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好きバレした掛田さんが可愛すぎる話  作者: 冷泉七都
第一章

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第5話 トーク・アンド・イート

「いや……まぁ、確かに強引に連れてこられたけど。別にそれで嫌だとかはない」

「まじ――?」


 いつもの教室での元気さとは正反対のおどおどしている掛田さんは新鮮で、なんだかシャイな幼稚園児を見たときと同じ感情に駆られる。


「ほんとほんと。掛田さんとは仲良くしたいって思ってたところだから」

「…………っ!」

「風花、顔赤くない?」

「き……気のせいだしっ!」

「へぇ」

「……」


 昨日話し合ったから俺はそう言っただけだったのだが、よくよく考えてみれば、この状況でこんなことを言うのは脈アリ確定みたいなことをしてしまっている。

 掛田さんもそこまで勘違いはしてないだろうが(してないよな?)、恥ずかしがってしまっていて申し訳ない。

 言ったことを自覚すればするほど、俺も恥ずかしくなってきた。


「晴路も照れてる?」


 おい、わざわざ聞くなよ――。

 遠慮のかけらもない夏実によく絡まれている掛田さんに同情するとともに、俺も「……気のせい」としか返せなかったことに不思議なシンパシーを感じた。

 夏実の前では迂闊なことはできないな、と実感した。


「ねぇ、夏実」

「ん……? なに?」

「夏実って、前も割ヶ谷のこと下の名前で呼んでたっけ?」

「あ……」


 全く考えていなかったと気づいて声を漏らした夏実。


「もしかして、俺たちのこと掛田さんに言ってなかったのか?」

「うん……」

「なんで言ってないんだよっ」

「もしかして、隠しごとっ――?」


 色々な憶測が渦巻いているのか、掛田さんは苦い顔をしている。

 別にバレたらヤバい話ではないんだが、それを教えられてなかった掛田さんがかわいそうで、今こそは夏実を批判しても問題ないくらいだ。


「実はね、私と晴路は幼馴染だったの」


 だった……?

 過去形で間違ってないのはそうなのだけれど、複雑な気持ちになってしまうのは仕方がない。


「割ヶ谷、夏実が言ってるの、まじ?」

「あぁ、マジだよ。幼稚園から同じところに通ってて、10年間くらい仲良くしてた。家族ぐるみだしな」

「初耳っつーか、学校で二人が話してるとこ見たことないけど……」

「中学入ったあたりから、わざわざ話す関係じゃなくなっていって、高校ではほぼ関わりがなかったからね」


 夏実が簡潔に説明してくれた。

 詳しく言うと、中学に入ればやっぱり男女別でグループができてしまうわけで、しかも女子に話そうとすれば「アイツのこと好きなの?」とか言われるしで、段々と面倒になっていったのが原因。

 まぁ結局は、高校からは夏実が完全なる陽のグループに所属して、俺は細々と生活を送っていたから話す機会が全くなくなったのが最大の現状のわけだが。


「なるほどっ。でもなんで、わたしに言ってくれなかったん?」

「風花が晴路のことが()――じゃなくて、秘密を教えてくれるまでは伝える意味ないと思ったし、教えてくれた後は逆に言いづらくなっちゃって……」


 確かに夏実の言うことは誰でも考えるし、夏実のような行動を取るだろう。

 それにしても掛田さんの秘密を言いかけていたが、あれでやり過ごせたと思っているのか――?


「良いけどね、別に」

「ありがとっ」


 こうして、この事態は無事に解決した。


「夏実と割ヶ谷が裏で付き合ってんのかと思ったー」


 そんな掛田さんのボソッと発言は、聞こえなかったふりをしておいた。

 さすがの夏実も、自分に関わることには触れたくなかったようだ。



   / / / / /



「お待たせしましたー」


 と言って、店員がオムライスを三つ持って来た。


「おー、美味しそう」

「うんうんっ」

「家のとは違う良さを感じる」


 ケチャップとデミグラスソースの入り混じった混沌とした、だが美味しそうな匂いがテーブルを包み込んだ。

 スマホを手に取り写真を撮る掛田さんはとても楽しそうで、つられて俺も一枚撮影してみた。


 すると俺の向かい側で、二人がこそこそと俺に聞こえない声で会話をはじめた。

 どうやら夏実が掛田さんに何かを吹き込んでいるようだ。

 そして話終わったのか、二人が俺の方を見つめてくる。


「割ヶ谷、私たちの写真撮ってくれない?」

「別にいいけど……。俺、撮るの下手だぞ」

「いいのいいの」


 下手なことは否定しない夏実に急かされ、俺はできるだけの(女子)(カメラ)力を使い何枚か写真を撮る。

 及第点と言ったところか――。


 ちなみに二人はピースしたり頬にくっつけたり、ザ・女子高生みたいなポーズをしていた。

 それを見るとついニヤけてしまったのは、掛田さんか夏実か、どちらのせいなのだろうか。


「割ヶ谷も撮ってあげようか?」


 掛田さんが提案してくる。

 俺が写っても仕方ないし、断ろうかと思っていると、左前の夏実から、縦に頷け――と言わんばかりの睨みがとんできた。


「……じゃあお願い」

「うんうんっ。風花ちゃん、綺麗に撮ってあげるんだよ」

「分かってる、し」


 掛田さんはスマホの画面に注視して、俺に背面を向けてくる。

 その手は少し震えていて、らしくない。


 …………。


 数回シャッター音が鳴り、掛田さんはスマホをテーブルに置いた。

 写真フォルダーで、今撮った写真を確認しているようだ。


「どう?」


 そう夏実が聞くと、掛田さんは「嬉しい」と応えた。

 夏実はしてやったりと微笑んでいた。

 写真を撮ろうと言ったのは、絶対に夏実だろう。


「私たちの写真あとでちょうだいね」

「もちろん。夏実に送ればいいか?」

「あー……いや、割ヶ谷も自分の写真貰わないとでしょ。だから風花に送って、送り返してもらったら?」

「じゃあ、そうしようかな」


 これも夏実の目的なのか――。

 かなりの策士だ。


「風花もいいよね」

「いいよ」


 掛田さんの嬉しさを隠しきれていない顔を見ると、俺は満更でもない気持ちになる。

 これは仕方ないのだと、自分に言い聞かせた。


「早く食べよっ」


 夏実の一言で、俺たちはオムライスを食べはじめた。

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