表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王宮のリフローダヤマネコ 〜婚約破棄された丸い令嬢は、国家を救う〜  作者: 高取和生@コミック1巻発売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/16

第2話:碧色トンボは、ドラゴンになる

 王立学園の宴の中心で、13歳の侯爵令嬢アステリアは、第一王子アドラッドと留学生エイラの二人を相手に、静かに「本題」へと踏み込んでいく。

 

「改めて申し上げます。エイラ様、あなたを川に落とした覚えはございません。わたくしは、ただ危なげに歩くあなたを支えただけ。あなたが勝手に川へ……跳んだのです」

 

 冷静な弁明。しかしエイラは、唇を震わせ、涙を浮かべる小芝居に出た。

 

「嘘よ……アステリアさんは、私に碧色トンボをくれなかった。意地悪して……私を恥かかせて……!」

 

 アドラッド王子が彼女をかばうように立ちふさがる。

 

「エイラ嬢に謝れ! 彼女はお前のせいで命を落とすところだったんだ!」

 

 そのとき、アステリアの瞳がきらりと細く光った。

 彼女の口元が、ふんわりと笑う。

 

「殿下。あなたは、碧色トンボの価値をご存じないようですね」

 

 場の空気が変わる。

 

「その昆虫、ただの珍しい生き物ではございません。碧色グリーントンボ――またの名を、『ドラゴンフライG』。一万匹に一匹の確率で、竜へと変化する、魔力共鳴種です」

 

 どよめく貴族たち。平民の生徒たちも思わず息をのむ。

 

「碧色トンボの瞳は、古来より『竜種の芽』と呼ばれております。魔力を吸収しながら一定の条件を満たすと、殻を破り、飛翔するのです」

 

 アドラッドが目を見開く。

 ようやく事態の深刻さに気づいたかのように。

 

「それゆえ、リフローダ王国では法律により、碧色トンボの採取・輸出は禁じられております。王族といえど、それを覆す権限はありません」

 

 そしてアステリアは、ずいと一歩、壇上を進む。

 その動きに合わせて、護衛騎士タカシも前へ出た。

 

「さて、ここからは国家の話です。エイラ様」

 

 彼女の声が低くなる。

 

「あなたは、川に落ちたふりをして、川底に魔法陣を転移させましたね。碧色トンボの幼虫を、自国へ運ぶために」

 

「……何のことかしら?」

 

 先ほどまでのブリブリした口調ではない。

 隣国の王女とは思えぬ、冷たい声。

 

 アステリアは笑みを浮かべたまま、言い放つ。

 

「リフローダと貴国を含む三国間には、『碧色保護協定』が存在します。碧色トンボの生息する川面並びに川底については、完全に我が国の管轄とする、と明記されています」

 

 タカシが、エイラの腕にそっと手錠をかけた。

 

「転移魔法による領土侵犯、ならびに特定魔法種の不法持ち出し。これは立派開戦前提行為です!」

 

 王子は慌てて制止しようとするが、その前にアステリアが言う。

 

「殿下。この場であなたが無理にエイラ様を庇えば、リフローダ王国と諜報機関国家カルザニアとの間に、本当に火種が生まれますよ?」

 

 王子は、まるで氷水を浴びせられたかのように黙り込んだ。

 

 やがて――

 

「……っ、連行せよ」

 

 会場に到着した王宮の護衛が、エイラを連れていく。

 エイラは何も言わず、ただ、瞳に恨みを滲ませながらアステリアを睨みつけていた。

 

 そして。

 

「殿下。婚約の件は、ありがたく破棄を受け入れます」

 

 微笑みながら深く一礼するアステリアに、第一王子は何も言えなかった。

 


補足資料:リフローダ王国とドラゴンフライG


■【リフローダ王国】

・中央大陸の西に位置する、山岳と河川の多い魔法王国。

・建国から約600年。王族は“竜と契約する血統”とされる。

・法体系が非常に厳格で、魔法・生物・自然資源の管理が強い。

・王立学園は全国から貴族・有力平民を集めるエリート校。

■【魔法種《碧色グリーントンボ》】

・通称「ドラゴンフライG」。

・ごく稀に、魔力環境に共鳴して小型竜種へと“変化”する。

・魔力感知能力が高く、古代兵器としても研究されていた。

・現在はリフローダ王国の象徴種とされ、国外持ち出しは厳禁。

Q:なぜにトンボが?

A:勤務場所に絶滅危惧種のトンボが飛んでいて、嬉しくなったので


お読みくださいまして、ありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ