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遺跡の魔力

 街道を、再び馬が進んでいた。


 背後では、

 神の爪痕の岩がゆっくりと遠ざかっていく。


 竜種の姿は、もう見えない。


 砂の風が、静かに吹いていた。


 しばらく進んだところで――

 リオラが「あ」と声を出した。


「そういえば」


 手綱を握ったまま、少し振り向く。


「一つ、言い忘れてた」


 レグルスは黙って聞いている。


 リオラは、軽い調子で続けた。


「この先の遺跡ね」


「普通の人、あんまり近づけないの」


 砂の向こう、

 遠くの地平線を指す。


「太陽の王国の遺跡」


「魔力が強すぎてさ」


 少し肩をすくめる。


「調査隊も、途中で戻ってくるのよ」


「気分が悪くなるとか、立っていられないとか」


 馬の足音だけが続く。


 リオラは続けた。


「まあ」


「王家の人間は平気なんだけど」


「昔からそうらしいのよ」


 少し笑う。



 それから、ちらりとレグルスを見る。


「でも」


「あなたは大丈夫でしょ」


「なんとなく」


 あっさりと言う。



 風が砂を運ぶ。


 街道は、

 さらに奥へ続いていた。


 その先。


 かすかに――


 石の影が見えはじめている。


 太陽の王国の遺跡だった。


 リオラが前を指す。


「ようやく見えてきたわね」


 少し嬉しそうに笑う。


「実はさ」


「私、ここ来るの二回目なのよ」


 手綱を軽く引きながら続ける。


「前は調査隊に混ざって来ただけだったから」


「ほとんど見て回れなかったの」


 それから荷袋を軽く叩いた。


「今回は野宿の準備もしてるし」


「ちゃんと見て帰りましょ」


 馬はそのまま街道を進む。


 遺跡は、少しずつ大きくなっていく。


 崩れた塔。


 倒れた壁。


 風化した石の建物。


 だが――


 ある地点を越えたあたりで。


 空気が変わった。


 風は吹いている。


 砂も舞っている。


 それなのに。


 生き物の気配がない。


 鳥も。


 小さな獣も。


 何もいない。


 異様な静けさだった。


 レグルスが、わずかに顔を上げた。


「この魔力は……」


 その言葉は、風の中に消えた。


 リオラが、ちらりとレグルスを見る。


「本当になんともないのね」


 少し感心したように言う。


「やっぱりすごいわ」


 馬は、ゆっくりと歩いていた。


 だが――


 見えない圧のようなものが、

 空気に混じっている。


 遺跡が近づくほど、

 それは濃くなっていた。


 普通の人なら、

 ここまで来るのも難しいはずだった。


 リオラは手綱を引く。


「この辺にしましょ」


 街道の脇。


 崩れた石壁の影だった。


 風を避けるように、

 古い石の残骸が積み重なっている。


「あのあたりなら大丈夫そう」


 リオラが馬から降りる。


「これ以上は、馬も辛いと思うから」


 二頭の馬を、

 残った石柱に繋いだ。


 馬は少し鼻を鳴らすが、

 その場に落ち着く。


 リオラが荷袋を下ろす。


 それから遺跡の方を見る。


 崩れた門。


 倒れた石の壁。


 その奥に、

 石の建物の残骸が広がっていた。


「じゃ」


 リオラが言う。


「行きましょ」


 二人は、

 ゆっくりと遺跡の中へ歩き出した。


 砂に覆われた石の地面に、

 足跡だけが残っていく。


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