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好きバレした掛田さんが可愛すぎる話  作者: 冷泉七都
第三章

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第28話 席替え

 式が終わり教室に戻ると、累の周りに何人ものクラスメイトが集まって、「浅川、お前すごいなっ」「カッコいいよっ」とか言って讃えていた。

 俺はそれを後ろから眺めながら、次の時間が始まるのを待つ。


 しばらくして、担任の先生が教室へとやってきた。

 右手にはペットボトルを半分で切り取った下側を持っていて、その中には無数の割り箸が入っている。

 どうやら、あれを使ってランダムに座席を決めるらしい。


 授業開始の時間になったが、教室は少し騒がしい。


「アリーナ席は絶対に嫌だな」とか。

「窓側に行って外を見たい」とか。

 友達の誰それと隣の席になりたい、とか。

 そんなことを話している。


「目が悪いとかで、前が良い人は先に言えよ」


 先生がそう言っても、誰も手を挙げなかった。


「なら、もう引いていってもらうぞ――。じゃあ、名簿の一番から」


 そして、抽選会は始まった。


 ………………。

 …………。

 ……。


 俺が持っている割り箸に書かれた数字は、5。

 つまり、窓側の前から5番目のところということだ。

 他の人がどうなのか、それは移動してからのお楽しみにする――それが先生の方針らしく、全員が黙ったままでいる。

 口外した人がいないのは、みんなそれの方が面白いと思ったからだろう。


「荷物を持って、数字の席に移動しろ」


 先生の一声で一斉に立ち上がって、動き始めた。

 俺は移動距離が長く、新しい席に着く頃にはほとんどが座っている状態だった。


「晴路」


 右隣の席からそう話しかけてきたのは、風花――ではなく……。


「なんだ、夏実か」

「なんだ、って……。露骨に嫌そうな顔しないでよ」

「それはごめん」


 夏実が呆れたような、不快感を示すような、そんな表情をしてくるから、俺は両手を合わせて謝った。

 すると夏実はうんうんと頷いて、「まぁ、いいけど」と言ってくれた。

 そして――。


「晴路は誰の隣が良かったのかなー」

「なっ」


 周りには聞こえないように小声で言ってくれているのだが、そういうことを言われれば俺は思わず反応してしまう。

 夏実はニヤニヤしているし、絶対に、誰(イコール)風花のつもりなのだろう。


「多分、その人も隣が良いなって言ってると思うよ」


 おそらく、いつか夏実が風花と話したときに相談されていたのか。

 俺が風花から全く同じことを言われていたなんてつゆ知らず、夏実は遠回しに両思いというのを伝えてくる。


 ……って、俺がいつ夏実に風花を好きになったと言ったのだろう。

 記憶がない。

 もしかすると、女の勘とか言われるやつなのかもしれない。


「聞いたよ、それ」

「……ぇえ!」


 少し大きな声を出してしまいみんなから注目を浴びてしまった夏実は、すぐに自分で口を塞いだ。

 夏実との話に夢中で気が付かなかったが、先生がなにか話をしていたようだった。


 周囲が目線を先生に移していくと、夏実はさっきよりも声を控えめにして再び喋り出した。


「いつ? 風花から?」


 さっきまで名前を隠していたのに堂々と言うから、なんだかおかしくて軽く笑ってしまった。


「今日の朝、直接」

「へー、なるほどね。で、なんて返したの?」

「あー……」


 なにも、言ってないな。

 夏実に言われてようやく、風花に俺が同じ内容を言い返さなかったことを後悔してきた。


「……はぁ」


 夏実は溜め息を吐いた。

 俺が受け身になっていただけなのを、分かったのだろう。


 俺は教室を見渡して、風花を探した。

 すると、こちらをジーッと見ている風花と目が合った。

 風花はそれに気づくと、すぐに目を逸らした。


「晴路。あとでちゃんと、風花に隣じゃなくて残念とか言ってあげなね」

「あぁ、言うよ、風花に」

「うんうん」


 夏実は深く頷いた。


「ってか、晴路も下の名前で呼んでるんだ」


 てっきり、風花がすでに言ったのかと思っていたが、夏実に俺たちが下の名前で呼び合うのは伝わっていないらしい。


「まぁ、色々あってな」

「ふーん、そっかー」


 夏実は笑みを浮かべた。

 しかし、どこか優しさを含んでいる気がする。


「今からプリント配るぞ」


 先生がそう言った。

 一際声が大きく、それは耳に入った。


 確かに、名前呼びしてるのが風花だけなのはおかしいか――。

 夏実はそう呟いてから前を向いた。


 俺が再び風花の方を見ると、またもやこちらを見ていた。

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