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帰路の先に

 朝。


 風は、少しだけ冷たかった。


 二人は、

 馬に乗って遺跡を後にする。


 崩れた石の影が、

 ゆっくりと遠ざかっていく。


 リオラが伸びをした。


「やっぱり遺跡はいいわねー」


 機嫌よく言う。


「それにしてもあなた、本当に何者よ」


 ちらりと見る。


「剣のことも……」


「ペンダントのことも……」


「色々知ってるし」


 レグルスは答えない。


 ただ、

 前を見たまま進む。


 リオラは少しだけ待って――


 すぐに興味を失ったように笑う。


「まあ、どうでもいいか」


 肩をすくめる。


「また来ましょう」


「あなたも嫌いじゃないでしょ」


 返事はない。


 だが、

 リオラは気にしない。


 そのまま一人で喋り続ける。


 やがて――


 神の爪痕が見えてきた。


 裂けた岩。


 その下。


 竜種がいた。


 じっとこちらを見ている。


 わずかに、

 頭が動く。


 だが――


 動かない。


 襲ってくる様子はなかった。


 リオラが息を吐く。


「……もう大丈夫みたいね」


 少し笑う。


「いやー、あなたといると安心ね」


「私一人だったらどうしようもないもの」


 二人はそのまま通り過ぎる。


 街道は、

 まっすぐ続いていた。


 やがて。


 遠くに――


 城壁が見えてくる。


 エクリシア。


 リオラが前を指す。


「やっと見えてきた」


 少し嬉しそうに言う。


「そういえば」


 思い出したように振り向く。


「その剣」


「とりあえず隠しておいて」


 軽く顎で示す。


「ちょっと怪しまれてるからね、あなた」


 レグルスは、

 何も言わず。


 腰の剣に手をやる。


 外套の端を引き、

 さりげなく覆った。



 リオラが、

 ふと思い出したように言う。


「それと」


 手綱を軽く引きながら続ける。


「前に言ったでしょ?」


「王家が二つあるって」


 ちらりと振り向く。


「月の王国の方」


「まあ……」


 少し考えてから笑う。


「妹みたいなものなんだけど」


 あっさり言う。


「また明日、紹介するね」


「歴史とか詳しいからさ」


「たぶん、合うんじゃない?」


 レグルスは、

 何も答えない。


 ただ――


「……月の王国」


 一拍。


「セレナリス」


 その名が、

 静かに落ちる。


 視線は前のまま。


「俺が、生まれた国」


 わずかに間が空く。


「裁かれた国」


 風が吹く。


 レグルスは、


 それ以上、


 何も言わなかった。



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