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好きバレした掛田さんが可愛すぎる話  作者: 冷泉七都
第四章

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43/50

第43話 放課後は風花の部屋で

「お邪魔します」


 そう言いながら玄関に入ると、廊下の奥から風花の母であろう人が出てきた。


「あら、いらっしゃい。晴路君かしら?」

「はい……そうです」


 名前が知られていることに驚きつつも、肯定を返した。

 すると段々とこちらに近づいてきて、俺の右手が両手で掴まれた。


「風花によく話を聞いてるから、ずっと会ってみたかったのよ」

「はは……。晴路ごめんね、こんな親で」


 風花は苦笑いしながら、耳元で囁く。


「娘の好きな人が来て、きっと、すごく嬉しいの」


 どうやら風花の母にも、風花が俺を好きなのはバレているらしい。

 俺は一瞬、誰の言葉も耳に入らなくなった。

 掛田家として歓迎ムードなのは、とても安心した。

 それと同時に緊張が湧いてくる。


「2階に上がりなさい。お菓子でも持って行くわ」


 やっと聞こえた風花母の言葉で、俺たちは階段へと足をかけた。

 上って行く途中、背後から「《《変なこと》》は《《まだ》》しないでね」と言われた。


 どう言う意味か――。

 分かりたくなかったが、分かってしまった。

 どうやらそれは風花も同じだったらしく、「お母さんがいるときには、しないよ!」と反論していた。


 ん……?

 お母さんがいるとき『《《は》》』?


「ほら、行くよ」


 少し考え込んでいると、そう言われて手を握られて引っ張られる。

 風花の手は熱かった。


 …………。


 ベッドに二人隣で腰掛けている――。

 起きてしまう沈黙も、辛いとは思わない。

 逆に、心地よいとまで思ってしまう。


「晴路――。朝はあんなことみんなに言っちゃってごめんね」


 俺が棚の一角を眺めていると、風花は話しだした。


「いや、……ううん。ちょっと驚いたけど、風花がそうするって決めたなら全然いいよ」

「ありがと――。まぁ、わたしも少しは後悔してるんだけどね」

「そうなんだ」


 意外だ。

 昼の対応を見ていても、それでよかったと思っていそうだったし、計画通りと思っていそうと感じていた。


「でも、ね。みんなにバレちゃったんだから、もう隠さずに晴路とイチャつける。それはするしかないなって……」

「イチャつくって、意味が――」


 それは付き合ってるってことじゃないか?

 そう言いたかったけど、言わないことにした。

 なのに――。


「付き合ってるんじゃないかってこと?」


 風花からそう言われてしまえば、正直に答えてしまおう。


「まぁ、そうゆうこと」

「ふーん……。じゃあ、わたしと晴路がしてた行動は、付き合ってるに等しいんだよね」

「そう、なるのか」


 間違っていそうなのに、正しいとしか思えない。

 きっと、まさしく正論なのだろう。


 すると風花は、頭を下げて俯いた。


「なら、付き合ってくれたらいいのに……」


 そんな掠れた声が聞こえた。

 風花は俺に告白まがいなことを何回かした。

 特に一番初めは、「俺も」と応えれば完結する、完全なるものだった。


 俺が行動しないといけない。

 それは明白だ。


「今週末でもすぐに、どこか遊びに行こう」

「……ん」


 風花は顔を上げて俺を見た。


「少し遠いところに行こう。特別な思い出にしたいから」

「いいよ、行こう」

「それなら……」


 俺は場所を思いついていなかったことに気づいた。

 こういうのは、どこでするべきなのだろうか。


「神戸とか、良いわよ」


 風花の母の声が聞こえた。


「お母さん? なんでいるの? ノックぐらいしてよっ」

「五回くらいしたのに、反応なかったから入っちゃったの」

「えぇ、ほんと?」


 風花は信じられないという様子で言った。


「集中した話してたんでしょ、気づかないものよ」


 多分、嘘じゃない。

 風花も信じたらしい。


「これお菓子と飲み物。晴路君も遠慮なく食べてね」


 そう言って、風花母は廊下へと消えていった。

 隣で風花がスマホを触り始めた。


「神戸か……。いいね、行きたいっ」


 風花は俺に画面を見せてくる。

 そこには、おしゃれなガーデン園が映っていた。


「それなら、神戸に行くか」

「うん! それで、詳しくは晴路が考えてくれるの?」

「そのつもりだけど……」

「じゃあ、よろしくっ」


 家に帰ったらすぐに、計画を立てようと思った。


 …………。


「そうだ、晴路。今日のわたしって、うざかった? 嫌じゃなかった?」


 唐突に不安そうな顔を浮かべる風花。

 なぜ急にそんなことを聞いてきたのか――。

 それは考えても分からないから、とりあえず風花を安心させないとと思った。


「そんなことない」

「ほんと?」

「ほんと。もっとされたいぐらいだった」


 言った後に、失言だったと気づいた。

 風花に念を押されて聞かれて、思わず答えてしまったのだが、よく考えてみればとんでもないセリフだ。


「いや――、別に深い意味は、なくて……」

「いいよ。明日からは頑張るね」


 少しだけ、風花が俺の方に近づいてきた。

 腕と腕がぶつかっている。

 そして俺の手の甲に、風花の手の甲を押し付けられている。


「バレちゃったんだし、側から見たら付き合ってるって思われたとしても、しても良いよね」

「…………」


 次のデートまで待ってくれ、そこで言うから――。

 とは、決して言えなかった。


 なにをされるのか。

 不安よりも楽しみがまさっている気がした。

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