始まりの前
「転生騎士は丸い丸いネコに導かれ、婚約破棄された令嬢を護る!」の連載版です。世界観とかに加筆あります。
あっ、ヤバ。
そう思った瞬間、もう体が宙にあった。
足元の感触がふっと消え、世界がスローモーションになる。
次の瞬間、重力が律儀に俺を引き戻す。
落下する俺を、誰も止められない。
落ちる落ちる。落ちていく。
ぐんぐんと、地面に向かって。
……案外、ゆっくりなんだな。
人生も、こんな風に、気づけば落ちてるもんかもな。
でも、もう、これで終わりだ。
耳をつんざくような衝突音。誰かの叫び声。遠くで回る赤色灯。
赤く染まった視界に、ふわりと白い風が吹いた。
意識が遠のいていく。まるで水面の底へ沈んでいくような感覚の中で、
――それは現れた。
もふっ。
白くて、ふわふわで、やたら丸い何かが、俺の目の前で尻尾をゆらした。
――ウ、ウサギ? じゃないや。三角の耳って……猫?
いや、猫にしてはモフがすごすぎる。雪玉が歩いてるみたいな存在。
それが、俺に近づいてきて、
「……あなたにその気があるのなら、一緒に行きましょう」
キュルンとした瞳で、そう言った。
人語を喋る、白く丸い生き物。そんな馬鹿な。
――だけど、俺は思わずその前足を、掴んでしまった。
そして、世界が光に包まれた。
Q:ウサギ沼住人が、なんでまた猫話を……。
A:ウサギ動画見てたら、やたらと猫動画も目に入り、つい。
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