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第112話:林間学校6

第百十二話

 二日目のお風呂に猪突猛進で男湯を堂々と覗くような破廉恥女子高生がやってくることもなかった。

「今日は来ないな」

「ああ、榊さんが来てくれればハプニングって言うか、みられる快感に目覚めていたのかもしれないのにな」

「いや、さすがにそれはないわ」

 来るか来るかと思わせて結局来ないと言う微妙な時間を味わって無事に風呂の時間を終える。

就寝時間までもうすぐという時間帯……男五人で集まって有楽斎たちはトランプに興じている。

「しっかし、悲しいもんだなぁ」

「何が」

「ほら、女子の知り合いから男子がいないとあんまり楽しくないーとか言ってお誘い来るとか全然ないし、男子五人でトランプは辛い」

 そういった友人に対して男子の一人がUNOを取り出した。

「いや、それは確かに盛り上がるけどさぁ……俺がいいたいのは女子が居たらさらに盛り上がるんだろうってことなのよ」

「なるほど…それなら吉瀬の妹とかその友達呼べばいいだろ」

「じゃあ呼んでこようか」

「いいや、やめとけ。どうせ有楽斎一人がいい思いして俺らはそれを指くわえて見ているしかないんだぜ。そんな惨めったらしい事が出来るかよ」

 友人にそう言われた男子三人組はそれぞれ想像する。なるほど、確かにそれは辛い。

「そうだよなぁ」

「それに妹といちゃついても僕にメリットないからね」

 辛気臭い事この上ないだろう。五人でため息をついていると部屋の扉が開け放たれた。

「邪魔するわよ」

「あ、理沙」

「榊さんかよ……有楽斎、さっさと行っちまえ。どうせお前に用事だろうからよ」

「遊びに来たのよ」

「え…」

 有楽斎、その他四名がぽかんと理沙の方を見ていたのだが、彼女は枕を有楽斎の布団のところにポンと投げると胡坐をかいて男子の輪に加わった。

「で、何しているのよ」

「えーと、僕たち何していたんだっけ」

「日本のこれからについて話し合っていた……と思うがどうだったか」

「いいや、集団ストーカーも駄目だって話だろ」

「あんたたちの議論じゃなくてトランプよ、トランプ」

 トランプを有楽斎から奪い取ってきれいに混ぜる。鮮やかなお手前であった。

「ババ抜き、ポーカー……何でもいいわよ」

「僕、ポーカーのルールしらないや」

「じゃあ吉瀬はそこで一人UNOでもやってなさい」

 一人仲間外れにされそうになったので友人に助けを求めるも、彼の視線は『たまには一人で遊べよ』と物語っていた。

「いや、一人で出来るものなのかな」

「やれば出来るわ」

「そう、お前ならやればできるっ」

「頑張るんだ、吉瀬っ」

「俺たちはお前を信じてるからなっ」

 結局、人数がいるかどうか見回っている先生が来るまで有楽斎一人でトランプタワーならぬUNOタワーを形成していた。隣では大富豪で盛り上がっており、これほどの疎外感は近年まれにみるものであった。



「おらー、お前ら寝る時間だぞー」



 先生が見回りにやってきたので有楽斎たちは布団の中へと一応入る。理沙も先生に見つかって説教部屋へと連れて行かれそうになったが何やら話しこんでいた。

「何だろうな」

「さぁねぇ。でも関わったら僕らも怒られると思うよ」

「それもそうだな」

 そして、理沙が戻ってきて有楽斎の布団の中へと潜り込んだ。二日目も特に問題なく終わりを迎え……

「られないだろう」

「そうだろう」

「普通におかしいだろっ」

 薄い布団をふっ飛ばして男が三人立ちあがった。既に友人は眠りについている。

「女子が男子の布団に入るなんてありえないだろうっ」

「何が起こったんだっ。そして先生はなんで止めないんだぁっ」

「これには事情があるのよ」

 理沙が半身だけ起こしてそう言うが、三人組が聞き入れる様子はちっともなかった。

「男と女の事情かよっ……たとえ世界のみんなが認めたとしても……」

「俺たち三人は絶対にっ」

「認めやしないっ」

 そう言った三人組をどう見たのか知らないが霧生がやってくる。非常に困ったような顔をしているが、理沙に見られてしぶしぶと言った様子で口を開く。

「あー、お前ら三人が非常にうるさいと隣室の連中から苦情があった。というわけでこれから説教部屋に連れて行ってやろう」

「え…」

「そ、そんなことより先生っ。見てくださいよっ……女子が男子の布団に入り込んでいちゃいちゃしてますよ」

「いや、別にしてないからね」

 いい加減うるさいと有楽斎も思い始めていたので上半身を起こして抗議する。

「それにさ、僕がそういった事をする男とでも思っているのかな」

 その言葉に冷静になって三人組は考える。

「……そうだなぁ、一度告って失敗した有楽斎が…」

「再びあわよくばって事をしないよなぁ…」

「俺達が間違っていたってことか」

「それに、理沙ちゃんが間違えて俺の布団に入ってくるチャンスも残っているのではないだろうかっ」

「そうかっ。俺達にもそんな嬉しいイベントが待っているのかっ」

「くぅっ、ありがとう有楽斎っ」

 それぞれが納得して静かに床につくのであった。

「はぁ……まぁ、これ以上騒ぐなよ」

 霧生はそういい残して部屋の電気を消した。有楽斎も再び横になって眠るわけだが、なんで隣に理沙がいるのか理解できない。

「なんでいるの」

「………信じられないだろうけどあんたは人外の者に狙われているのよ。別に信じてほしいなんて思わないけどね」

「ふーん」

「朝言っていた怪談を今ここで話してあげるからビビって眠りなさいよ」

 逆に眠くなくなるんじゃないかと思いつつも有楽斎は耳を傾けるのであった。


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