「穏やかな日々の先に」
いつも読んでくださりありがとうございます。
フィラも少しずつ成長し、できることや関わる人が増えてきました。
そんな日々を描きながら、私自身も楽しく書かせていただいています。
さて、第14話です。
今回もお付き合いいただけたら嬉しいです。
フィラは、毎日を懸命に過ごしていた。
オズワルドに誇ってもらえる娘になりたくて。
ただ、その一心で。
◆
◆
「よくできていますね、フィラ姫」
ラルフの授業でも。
「以前よりも理解が早いです」
◆
「……ほんとうですか……?」
◆
「ええ。努力の成果です」
◆
少し照れながらも、嬉しさがこみ上げる。
◆
◆
ローグのもとでも。
「ほう……ここまでできるようになったか」
魔法も、薬学も。
少しずつだが、確かな成長が見えていた。
◆
「……まだ、もっとがんばります……!」
◆
◆
治療院でも。
週に一度通う事になったそこは、以前とは違う空気に包まれていた。
◆
「……お願いします」
そう言って、腕を差し出す魔族。
◆
「……はい」
フィラは丁寧に手当てをする。
◆
かつて拒絶していた者たちも。
今では、少しずつ心を開いてくれていた。
◆
そして、その傍らには――
◆
「……」
ライオの姿。
無言のまま、フィラの背後に立ち。
◆
危険がないか周囲を鋭い目で見渡している。
◆
時にフィラに不躾な視線を向ける者がいれば。
◆
「……」
ひと睨みで黙らせる。
それでも。
フィラに向けられる視線は、以前よりずっと柔らかいものになっていた。
◆
「……ありがとうございます……」
小さく礼を言うと。
◆
「……大切な御身ですから…」
ライオは、わずかに口元を緩めた。
その変化が、嬉しかった。
◆
◆
そんな日々を送るフィラを。
オズワルドは、いつも温かく見守っていた。
◆
「……今日もよく頑張ったな」
そう言って。
ひょい、と抱き上げてくれる。
◆
「……わ……!」
驚きながらも。
「……とうさま……」
嬉しくて。
自然と笑顔になる。
◆
大きな手で、頭を撫でられる
◆
それが、何より幸せだった。
◆
◆
ある日のことだった。
◆
「……行くぞ」
◆
オズワルドに連れられ、城の外へ出る。
◆
向かった先は――
大公領の街。
◆
「……すごい……」
活気があって、賑やかな通り。
行き交う人々の笑顔。
そこには、不安の影はなかった。
◆
「閣下!」
「大公様!」
街の人々が、次々と声を上げる。
「今日もありがとうございます!」
「お体にはお気をつけて!」
そのすべてに。
オズワルドは短く強く頷き返していた。
◆
(……とうさま……)
フィラの胸が、いっぱいになる。
(……すごい……)
◆
この街を守っている人。
皆に慕われている人。
◆
「……とうさま……」
◆
「……なんだ」
◆
「……とうさまは…みんなにしたわれていて…すごいです……」
◆
素直な言葉。
オズワルドは一瞬だけ目を細め――
「……そうか」
それだけを返した。
でも、その唇は嬉しそうに弧を描いていた。
◆
◆
◆
そんな穏やかな日々が続き――
いつのまにか二年の月日が流れていた。
◆
フィラは、八歳になっていた。
◆
ラルフの教えにより、令嬢としての立ち居振る舞いも身につき。
「お見事です、フィラ姫」
「……ありがとうございます」
以前よりも、ずっと堂々と振る舞えるようになっていた。
◆
さらに――
「これは、領地の収支だ」
オズワルドから、領地経営についても教わるようになっていた。
◆
「……むずかしい……です……」
◆
「……ゆっくりでいい」
◆
その言葉に、頷く。
◆
◆
すべてが。
順調に進んでいるかのように見えた。
◆
――その日までは。
◆
◆
「……人間の軍が、森を越えて侵入しました」
◆
ラルフからの報告が、静かに告げられる。
◆
空気が、一変する
◆
フィラの胸が、不安で締め付けられる。
◆
(……侵攻?……)
◆
オズワルドが立ち上がる。
「……出陣の準備を」
◆
短い一言。
大公領がにわかに騒がしくなった。
◆
◆
出立の前。
◆
フィラは、ぎゅっとその服を掴んだ。
「……父さま……」
◆
不安が、溢れる。
◆
そんなフィラを見て――
オズワルドは。
ふっと、微笑んだ。
「……大丈夫だ」
優しく、頭を撫でる。
「……すぐに戻る」
◆
その言葉に。
フィラは、こくんと頷く。
◆
軍を率いて去っていく背中。
(……父さま……)
祈るように、見つめる。
◆
その日。
穏やかな日常は――
◆
揺らぎ始めた。
第14話をお読みいただきありがとうございます。
フィラの成長や、周囲との関係の変化、そして穏やかな日常を描いた回でした。
少しずつ築かれてきたものが、これからどうなっていくのかも見守っていただけたら嬉しいです。
そしてラストで、物語はまた少し動き始めました。
次回もぜひお付き合いいただければ幸いです。




