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第102話:知られてしまった事

第百二話

「ふー…」

 屋上にやってきてさらに避雷針がある場所へと昇る。普通の生徒では……人間では梯子が無いと昇ってくる事が出来ないだろう。

「いやー、いい風だ」

 第一に屋上へと続く階段には様々な物が置かれていて実質通行禁止になっている。机、椅子、使い古された人体模型に石膏等が所狭しと置かれている為にそれを一度どかしながら進まなければ屋上に行くことなど出来ないのだ。

「猫の手を借りたいって状況が無いからラッキーだよねぇ」

 有楽斎の背中からは六本の腕が生えており、それぞれがコンクリートの床に寝そべっているようだった。

 腕一本の太さは成人男性一人分くらいで、伸ばそうと思えば結構伸びる。骨があるのか、どうやって背中にくっついているのかは有楽斎にわからないが出そうと思えばすぐ出せて、意のままに操ることが出来るのだ。

 そして、熱いと感じれば周囲の温度を低くしたり、氷の塊を出したりできる。まるで中学生が考えるような能力だったが、出来ると意外に楽だったりする。

 夏の日は体調が悪くなったりすることが多い。日陰で氷の椅子に座っていればそういったことはそうそう起きないために対処可能だ。

 もちろん、こんなことを他人に言っても『お前……そんな誇大妄想家だったのか』と言われて終わりだろうし、実際に姿を見せたら『保健所に連絡しろっ』と言われて終わりだろう。

「しかも野々村さんの家や施設に迷惑かけているしなぁ……正体ばれたらどうなることやら」

 ストレス発散のつもりで大暴れしたのだがそれがまずかった。イライラしているときに施設の近くによったときに『此処は関係者以外立ち入り禁止だ』と言われて押されたのが発端である。

 今では解消法の一つで使っていたが、もはや潰す大きな施設も残ってはいないだろう。

「……いや、一応あるか」

 あの老人が言っていたのだがお隣さんの野々村家。知り合いに怪我なんてさせたくないし、何かをするつもりもない。

「世界を変えるスイッチなんてあるわけないだろうしなぁ…」

 いちいち内部に侵入しなくてもそこに住んでいる人たちに聞いてみたらわかるのではないだろうかと有楽斎は考える。

「手っ取り早く雪さんに聞いてみるかな」

 昼休みももう終る……休み時間に聞けばいいだろうと有楽斎はその場を後にするのだった。階段を使うなんてまどろっこしいことはせず、屋上から飛び降りる。

 もし、彼が屋上から飛び降りた瞬間に不思議な能力がなくなったら……そう思うと恐ろしい話になるだろう。

 誰にも見られることなく木の上に飛び降りることに成功した有楽斎は木をつたって下に降りる。既に腕は消えており、冷気も纏ってもいなかった。

 さっさとその場を後にして自分の教室へと戻ることにした。廊下は五時間目が近い為か人がごった返していたので戻るのに少しだけ時間がかかってしまう。

「あれ、有楽斎君……どこに行ってたの」

 教室に入ると五時間目の準備をしている雪が有楽斎に気づく。

「ねぇ、雪さん」

「ん、何かな」

「雪さんの家に世界を変えるスイッチってあるかな」

 単刀直入すぎる気もしたが、それ以外このスイッチについての情報が無い。

「世界を変える………スイッチ……かぁ。ないね」

「そうだよねぇ」

 そんなものがあるのならこの世界は所有者の意のままに操られている事だろう。次の授業が移動教室の為に有楽斎も準備を終えると雪と共に教室を後にする。

「それで解けなかった問題の方は大丈夫なのかな」

「うん、雪さんの言った通り榊さんに聞いてきたよ」

「そっか」

「わざわざ図書館まで連れて行って教えてくれたからね」

「理沙はちゃんとしているところがあるから」

 そんな話をしていると曲がり角から鬼塚霧生が出てくる。

「吉瀬、お前の事を妹が探していたぞ」

「真帆子がですか」

「ああ、さっきそこであったからな。何やら急いでいるようだったから探しに行くか、次の授業が終わったら会ってこい」

「わかりました……まだ数分あるから雪さん、先に行っててよ」

 有楽斎はそういって霧生が曲がってきたほうへと走って行く。

「霧生さん、ちょっと」

「どうかしましたか」

 雪に声をかけられて霧生が近寄る。

「……実は有楽斎君がスイッチの事に関して聞いてきたの」

「それは……本当ですか」

「うん、どこで知ったんだろう……」

 有楽斎が消えたほうの廊下を見ながら雪は佇むのであった。


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