森で目覚めた少女
初投稿です。
家族に搾取され続けた女性が、異世界で新しい人生を歩み始めるお話になります。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
――死ぬ時くらい、静かに終わりたかった。
仕事帰り、疲れ切った体で信号を渡った瞬間だった。
強い光。耳をつんざくブレーキ音。
振り返る暇もなく、衝撃が全身を貫いた。
(ああ……これで、終わりか)
不思議と、恐怖はなかった。
母に金をせびられ、働かない妹を養い、職場では怒鳴られる毎日。
誰のために生きているのかも分からない人生だった。
――せめて、次があるなら。
自分のために、生きたい。
意識は、そこで途切れた。
◆
目を開けると、森の中だった。
湿った土の匂い。ざわめく木々。
見知らぬ景色に、思考が追いつかない。
「……え……?」
起き上がろうとして、違和感に気づく。
体が、軽い。
視界に入った手は、小さくて細く、泥に汚れていた。
「なに……これ……」
ふらつきながら立ち上がり、近くの湖へと歩く。
水面を覗き込んだ瞬間、息が止まった。
そこに映っていたのは、
銀色の髪。空色の瞳。
痩せ細った幼い少女。
(……誰?)
いや、違う。
(これ……私?)
事故の記憶がよみがえる。
(まさか……異世界……転生……?)
その考えが浮かんだ直後、別の違和感が胸をよぎった。
この体は、あまりにも痩せている。
服はぼろぼろで、明らかにまともな生活をしていない。
(この子……)
喉がひどく渇いている。力も入らない。
(捨てられて……死んだ……?)
そう思った瞬間だった。
ガサリ。
背後で音がした。
振り返る。
そこにいたのは――
異形の獣だった。
赤黒い毛並み。鋭い牙。
明らかに普通ではない存在。
(……魔獣……)
理解した瞬間、体が凍りつく。
逃げなきゃ。
そう思うのに、足が動かない。
呼吸が浅くなる。視界が揺れる。
(やだ……)
死にたくない。
せっかく、もう一度生きられるかもしれないのに。
魔獣が、ゆっくりと距離を詰める。
その口が開かれた瞬間――
「下がれ」
低い声が響いた。
次の瞬間、視界に銀の影が割り込む。
一閃。
それだけで、魔獣は崩れ落ちた。
何が起きたのか分からない。
ただ、目の前に立つ存在を見上げる。
銀の髪。紅い瞳。
そして――獣の耳。
人ではない。
そう理解した瞬間、全身の緊張が一気に押し寄せた。
安心と恐怖と混乱が、ぐちゃぐちゃに絡み合う。
限界だった。
視界が暗くなる。
(……助かっ……)
そこまで考えて、意識が途切れた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
まだ始まったばかりですが、フィラのこれからの成長と出会いを見守っていただけたら嬉しいです。
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