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好きバレした掛田さんが可愛すぎる話  作者: 冷泉七都
第一章

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第6話 イート・アンド・チャット

 デミグラスソースのかかったオムライスは美味しくて、これだけでも今日外出する意味があったと思うほどだった。


「うまー。オムライスはやっぱりケチャップに限るねー」

「いや、お店で食べるならデミグラスだろ」

「分かってないね、晴路は――」

「夏実こそ――」


 昔の癖で、思わず夏実に言い返してしまった。

 何年もこうやって言い合いをしていないな――。

 ふとそう思うと、懐かしい気持ちに襲われる。


「そっちもちょっとだけ食べていい?」

「ああ、一口だけならいいぞ」


 了承すると、夏実は俺のオムライスをスプーンで削り掬い、口に入れた。


「んー――。美味しー」

「だろ?」

「いや両方美味しいだけで、こっちの方が良いからね? 食べてみる?」


 そう言った夏実が、俺の方に皿を差し出してくれた。

 俺は遠慮せずに一口貰う。


 うんうん、なるほど……。

 確かに夏実の言ってることも分かるな――。

 目を閉じて頷き、味に集中する。


 そしてオムライスを飲み込んで目を開けると、向かいに座る掛田さんと目が合った。

 なんだか複雑な表情をしている。

 おそらくだが、俺と夏実が二人だけで会話をしてしまっていたからだろう。


「掛田さんごめん。俺たちだけで話しててさ……」

「別に大丈夫だしっ。それだけ仲が良いっつーことっしょ」


 申し訳ない気持ちを伝えると、掛田さんはそう返してくれた。

 声は明るいのだけれど、本当にそう思ってくれてるのか――、嫌だと思っているのではないか――と不安になる。


 それを感じたのは夏実も同じだったようで、焦ってしまって「私みたいに、晴路にデミグラスのオムライス、分けてもらう?」と掛田さんに聞いていた。

 確かに、自分の好きな人が自分の友達と仲良く味覚を共有して話していたら……と夏実が考えてしまうのも無理はないし、そのせいでそんな提案をしたのだろう。


「割ヶ谷、いい?」


 俺のオムライスを指さしながら、首を少し傾けて聞いてくる掛田さん。

 夏実には絶対ない仕草に、俺は直視できずに「いいよ」と答えた。

 それが可愛かったのか――? と聞かれれば、そうだと答えるしかないし、答えて問題ないぐらいなのだが、何かが俺をそんなことにさせない。


「風花、美味しい?」

「もちろんっ」

「良かったね」


 ただ食事の一部を共有しただけなのに、俺は夏実との時とは全く違う気持ちになる。

 夏実と掛田さんで何が違うのか、俺には難しくて分からなかった。

 いや、幼馴染かそうでないかは関係ない――というのだけは確かなことだ。



   / / / / /



 その後、店を出た俺たちは一緒にウィンドウショッピングをする――なんてことはなく、俺は一人で家に帰った。

 掛田さんと夏実は、まだまだ見たい所があるらしく、二人買い物へと消えていった。


 そして今、午後九時――。

 ピコンっ。

 とスマホから音が鳴り、俺は画面をつける。


『割ヶ谷だよね』

『そうだよ。掛田さんだよね』


 掛田さんはグループラインを介して、俺とアカウントを交換して、メッセージを送ったっぽい。

 安定の挨拶のやり取りを終えると、掛田さんから写真が送られてきた。


『割ヶ谷良い感じに写ってた』

『ありがとっ』


 そして俺も昼食の時に撮った写真を何枚も送りつけた。

 誤解されそうだが、俺は続いて『良い写真だね』と送った。

 本当はもっと直接的なことを言いたかったのだけれど、入力する直前で毎回憚られる。


 掛田さんから感謝しているイヌのスタンプが来た。


『また明日』

『また明日』


 撮った写真を送る以外に話すこともすることもなく、その四文字だけで俺たちの会話は終わった。


 気がつけば、時刻はすでに10時半になっていて、俺は歯を磨くとベッドに横になる。

 今日は脳や心臓の部分がやたらと消費する一日で、どっと疲れた。

 この日を振り返る隙もなく、俺は眠ってしまった。

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