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墓標の剣

 崩れた建物の間を、

 二人はゆっくりと歩いていた。


 風が、

 砂を運ぶ。


 倒れた柱。


 砕けた石の壁。


 ところどころに、

 剣が残っている。


 錆びた刃。


 折れた柄。


 砂に半分埋まったままのものもあった。


 リオラは魔光石を手に持ったまま、

 周囲を見回している。


 石は、

 淡く光っていた。


 青。


 そして――


 別の色。


 また変わる。


「……やっぱり」


 リオラが呟く。


「ここ、ほんと変」


 魔光石を軽く掲げる。


「魔力の反応が、

 場所によって全然違うのよ」


 石がまた、

 別の色に光る。


「普通こんなに混ざらないんだけど」


 少し首を傾げた。


「戦闘の痕跡なのか、

 魔法なのか……」


 それから笑う。


「まあ」


「それも調査の楽しみだけどね」


 二人はさらに奥へ進む。


 崩れた柱の間。


 倒れた壁の影。


 その時。


 レグルスの足が、

 ふと止まった。


 空気の奥に、

 かすかな魔力が触れる。


「……このあたりか」


 小さく呟く。


 リオラが振り向く。


「え?」


 その瞬間。


 魔光石が、

 強く光った。


 リオラが驚く。


「ちょっと待って」


 石を見る。


「何これ」


 光が、

 一点に集まるように揺れている。


 崩れた柱の下。


 砕けた石壁の隙間。


「あそこ……?」


 リオラが指さす。


 だが――


 すでにレグルスは動いていた。


 崩れた柱に手をかける。


 石が軋む。


 ゆっくりと持ち上がった。


「ちょっとちょっと!」


 リオラが慌てる。


「それ、遺跡よ!?」


 だがレグルスは気にしない。


 もう一つの石壁をどける。


 瓦礫が崩れ落ちた。


 その下から――


 一本の剣が現れた。


 地面に、

 突き刺さっていた。


 刃は錆び。


 柄は朽ち。


 ボロボロだった。


 だが――


 かすかに光っている。


 レグルスが近づく。


 その瞬間。


 剣の光が、

 すっと消えた。


 レグルスは静かに見下ろした。


「……千年」


 小さく呟く。


「守ってくれていたんだな」


 手を伸ばす。


 剣の柄を握る。


 そして――


 引き抜いた。


 石の地面から、

 ゆっくりと刃が抜ける。


 その瞬間。


 記憶がよみがえった。




 瓦礫の街。


 煙。


 崩れた城壁。


 静まり返ったアウレリア。


 レグルスは、

 赤子を抱いていた。


 小さな命。


 泣き声だけが、

 遺跡の中に響いている。


 周囲には、

 誰もいなかった。


 レグルスは空を見上げる。


「……生き残りは」


 小さく呟く。


「一人だけか」


 静かな街。


 風が、

 灰を運ぶ。


 レグルスは腰の剣を抜いた。


 そして――


 地面に突き刺す。


 墓標のように。


 両手を、

 その柄に置く。


「もう」


 静かに言う。


「剣は必要ない」


 目を閉じる。


「どうか」


 風の中に、

 言葉が消える。


「この地が、

 荒らされないように」


 魔力が、

 剣へと流れ込んだ。




 風の音が戻る。


 遺跡の中。


 レグルスの手の中で、

 剣がわずかに震えた。


 刃の錆が、

 音もなく崩れ落ちる。


 淡い光が走る。


 欠けていた刃が、

 静かに形を取り戻す。


 剣は――


 元の姿を取り戻していた。


 リオラが目を丸くする。


「……ちょっと待って」


 呆然と剣を見る。


「それ」


「何?」


 レグルスは答えなかった。


 ただ静かに、

 その剣を見ていた。


 千年の時間が、

 その刃に残っていた。


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