデートがしたい』という望みが叶えられたわけだから満足したわけだ。そして、デートの当日にもう片方の双子に変装した彼女は待ち合わせ場所でうまくやれると信じて有楽斎を待つ。少し遅れてやってきた有楽斎は早速異変を感じたのか顔を覗き込んでくるもそれを何とかやり過ごす。それから電車に乗って遊園地へと二人は向かうのだったが腕をからめてくる有楽斎にびくつく。有楽斎は『どうしたの、いつもしてるじゃん。あ、今更恥ずかしくなったの』なんて言ってくるのでそれに調子を合わせようとするが空回り。とにもかくにもなんとか腕を組んで歩き始めると今度は嬉しくて嬉しくて頬が真っ赤に染まるほど恥ずかしい。有楽斎にその事をからかわれつつも遊園地にやってくる。メリーゴーランドの一頭の小さな白馬に二人で乗って係員から注意されたり、ジェットコースターに乗って有楽斎が目をまわし、それを介抱してあげたりと楽しい時間はあっという間に過ぎていき気がつけば夕方になっていた。『そろそろ帰ろうか』、有楽斎にそんなことを言われた彼女は最後の記念として観覧車に乗りたいと申し出る。当然、それを有楽斎は承諾して夕焼けに染まる観覧車に二人で乗り込んだ。なんとなく、気まずくなってきたのだが対面に座った有楽斎は微笑んでいた。『逃げ場がないね』『う、うん』。気がつけば有楽斎は隣に座って肩に手をまわしていた。『あ、えっと』『何そんなに照れているのさ。此処だったら誰も見ていないし、なんだか期待しているようだから期待に添うように頑張るよ』そう言われると身体中の力が全部抜けて有楽斎に身体を任せるような感じになった。ぼーっとした視界の中に入ってくるものは夕焼けに染まった有楽斎の顔。それが段々と近づいてきて……」

「ねぇ、まだその話続くの」

「ああ、今ちょうどいい所だから待っていてくれ」

「わかったよ」


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