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好きバレした掛田さんが可愛すぎる話  作者: 冷泉七都
第三章

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第30話 累の考え

 放課後になると、累はすぐさま俺のところにやって来た。


「どうなんだ――?」

「…………」


 話しかけられて早々、その話をし始めるとはまったく思っていなくて、俺はすぐに言葉が出なかった。


「まぁ。こんな人がたくさんいる教室の中じゃ……、話しづらいよな」

「あぁ」

 

 確かに、それはそうだ。

 累は俺の考えとは違う方向で受け取ったが、その方が良かったかもしれない。


 俺は、今どれくらい人がいるのか――と周囲に目を遣った。

 すると、少し離れたところから、風花がこちらの様子を伺っているのに気づいた。


「じゃあ、場所移動するか?」


 少し考えてから、累は提案して来た。


「そうしよう」


 俺がそう言うと、累は歩き出した。

 どこに行くのか分からなかったけど、俺はただついて行く。

 教室から出るときに後ろを振り返ると、風花が不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。


 歩くこと1分ほど――。

 俺たちは特別教室が並んでいる校舎の最上階へとやってきた。


「ここなら、誰にも聞かれないよな」

「そうだと思うけど」


 誰にも聞かれたくないのは、累だけでなく、俺もだ。

 普段あまり人が来ない場所であるうえ、放課後で校舎にいる人も少なくなってくるから大丈夫だろう。


「でさ、聞いてくれたのか? 風花に好きな人がいるのか――」


 俺は深呼吸をしてから、一度首を縦に振った。

 顔を上げて累を見ると、なにかを噛み締めるような表情を浮かべた。

 下の方から、なにかが割れる音がした。

 この下は化学実験室があるから、ビーカーやフラスコを落としたのかもしれない。


「いるってさ」


 俺はしっかりと言葉にした。

 ジェスチャーだけじゃダメだと思った。


「はぁ……」


 累は溜め息を吐いた。

 それがどう言う意味か、俺には分からなかった。

 すると累は「もしかしたら……」と、話しはじめた。


「もしかしたら、風花が好きなのは俺でした――とか。いや、そんなのありえないよな」


 《《風花が好きなのが俺》》?

 なんで、累はそんなことを思ったのだろうか。


 いや、累が少しでもそう思っているなら、俺はそれに乗っかって「そうだよ」とか言えば良いんじゃないか。


「そう――」

「――でも」


 俺の言葉に累の言葉が重なった。

 そのせいで、累に俺の肯定は聞こえなかった。

 それでよかった。


「でも、風花が俺を好きなわけないよな。一回振られてるんだし」


 俺は勘違いしてしまっていたことに気が付いた。

 なるほど、そういうことだったのか。


「まぁ……な」


 そして累は自嘲しはじめた。


 風花に好きな人がいなければ、あわよくばみたいな考えできたのに。

 いざ好きな人がいると知ったら、絶対に無理だって実感が湧いてきて弱気になる。

 それがなんだか自分でも嫌だ――。

 そんなことを言っていた。


 累は、そんなことばっかり考えていたらダメだな、と呟いて「風花を応援してあげないと」と言った。

 俺は累がそんなすぐに諦めることを不審に思いながらも、頷いた。


「晴路は知ってるのか? 風花が好きな人の名前――」


 やっぱり知っておきたいよな、好奇心だけでなく、応援したいと言うのなら。

 今度こそ、本当のことを伝えられる瞬間だ。

 しかし、そんなときにはさっきの勘違いみたいな手助けはない。


 ………………。

 …………。

 ……。


 なんと言えばいいのか……。

 俺――と言えばうざいし、ムカつかれるし。

 なにより、頑張れって言ってくれてたのに、それは嘘だったのか、と言われたらなにも言い返せない。

 

「まぁ、言わなくていいかも……な」

「……ぇ?」

「風花の行動を見てたら気づくだろうし――。今まで気づかなかったのは、俺がちゃんと風花を見ていなかったせいかもしれない」


 今、風花は俺とやたら関わってくる。

 それに累が好きな人と関連づけなかったのは、俺が風花からそれを聞き出そうとしていると思っていたから。

 ならば、少し累に任せてしまう部分があるが、俺はこう言えばいいだろう。


「なぁ、累」

「なんだ?」

「俺、風花と関わっていくうちに、風花に対する思いが変わっていったんだ」


 すこし気障ったらしい言い方になってしまったが、こういうのものだ。


「…………」

「だからもう、累を応援する気持ちで行動することはない」

「わかった。……頑張れ」


 累は本当に認めてくれたのか分からないけど、一応は理解してくれたらしい。


「ごめん」

「いいよ。晴路の方が、俺よりも風花と仲良くできるだろ」

「そんなことないけど――」


 俺がそう反応しても、累はいや違うみたいな顔をしてくる。

 なにが、その思いを確かにさせたのだろうか。


「夏休みの間に、下の名前で呼ぶようになったのに?」


 累のその言葉でハッとした。

 昨日の夏実に対してとまったく同じことになって、注意不足だったと感じた。


「色々あったんだ」

「やっぱり、晴路の方が良いんじゃないか?」

「まぁ……」


 流石に、これは否定できなかった。


 廊下に響く足音は、微かにしか聞こえない。

 窓から見える景色も、どこか遠い場所のもののように見える。


「「…………」」


 そこから話は続かずに、どちらからとなくここの場所を離れることになった。

 とあるフロアで、俺と累はわかれた。

 累は野球部の練習があるらしい。

 こんなにスポーツに熱心になる累の方が風花に似合っていると思う――なんて、とても言える状況じゃなかった。

 だからそこ、俺は俺の気持ちを風花にしっかりと伝えようと思った。

 明日じゃなくてもいいから、二年生が終わるまでには絶対。

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