表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

王の帰還

 レグルスは、

 手の中の剣を見ていた。


 鞘はない。


 だが――


 刃は、

 静かに光っている。


 レグルスは腰の帯に

 剣を差し込んだ。


 古い革の紐をほどき、

 柄の根元を軽く結ぶ。


 簡素だが、

 落ち着いた。


 リオラがそれを見ていた。


 しばらく黙っていたが――


「……ねえ」


 腕を組む。


「あなたって」


 少し首を傾げる。


「ほんと何者なの?」


 レグルスは答えない。


 肩をすくめる。


「さあな」


 それだけだった。


 リオラは少し呆れた顔をする。


「さあな、って」


 だがそれ以上は言わない。


 二人は、

 また歩き出した。


 遺跡の奥。


 崩れた建物の向こうに、

 広い空間が開けている。


 石の床。


 倒れた柱。


 円を描くように、

 いくつもの柱が横たわっていた。


 中央に――


 一つの石台がある。


 低い台座。


 周囲の柱は崩れているが、

 そこだけは形を残していた。


 リオラが言う。


「……あ」


 少し嬉しそうに笑う。


「ここ」


 石台を見る。


「神殿ね」


 レグルスは何も言わず、

 台座へ歩いていく。


 リオラも、

 不思議そうに後をついていった。


 台座の表面には、

 彫刻が残っている。


 太陽の紋章。


 レグルスが立ち止まる。


 しばらく台座を見ていた。


 それから言う。


「……ここに」


 視線を落とす。


「王家のペンダントを置いてみろ」


 リオラが目を丸くする。


「え?」


 胸元に手をやる。


「これ?」


 服の中から

 小さなペンダントを取り出した。


 太陽の紋章。


 王家の証。


 リオラは少し迷う。


「……まあ」


 軽く肩をすくめる。


「いいけど」


 台座の中央に、

 そっと置いた。


 その瞬間。


 光が落ちた。


 空から――


 真っ直ぐに。


 太陽の光が

 一点に集まる。


 台座。


 ペンダント。


 そして――


 上へ。


 光が、

 柱のように伸びた。


 空へと続く。


 リオラが息を呑む。


「……凄い」


 目を見開く。


「何これ」


 光の柱は

 静かに揺れている。


 レグルスは

 それを見上げていた。


 そして小さく言う。


「王が――」


 視線を上げる。


 光の柱の先へ。


「この国に帰ってきた」


 光は、

 静かに空へ伸びていた。


 光の柱は、

 しばらく空へ伸びていた。


 静かに。


 まっすぐに。


 だが――


 太陽が、

 少し傾く。


 光が、

 ゆっくり弱くなった。


 柱は揺れ、

 細くなる。


 やがて。


 すっと消えた。


 台座には、

 静かな光だけが残っていた。


 リオラはしばらく、

 その場所を見つめていた。


「……すごいわね」


 小さく息を吐く。


「こんなの、初めて見た」


 レグルスは何も言わない。


 ただ、

 台座を見ていた。


 やがて二人は、

 神殿跡を離れた。


 遺跡の影が、

 少しずつ長くなる。


 太陽は、

 砂の向こうへ沈みかけていた。


 しばらく歩き――


 空は、ゆっくりと色を変える。


 赤。


 そして、群青。


 崩れた柱の影。


 風を避けられる場所を見つける。


 リオラが焚き火を起こした。


 小さな火が、

 ゆっくりと揺れる。


 夜の遺跡は静かだった。


 風の音。


 火のはぜる音。


 それだけが残る。


 リオラが火を見ながら言う。


「やっぱり」


 少し笑う。


「遺跡を見るのって、いいよね」


 火の向こうに

 レグルスを見る。


「あなた、不思議ね」


 少し首を傾げる。


「ここに来たことあるの?」


 レグルスは答えない。


 リオラは肩をすくめた。


「まあ」


「訳ありだから言えないか」


 それから空を見上げる。


 夜空。


 無数の星が

 静かに輝いている。


「……星、綺麗ね」


 小さく呟く。


「昔の人たちも」


 遺跡の向こうの空を見ながら言う。


「ここで、同じ星を見てたんだろうね」


 焚き火が

 静かに揺れていた。


 千年前と、

 同じ星だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ