第47話 神戸-3
最後の目的地の最寄り駅までやってきた。
そして改札を出て、ひたすら川沿いの坂道を上の方へのぼっていく。
「見て、後ろに海が見えるよ」
「ん?」
風花がそう言うのを聞いて振り返ってみると、住宅街の奥に青い海がある。
間近で見るのとは一味違った、特別な良さを感じ取った。
「良い景色だな――」
空はオレンジ色になりはじめ、まさしく夕焼けと言った雰囲気だ。
このエモーショナルな情景に、思わず先走って、風花に気持ちを伝えてしまいそう。
「海ってやっぱり良いよね」
「あぁ、ほんとにそう」
俺たちは元々の進行方向を向いて、再び歩き出した。
「ねぇ、晴路。今向かって行ってるのって、あそこだよね」
風花は駅と方角で見当が付いたのだろう、そう言ってきた。
あそこ――だけで、俺にもどこのことか伝わったのは、一度、その場所の名前が会話の中に出てきていたからだ。
「うん。風花がスマホを見て、いいなって言ってたから、一緒に行こうと思って――」
「そっか……。嬉しい」
風花の笑顔は、夕焼けよりも眩しかった。
…………。
麓にある乗り場からロープウェイに乗り、山の中腹あたりまでやってきた。
駅から外に出ると、無数の青や赤に緑などの電飾が視界に飛び込んできた。
イルミネーションの煌々とした光が、とても美しい。
「おー……」
風花は感嘆した。
左右を見渡して、目を輝かせている。
「予想以上にすごいな――」
「ほんと、そう。なんか、もう、感動してきたよ」
「早くない?」
「晴路もすごいすごい、言ってんじゃん」
それはそうなのだが……。
俺の言葉にも、そんな気持ちを向けてくれるのか、だんだん不安になってくる。
喜んでくれる保証なんて、どこにもない――。
…………俺は邪念を振り払おうと、目の前の景色を眺めた。
「行こっか――」
風花は急かすように、腕を引っ張ってくる。
イルミネーションの近くに寄ると、明かりでぼんやりとだが、花が咲いているのが見えた。
ここは昼間、ガーデンでさまざまな花が植えられている場所なのだ。
「花も綺麗――」
青色の花を見ている風花は、そう言った。
「また、昼にも来たいな……」
「うんうんっ、そうしよそうしよっ」
「あぁ」
風花が勢いよくこちらを振り返って応える。
その勢いに、少し押されてしまった。
「いつか。いや絶対に、一緒に来るよ――」
「うん、絶対だ」
俺の返答を聞いて満足げに頷いた風花は、俺の手を引っ張りながら、奥へ奥へと進んでいく。
しかしスピードはゆっくりで、俺はこの時間をしっかりと噛み締めた。
…………。
景色の眺めながらだと、あっという間に時間は過ぎていき、一時間ぐらいが経っていた。
そろそろ帰りに向かう時間だ。
うん――。
俺は心の中で、強く決心する。
帰ろうという話題が出る前に、話をしてしまおう。
長引かせても良いことはない。
なのに……
「もうこんな時間だね――」
風花はそう言った。
俺は少し焦ったが、どうするべきかすぐに考えた。
「ちょっとこっち来てくれる?」
さっきまでとは異なり、俺が風花の腕を引っ張った。
優しい手つきをと注意しながら歩いていく。
この手を、決して離したくなかった。
周囲に人は全くいない。
このあたりにはイルミネーションもないからそうだと思ったのだが、当たっていたようだ。
風花と向き合う。
風花の顔が、赤らんでいる気がする。
俺は今から…………。
風花に、俺の思いを伝える――――。
無性に気持ちが溢れてきた。




