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好きバレした掛田さんが可愛すぎる話  作者: 冷泉七都
第三章

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第41話 割り切る

  次の日――。


 俺が教室に入ると、なにやら騒がしかった。

 そして自分の席へと向かっていく最中、ずっと誰かに見られている気がした。というよりも、完全に見られていた。

 俺が席に着くと、すでに隣には夏実がいて、すぐさま話しかけられた。


「けっこうヤバいことなっているよ、晴路」

「ヤバい?」


 なんのことだろうか。

 まさか、またあの水族館の話ではないとは思うけど……。


「これこれ」


 そう言って、スマホを見せてくれた。

 その画面に映っていたのは、昨日も見た写真だった。

 しかも俺たちがあーんしあっている方だ。

 手を繋いでいるだけなら、まだマシだったかもしれない。


 しかし、雫が見せてくれたのとは少し違う。

 夏実が持っていたのは、現像された写真を写真に撮っていた。


「まさか――」


 もしかしてと思って、俺のカバンの中を探ってみる。


「あっ……」

「どうかした? 確かに、この状況はどうかしちゃってるけど」


 夏実のよく分からない発言に、耳を傾ける余裕はない。

 とにかく、俺は雫にもらった写真をどこかに落としてしまったらしい。


「それって、みんな知ってる……よね」

「うん、結構出回ってるらしいよ。今日の朝に、昇降口に落ちてあったって聞いた」

「あぁ、そっか」


 俺は返すべき言葉が見当たらなかった。

 言い訳しても、それは言い訳に過ぎないし、これをただ認めるしかない。


 今は夏実と話しているから、他の誰も俺に話しかけてこないが、もし一人になったら真意を問われるに決まってる。


 しかし、ここにやって来たのが一人だけいた。


「おはよー。晴路、夏実」


 何も知らない風花だ。


「おはよう」

「おはよ」


 ちょっとこれはヤバいなと思って、俺たちは素っ気ない挨拶になっていたかもしれない。


「二人ともなにかあった? 元気ないけど」

「いや、まぁ」

「特にはないよ?」


 しどろもどろの回答に、風花の顔は渋っていく。

 絶対、怪しんでいる。


 夏実が「ねーっ」と言って、俺の肩にでも触ろうとしたのだろう。

 右手をこちらに伸ばして来た。


「夏実っ」


 そっちの手にはスマホがあるだろ、しかもあの写真のままだし――。

 そう言えばいいけど、そう言うとバレてしまう。

 だから、名前を呼ぶしかできなかった。


 夏実はなにも気づかずに、風花側に画面を向けてしまった。


「えっ、ちょっ――」


 そう声を漏らした風花は、光の速さで夏実のスマホを奪い取った。

 夏実はようやく自分のしたことに気づいて、口があわあわ、しどろもどろになっている。


「夏実、これは誰にもらったの?」


 これに対して聞くのが夏実なのは、当たり前だ。

 しかし、これが出回ったのは、元はと言えば夏実ではなく俺が悪い。

 だから――。


「ごめん、風花」


 俺が謝った。


「なんで晴路が謝るの?」

「新聞部の後輩がたまたま、あのとき水族館にいて、この写真を撮られたんだ。それで、それを現像した写真をくれるって言うからもらって……。今日、気づいたらなかった」


 俺は要点をしっかりと伝えた。

 風花はうんうん――と少し考え込んでから、喋り出した。


「じゃあ、その後輩がダメってこと?」

「いや、そういうわけでもなくて。撮られたのも、元々俺が悪いし……」


 風花が、は――? という表情を浮かべる。

 俺はこれ以上上手く伝えられる自信がなかった。

 少しして、風花は何も言えなくなった俺の目を一度見た。


「分かった。わたし、決めたから」


 風花は素っ気なくそう言った。

 なにを決めたのか――。

 それは聞いても答えてくれなかった。


「うん――」


 自分に大丈夫だと言い聞かせるように、風花は呟いて頷いた。

 そのまま自分の席へと戻っていってしまった。


「大丈夫かな……?」


 夏実が風花の背中を見ながら心配の声を漏らした。

 俺もそれに首を縦に振った。


 ………………。

 …………。

 ……。


 少しして、風花のもとへクラスメイトの女子が二人、歩いていっていた。

 それを見ると、俺は何か起こるのではないかと気になってしまって、聞き耳を立てる。

 横に視線を向けると、夏実も同じようなことをしていた。


「風花ちゃん、晴路くんとは付き合ってるの?」


 初っ端から飛んだ質問がされて、俺と夏実は驚いた。


「晴路とはまだ付き合ってないんだよねー。わたしは晴路のこと《《好きなのに》》――」


 クラスメイトが沢山いるにも関わらず、風花は大きな声でそう言った。


「風花ちゃん!?」

「ただ、それだけ」


 風花に質問していた女子も、その言葉に声が裏返ってしまっている。

 ただそれだけ――じゃないだろ。

 言い退けると、風花は前を向いた。

 本当にそれだけだという意味だろう。


 夏実は、ゆっくりと俺の方を向いた。


「風花、好きなのバラしちゃったけど……」


 晴路はどうするのか――?

 いろんな人になにか言われないか――?

 夏実の言葉にはそんな意味が含まれている気がしたが、俺は「そうだな」としか返せなかった。

 これは今までで一番の予想外だ。

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