表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きバレした掛田さんが可愛すぎる話  作者: 冷泉七都
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/50

第7話 【唐突】偵察部隊

 先週末の日曜は家で何もせず過ごして、月曜火曜と平穏な日々を送り、水曜日になった。


 昼休みになるまではなんの変哲もない時間を過ごしていたのだが――。


「ガヤっ、来たよっ!」


 俺が一人で弁当を食べようと包んでいる布を解く瞬間、教室のドアから顔を出して俺を呼ぶ茅根がいた。

 距離にして2メートルほどとは考えられないほどの大声に、教室中から俺にも茅根にも視線が集まっている。


「茅根、どうしたんだ? 部活のこと?」

「いやいや、全く関係ないよ。ガヤと昼を食べようと思ってた来ただけ」

「あぁそうか。……って、なんで?」


 至極当然という風に返すから一瞬スルーしそうになったが、一度も俺たちは一緒に昼食を共にしたことがない。

 何か目的があるのではと不安で、俺は茅根に疑問をぶつけた。


「それはね……、おいで――」

「こんにちは、来ちゃいました」


 茅根がドアの方に手招きする仕草をすると、恐る恐るの足取りで、でもニカっと微笑んだ雫が教室に入って来た。

 右手には弁当箱が入っているらしき巾着袋をさげている。

 余計にどういう訳なのか分からなくなる。


「ガヤの席、ここだよね?」


 茅根は俺に確認を取るが、返事を待たずに前の席のイスを反対に向けて座った。


「シズちゃんはここに座ったら良いよ」

「はいっ、ありがとうございますっ」

「そんな勝手に……」


 別に良いのだが、クラスが違うのに我が物顔をする茅根に若干引きながらも、俺も自分のイスに座った。

 俺の正面に茅根が、俺の左側に雫がいる形になっている。


 すると急に雫が、耳元すれすれ――ぶつかりそうになるぐらい顔を近づけて来た。

 そして喋りだすから、耳に息がかかってしまい、少しこそばゆい。


「掛田先輩ってどこにいますか?」

「掛田さん?」

「そうです。私、先輩に聞いてから、ずっとどんな人なのか気になってるんですっ」


 なるほど。

 二人がこの教室にやって来た訳はこれか――。

 まぁ、俺が持ちかけた話のせいだから責めることはできないし、責める理由もないな。


「真ん中らへんで二人で食べてる人達の、向こう側にいるのがそう」

「どれどれ――」


 廊下側を向いて座っているから、身体と首を90度回して探す雫。

 そして見つけたのか、今度は俺の方を見て来た。


「今、ワッフル食べてる人ですよね」

「あぁそうだ」

「ふんふん。茅根先輩の言うとおり可愛い子ですね」

「シズちゃんもそう思うよねっ」

「……」


 ここで共感するのは何だか気まずくて、無視をしてしまう。


「先輩にはもったいないくらい……」

「うんうん」


 確かにそうかもしれないが、そんなに頷かないで欲しい。

 実際、俺もそう思うところは有り余るほどなのだ。

 なんで俺なんかを――と、掛田さんを意識するたびに考える。


「でもこの向きじゃちょっと見づらいです――」

「そんなに見るもんじゃないと思うが……」

「なので、割ヶ谷先輩の隣に行かせてもらいますね」


 そう言って、雫は俺の真隣にイスを移動させ、俺と同じ方向を向いて座り直した。


 俺たちは、おのおの昼ご飯を食べていく。

 夏実は時々チラッと掛田さんの様子を伺って、雫は一口食べるごとに掛田さんを一瞥する。

 雫が見過ぎではないかと思い、掛田さんに俺たちの視線がバレていないか確認したくて、俺も何度か掛田さんを見る。


 ……。

 …………。

 ………………。


 なんだかおかしい。

 俺が掛田さんを見るたびに、掛田さんと目が合ってしまいすぐに逸らされる。

 先週から今日まで、視線を感じることは度々あったのだが、ここまで見られるのは初めてだ。


「掛田先輩、すごくこっちを見て来てません?」


 雫も流石に違和感を感じ取ったのか、俺に聞いてきた。


「いつもこんな感じなんですか?」

「いや、いつもはここまでじゃないんだが……」


 今日の俺の違うところと言えば、合計三人で食事をしていることか――。

 そこに後輩もいるから、気になるのは仕方ないのかもしれない。


「なんだ。てっきり毎日こんなのかと、つい――。それなら、本気で好きになられてそうで安心したって言おうかと」

「安心って……」

「割ヶ谷先輩のこと信じてますし、好きだと言われたのも本当だと思いますけど、掛田先輩がマジの目をしてたんで――」


 言われてみれば、見られる回数だけでなく、表情もいつもと異なっている気がする。

 俺と雫が会話していると、向いに座る茅根が焼きそばパンを机に置き、俺たちの方へ身体を乗り出してきた。


「あたり前でしょ……。好きな男子が知らない女子と仲良くしてたら、何かあるんじゃないかってなるに決まってるじゃん」

「「確かに」」


 俺は誰かを本気で好きになるなんて経験がなかったからか、その気持ちが分からなかった。

 それを言われてやっと、ハッとした。


「しかも後輩まで連れてきてるんだよ? 後輩に手出してると思われてるかもしれない」

「いやいや、それはないだろ」

「そうですっ。ないですっ」


 一学期はあと一ヶ月もあるというのに、後輩とそんな関係になるなんて、一目惚れにも程がある。

 もし、夏実が知らない同級生と、知らない後輩と一つの机で昼を共にしていたって、そんな勘違いなんてするはずも――ない……とは言えない。

 そうか――。


「嫉妬にはね、事実は関係ない。その人がどう思うのか。好きな人なら尚更、悪い方に考えてしまう」

「「…………」」


 茅根の言葉には、言い表せないほどの説得力があった。


 掛田さんは俺のことが好きなんだ。

 それは、こんなにも見てきてくれるほど――。

 こんなにも気掛かりになってくれるほど――。


 俺には何にも解決できないが、言い訳みたいになるかもしれないけれど、茅根と雫がただの部員であると伝えたくなった。


「割ヶ谷先輩、私、来ない方が良かったですか……?」


 暗い表情と顔で聞いてくる雫。


「いや、そんなことはないよ。どうせ茅根に乗せられたんでしょ」

「まぁそうですけど」


 茅根がてへぺろという感じでニヤッとした。

 ……てか、掛田さんの気持ちを分かりながら、茅根はこの教室にやって来たのか?


「茅根――、結局はなんで一緒に昼を食べに来たんだ?」

「んー……」


 茅根は悩んだ末に言った。


「気になったっていうか、見てみたかったから――二人の雰囲気を」


 そうだった。

 茅根はそんな人間なんだった。


 その後、掛田さんにもクラスメイトにも見られながら過ごして、昼休みの終わりを予告するチャイムによって解散した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ