第49話 報告
風花と付き合い始めて二日後の月曜日――。
俺たちは、二人並んで学校に向かっていた。
今日は腕を組むなんてことはしていない。
したいのはしたいのだが、あまり浮かれすぎるのも良くないと割り切っている。
「晴路、みんなには伝える――で良いんだよね?」
「あぁ、もうそう思われてるみたいな感じだから、言ってしまいたい」
「うん、そうしよ。わたしもその方が良かったし」
恥ずかしいから隠したままでいるというカップルも、この高校には多いのだろうが、俺たちは隠すもなにもバレている。
一昨日にこの話をして、隠さなくてもいいという結論に至った。
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教室に着いて、自分の席に行くため風花と離れる。
席に荷物を置いたちょうどそのとき、隣から見知った声が聞こえてきた。
「晴路、聞いたよ。やっと付き合いだしたんだってね」
横を見ると、夏実がにんまりした顔で座って、こちらを見てきていた。
「風花から聞いたのか?」
「もちろん、すごく興奮して喜んでたよ」
「へぇ――」
他人にも分かるほど喜んでいたなんて、本当に風花が彼女になってくれたと実感できて、なんだか嬉しい。
思わずニヤけてしまいそうだ。
「で、晴路から言ったんだよね。告白……」
「まぁ最終的には……。風花に言われそうだったけど」
あの場面を思い返す。
あのときに勇気を出して良かったと、しみじみ感じた。
「ふーん。幸せそうでなにより」
吐き捨てるように夏実は言った。
…………。
次に付き合ったというべき人は誰だろう。
そう考えると、累が思いついた。
伝えるべきか悩むところだが、ここで言ってしまわないといけない気がする。
自己満足と言われたら言い返せないけれど、少なくとも俺はこの方がいいと思った。
「累、話がある」
俺は累の席まで言って、話しかけた。
「あぁ、晴路か。どうしたんだ?」
「……風花の話なんだけど」
累は俺の顔をじっと見た。
そして何かが分かったように一度頷く。
「俺――」
「――いや、いい」
と、累に言葉を止められてしまった。
いつのまにか、累の視線は斜め上を向いていた。
「それぐらい分かる」
強かった発言に、少し気圧された。
累が向いている先には、なにも答えは書いていない。
俺はなにも言い返すことができないと分かり、ただ黙って自分の席に戻った。
3ターンもなかった会話なのに、それ以上の意味を感じ取れた。
俺が累に伝えたのは、合っていたのだろうか――。
自信が持てない。
自然に伝わるのを、待っていた方が良かったかもしれない。
正しいがないのに後悔して、悩んでしまっても仕方ない――。
そう自分に言い聞かせて、割り切ることにした。
…………。
放課後になって、新聞部の部室へとやってきた。
風花とお喋りをしていたせいで、少し遅れてしまったが仕方ないと許して欲しい。
「雫、茅根――」
俺は先に部屋にいた二人の名前を呼んだ。
すると二人とも俺の方を見て、どうしたのかと不思議そうな顔を向けてくる。
「俺、あのとき言ってた風花と付き合い始めた」
「…………」「っぇ」
驚いた顔を見せてくれるから、俺は少し嬉しくなった。
「ガヤ、やっとなれたんだ。おめでとーっ!」
「いやいや――」
拍手までして褒めてくれ、恥ずかしくて顔が赤くなってしまう。
茅根は雫の方にブンッと顔を振り向けて、机に手のひらを打ちつけた。
雫は驚いたまま、動かなくなっている。
「シズちゃん、大ニュースだよ。大ニュース!」
「割ヶ谷先輩に……」
やっと雫は声を出した。
「……おめでとうございますっ」
パチパチ、パチパチ――。
茅根も雫も、拍手をやめない。
新聞部史上、一番の盛り上がりかもしれない。
「こんなことがあるんですね」
「うんうん、信じられないよ」
なんだか言葉の意味が、凄い――ではなくて、なぜ――になっている気がしたが、気にしないでおこう。
「告白の言葉は、なんて言われたん?」
茅根が聞いてくる。
「告白自体は俺がしたかな。半々みたいな感じでもあったけど……」
「ガヤがっ!? へぇ――」
「やっぱり、するときはする男なんですね。割ヶ谷先輩は」
そこまで褒められるとは思っていなくて、正直かなり驚いた。
この日は帰るまで、俺と風花関連の話題が尽きなかった。




