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好きバレした掛田さんが可愛すぎる話  作者: 冷泉七都
第一章

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第9話 言えない

「ちょっと話があるから、片付けた後も残ってて欲しい……」


 実験が終了し使用した試験管とかを洗っていると、横にやってきた累に言われた。


「なんだ? ここでは言いづらい話?」

「まぁ、そうだ。後でちゃんと伝えるからさ」

「分かった」


 今日は六時間目で終わり、部活もないということもあって、本音を言えば早めに帰ってゆっくりしたかった。

 だが真剣な顔をしているし、ちょっとぐらいならいいかな――。


「晴路、ありがとう」


 感謝の言葉とともに、腕を掴まれた。

 そして軽く揺さぶってくる。


「喜んでるとこ悪いけど、洗いにくいからやめてくれ」

「ああ、すまん」



   / / / / /



 俺たちのグループの片付けは全て完了して、普通なら教室へ戻っていくのだが、俺はそのまま残る。

 掛田さんが一緒に戻りたそうに、こちらをチラチラ見ていた気がするけど、心から心の中で謝りながら気づいていないふりをした。

 そのとき、夏実に鈍感と睨まれたように感じた。

 一緒に行こ――とか言われた訳でもないから、俺から声をかけることもできないのだ。


「わざわざごめん――」


 実験室からみんなが帰ったところで、累が話しかけてきた。


「いや、全然大丈夫。話ってなに?」

「実はな……。本当に言いにくいんだけど……。俺……」


 累は期待を膨らませてくる。

 どんな暴露をしてくれるのだろうか――。

 期待50、不安50と言ったところ。


「――のことが好きなんだっ」

「……?」

「だから、――のことが好きなんだ!」


 肝心な部分の声が小さくて、うまく聞き取れない。

 掛田さんを諦めて次の恋に行けたなら、応援したい。

 だからこそ、名前は知っておきたい。


「もっとハッキリ言ってくれないと聞こえない……」

「オ・レ・フ・ウ・カ・ノ・コ・ト・ガ・ス・キ」


 今度は一文字一文字区切って言ってくれて、しっかりと聞き取れた。


 オレフウカノコトガスキ――。


 なるほどね。


 俺、フウカのことが好き――。


 ん……?

 フウカ?

 風花?


 この学校で、フウカと言えば掛田風花のことだし、それ以外のフウカを俺は知らない。


「累は掛田風花が好きなの?」

「まぁ、なんつーか、そうなんだ」


 恋する乙女のようにモジモジする累。

 美男子がこうしても嫌じゃないのは何でだろう……。

 それは一旦置いておいて、掛田さんを諦めていなかったことに驚いた。

 ってか、そんなに隠すことか?

 学年では有名な話だったと思うが――。


「知らないと思うけど、俺、一回風花に告白したことがあるんだ」

「へぇ、そうなんだ――」


 知ってる。

 もしかして、累は誰にもバレていないと思っているのかもしれない。


「今日の実験も初めは気まずかったけど、意外と大丈夫で……」


 俺も同じこと考えてた。


「俺まだいけるのかもしれない」


 累はキッパリとそう言った。

 言えない――。

 掛田さんには依然好きな人がいて、可能性は低いなんて、言えない。


 次に累に告白されたら、俺なんか忘れて、OKを出すかもしれない。

 掛田さんが決めることだし、いつまでも俺を見ているなんて自惚れかもしれない。


 だがいずれにしろ、俺は累を心から応援することはできない。


「晴路、どう思う――?」

「まぁ、……20パーセントくらいじゃないか」

「だよなぁ。一回振られてるし……」


 累は一度振った相手を好きになることが五分の一であるというのか――。

 とやかく言う勇気のない俺は、軽く頷いておいた。

 累が良い人なのは確かだし、純情ゆえの考えだからツッコミにくい。


「晴路、夏実を経由してでも良いから、掛田さんに今好きな人がいるのか聞いて欲しい」

「……あぁ、分かった」

「まじでよろしく頼むっ」


 また、本当のことを言えなかった。

 これはもう、後戻りできないのかもしれない。


「おいお前らー、鍵閉めるぞー、残ってんと出ていけよー」


 先生に催促されて教室へと歩き始める。

 誰かに聞かれるのが嫌なのか、途中では特に意味のない無駄話をしていた。

 俺も合わせてさっきの話題は出さないようにする。


 さてどうしようか、考えなければいけない問題が増えてしまった。

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