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第105話:一度目の襲撃

第百五話

 漆黒の忍び装束で現れた時は有楽斎も驚いたのだが、相手も驚いているようだった。

「お前さん、普段着じゃないか」

「いつもこれですよ。まぁ、ばれないんで安心してください。全力で正体を隠して行きますから……そうですね、力の九割を使って顔を隠します」

「……その分突破に力を入れてほしいんじゃが」

「大丈夫ですよ。たとえ一割だったとしても戦車一つぐらいならひっくり返せますから」

 六本の腕はまるで獲物を求めるかのように動いている。

「そうか。それならわしはこっちから行く。お前さんは縁側から一気にあの部屋を目指してくれ」

「わかりました」

「幸運を祈るぞ」

 そういって老人の姿が消える。科学技術の発達した今の時代に忍者を見ることが出来るとは想像しなかった。

「……そういえば鬼がいるとか何とか……」

 少々、怖くはあるが頑張れば何とかなるだろう。どんなに力を持ったとしても怖いお兄さん達の事は未だに怖いし、幽霊だって好きかと聞かれれば嫌いの方向で固まる。

 ともかく、言われた限りの行動を起こさないといけないし此処で足踏みしていても終わりはしないだろう。

静かに広い庭へと着地して素早く縁側の扉を外し、侵入する。

「ん……」

 何やら見えない壁のようなものがあった。気配だけ感じると言ったところだろうか。

「罠かなぁ……」

試しに氷塊を作って何もない廊下へと投げてみると霧散した。きっと知らずに突撃していたら有楽斎が霧散していた事だろう……。

「やはり、一筋縄ではいきませんか」

 廊下の脇にあるふすまが開く。そこから出てきたのは何の冗談だか知らないが子子子子美奈代だった。

「……」

 声を発したら一発でばれるだろうが、姿はばれていないはずである。相手からは雪の塊から六本の腕が出ているようにしか見えていないだろう。力の九割を使って姿を隠していてよかったと心底思うのであった。

「なーにが一筋縄ではいかないよ……あんたが試行錯誤で張った罠もあっさり見透かされているじゃない」

「榊先輩はちょっと黙っていてください。危ないですよ」

「私がいたからこの廊下からきているのがわかったんでしょうが」

「そういう問題じゃないですっ」

 まさかの榊理沙登場。持っていた榊の枝を突き付けられる。

「さ、どこの化け物だか知らないけど大人しくお縄につきなさいっ。こっちの子にたてつくと灰燼にされるわよ。」

 これは困ったことになった……有楽斎は声を発することなく回れ右をする。

「そっちにも罠は張ってあるからねっ」

 そう言われたが出口はここしかない。後ろから何かが飛んできて六本のうちの一本が吹き飛んで消えたが、そんなことより逃げることが先決だった。

「くぅっ」

 見えない壁は思った以上に固く、ぶつかったら痛かった。霧散しなくてよかったと言えばよかったのだが、箪笥の角に小指をぶつけるぐらいに痛かった。

「観念しなさいよっ」

「……榊先輩、下がっていてくださいよ。危ないですから」

 じりじりと近寄ってくる二人組に追い詰められながら有楽斎は考える。もちろん、どちらかを人質に取ると言う方法もあるのだろうが友人を人質に取る高校生なんてどこにいるだろうか。

「さ、大人しくしなさい」

「大人しくしてください」

「ちっ」

 目前まで迫って有楽斎は舌打ちをする。やはり背に腹は代えられないもので、天井を破壊して有楽斎は脱出するのであった。

「あんた、なんで天井に罠張ってないのよっ」

「だって飛べるなんて思いもしませんでしたよ」

「だってじゃないわよっ」

 天井に罠が張られていたのなら床を壊して脱出すればいいと言う単純的な考え方だったがうまく逃げ伸びる事が出来た。

またもや下から何か物騒なものが飛んできたような気がしたが、被害は腕一本で済んだのだ。

「ふー……」

 高校の屋上へと飛び降りて有楽斎は息を吐く。そんな彼の隣に忍者が現れた。

「どうじゃった」

「おそろしい化け物が二人もいました。これは本当に厄介です。鬼以上に危険な相手でしたよ」

「腕が減ったようじゃな」

「ええ、見事に吹き飛ばされました」

 五本の腕が背中でうねうねと動いている。根元は残っているようだったが、いまだ再生はしていない。第一に吹き飛ばされた事が無いのでこれが再生するのかどうかさえわからない。

「ともかく、今日はもう無理だと思います」

「そうじゃな。こっちも鬼と雪女が出たところじゃった。本当にあそこは化け物屋敷じゃったよ」

 次の日の朝刊に『野々村大屋敷への侵入者、防犯装置によって撃退される』と書かれていた。

「へー、見た目古いのに防犯装置なんてあるんだぁ」

「きっと生きた防犯装置なんだよ」

「ふーん…」

 いつかリベンジしよう、有楽斎はパンをひねりつぶすぐらいの力でそう誓ったのだった。


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