未来へ続く光
レグルスは、
また歩を進めた。
崩れた石の間を抜ける。
足が、止まる。
――このあたりか。
小さく呟く。
あの時。
泣き声が、聞こえた場所……。
――
瓦礫の間。
焼け落ちた石。
崩れた壁。
かつては、
王都の中心だった場所。
まだ、煙が残っている。
倒れた柱。
砕けた地面。
剣。
折れた刃。
そのまま残っている。
同じ紋のものが、
いくつも。
人影。
動かない。
いくつも。
踏み越える。
走る。
探す。
声は、ない。
呼ぶことも、しない。
ただ、探す。
もう――
いないのか。
足が、止まりかける。
その時。
泣き声が、聞こえた。
かすかに。
途切れそうなほど、小さく。
走る。
声のする方へ。
また、聞こえる。
かすかに。
まだ――
生きている。
レグルスは、走った。
瓦礫を蹴る。
石が崩れる。
止まらない。
そして――
見つけた。
倒れた人影。
その腕の中。
布に包まれた、小さな影。
動いている。
泣いている。
レグルスは、
膝をついた。
腕を伸ばす。
抱き上げる。
軽い。
あまりにも軽い。
その腹元で、
王家の紋章をかたどったペンダントが、
揺れていた。
――皇子の子ども……
言葉にならない。
ただ、
抱きしめた。
その時。
頬を伝ったものが、
子どもの顔に落ちた。
レグルスは、
わずかに息を吐く。
「……立派だったぞ」
小さく言う。
「ちゃんと――」
一瞬、言葉が途切れる。
「未来を、つくってくれた」
子どもは、
泣き続けていた。
音は、
風だけだった。
レグルスは、
ゆっくりと歩き出した。
崩れた石の間を抜ける。
やがて――
焚き火の場所へ戻る。
火は、
小さくなっていた。
リオラが、
眠っている。
静かな寝息。
何も知らない顔で。
レグルスは、
しばらくそれを見ていた。
それから、
顔を上げる。
西の空。
ひとつだけ。
強く輝く星。
西導星。
あの時と、
同じ場所にある。
レグルスは、
何も言わなかった。




