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第123話:二人三脚

第百二十三話

 見た目が貧弱そう、男のくせに女も嫉妬するような色白、太陽に当たったら灰燼に帰しますと言った雰囲気を纏った有楽斎ではどれもこれも競技に参加させてもらえなかった……前回もそれらの理由で駄目だった。

 それでも二人三脚の選手決めの時では自ら立候補したのだ。

「ぐえっへっへ、これで美少女と組めば最高だねっ」

 心の中で悪魔が叫ぶ。他の選手たちは彼氏彼女で組んでいるようで急がなければ余ってしまう……

「ここはフィーリングだ。それで決めるしかないっ」

 半目を開けながらうろつき、ぶつかった相手に決める事にした。

「おっと、すみません」

 比較的決まっていなかった三年女子の方へと歩いて行くと誰かに当たったのだ。

「よければ僕と二人三脚ペアを組んでくれません……か」

「あら、吉瀬君……参加していたのね。いいわよ」

相手は御手洗花月となってしまった。

それ以後は練習を終えて放課後となった。

「源くーんっ」

「お、どうしたの」

「ほら、疲れてるって思って……これ飲んでいいよ」

「お、さんきゅ……ぷはーっ、うめえっ」

「ふふ…」

「ん、どうしたんだよ」

「間接キスっ、いただきましたっ」

「地獄に落ちちゃえばいいんだよっ、友人っ」

「ぐはっ」

「み、源君っ」

 青春やっている友人に奇襲をかけてうっぷんを晴らした有楽斎は部室へと向かう。

「………あら、吉瀬君」

「すみません、着替え中でしたか」

「気にしなくていいわよ」

「いや、後で何言われるのかわかりませんから閉めておきます」

 下着姿の花月をじっくり見ることもなく有楽斎は静かに扉を閉めた。すぐに美奈代が有楽斎の目の前に現れる。

「吉瀬先輩、どうして中に入らないんですか」

「今御手洗先輩が着替えているからね。入れないんだよ」

 別に部屋の中で待っていてもいいわよと聞こえてくるが有楽斎は聞こえないふりをしていた。

「そうですか」

 美奈代も有楽斎の隣で待つ事にしたようで部室の壁に背中を預けている。

「吉瀬先輩、御手洗先輩に向かってすぐに走って行きましたね」

「え」

「二人三脚ですよ」

「……ああ」

 自分の早とちりだった。

「吉瀬先輩とならなんとなーく、いいタイムが出そうだったので二人三脚に出るつもりだったんですけど、真帆ちゃんと組むことになりました」

「そっかぁ……まぁ、僕もいろいろとあるんだよ。同じ種目に出るんだから頑張ろう」

「はい」

 どことなく寂しそうである。なんで寂しそうにしているのか有楽斎にはわからなかったため、どのように声をかければいいのか悩んだ。

 しかし、それより先に花月の声が聞こえてくる。

「着替え終わったわよ」

 有楽斎と美奈代は中に入ってきょとんとしていた。

「先輩、それ……」

「体操服。今日は今度の日曜日にある運動会に備えて練習するわよ。美奈代ちゃんも出るんでしょ」

「は、はい」

「じゃあ着替えて一緒に練習するわよ」

 新聞部が何をする部活なのかさっぱりわからないが(余談だが、有楽斎の提出した野々村家襲撃レポートは花月の内申点を上げる素晴らしい結果になった)、部長の言う事は聞かなくてはいけないだろう。

 体操服に各自着替え(何故か有楽斎が着替える時だけ二人とも中にいた)、運動場で練習を始める。

「……で、なんで三人まとめてやっているんですか」

「難しいほうが伸びる可能性が高いわ」

 有楽斎を中心にして左右を花月、美奈代が固める。両手に花とはこのことだ。生憎、有楽斎にとってはそうでもない。

 三十分ほど練習すると何とかこけることなくスピードを出せるようになってきた……怪我をしたのは有楽斎一人だが。

「おお、本当に上達してきましたね」

「信じていなかったのね」

「いえ、それなりに信じていましたよ」

「美奈代ちゃんも嬉しそうだしよかったわ」

「は、はいっ」

「練習が足りないんじゃないかってがっかりしていたんだね」

 勘違いしたまま練習を終える。『じゃんけんに負けた人が飲料を買ってきなさい』といった花月が珍しく負けたりした。

「……運動会終わったら部活か何かで打ち上げでもしようか」

「あ、す、すみません。その日の夜はちょっとしゅぎょ……じゃなくて、家の用事ですぐに北海道に行かないといけないんです」

「え……」

「毎年やっていることですけど……」

 その話を聞いて有楽斎はふと考えた。



『……運動会の夜に野々村家を襲撃すれば何とかなるんじゃないんだろうか……』


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