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好きバレした掛田さんが可愛すぎる話  作者: 冷泉七都
第三章

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第27話 久しぶり

 祭りの後の夏休みは、風花に会うことがなく、ただただ過ぎ去った。

 俺としては、もう一度くらいは会いたかったのだが、自分から誘うというのはなんだか気恥ずかしくてできなかったのだ。


 ………………。

 …………。

 ……。


 そして、夏休み明けの初日――。


「おはよっ」


 俺が教室に入るや否や、風花は俺の机へとやって来て挨拶をした。


「おはよう、……風花」


 俺はわざと、下の名前を言った。

 すると風花は「久しぶりだねっ、晴路っ」と、対抗するように名前部分を強調してきた。

 それが無性に愛おしく感じて、俺も風花も思わず笑みを漏らしてしまう。

 しかし、それに突っかかることはできない。

 だから違う話題を振って、取り繕った。


「そういえば、今日のロング()ホーム()ルーム()って席替えだったよな」


 夏休み前最後の日、ずっと同じ席だったら飽きてくるだろ――という先生の一声によって、二学期初日に席替えが行われることが決定した。

 そのときは、歓声と嘆声が入り乱れた。


「あー。せんせー、そんなこと言ってた気がする」

「そうそう」

「なんか、晴路は乗り気じゃないっぽいねっ」


 そう、俺はあまり席替えをしたくない。

 座席が前の方の人なら嬉しいかもしれないが、俺のような最後尾にいる人たちからすれば、良いことは一切ないのだ。


「まぁな」

「でも、わたしは楽しみだよ」

「へぇー、なんで?」


 なんとなく質問をした。

 すると、風花は少し間を開けてから言った。


「……だってさ、隣になれるかもしれないじゃん」


 するとすぐに顔を赤らめて、焦ったそうに右手の人差し指で左手の甲をトンっトンっと何度も叩いた。


 その隣というのは、誰の隣なのか。

 俺だと一瞬思ったが、もしかしたら夏実かもしれない。

 どっちが正しいか分からず、返す言葉が思いつかない。


「ちょっと……、恥ずかしいから何かは言ってよ」


 俺が何も返さないでいると、風花はこちらをしっかりと見つめて、そう怒りっぽく伝えてきた。

 そう言うってことは、やっぱり『俺――晴路の隣』というわけだったのだろう。


「なんつーか、ごめん」

「まぁ、別に良いけどね……」


 風花は素っ気ないように言った。

 しかし、本当に無感情という感じではなく、少し顔がほころんでいる。


 俺も席替えで嬉しいかも――。

 そう気持ちが変わったのだが、俺には口に出すことができなかった。



   / / / / /



 今日から二学期ということで、簡易的だが体育館で式が行われる。

 その式では、校長先生の長い話はもちろん、夏休み中にあった大会で成績を残した生徒の表彰もある。


「それでは、対象の生徒は舞台裏まで来てください」


 司会の先生がそう言うと、二十人ほどの生徒が立ち上がって、裏へと向かって行った。

 俺は案外多いなと思いながら、それをただ眺めた。


「それでは初めに、野球部の表彰を行います」


 野球部の部員達がマネージャーも含めて、壇上に来た。

 その中には――。


「累……」


 俺は思い出した。

 累になにか頼まれていた気がする。


「野球部は府の大会で準優勝をしました。今までの本校で、一番の成績です」


 それはすごいな。

 俺の耳に入らなかったのが不思議なくらいだ。

 校長先生が自慢げな顔をしてしまうのも無理はない。

 賞状を渡すときも、肩を軽く叩いて何かをコソッと伝えていた。


 キャプテンらしい人が俺たちの方へ賞状を掲げる。

 累は視線を動かした。

 俺のやや下くらいに目を遣っている。

 誰に目線を向けているのかは、明白だった。


 野球部への拍手が鳴り止むと、舞台から立ち去っていく。

 累の手は、きつく握り締められていた。

 そして、次の部活の表彰へと移っていった。


 風花に好きな人がいるのか――。

 俺は、どこまで累に伝えれば良いのだろう。


 風花に好きな人が……。

 風花を好きな人が……。

 その二人が……。


 悩みに悩んで、嘘は吐かないでおこう、自分からは言わないが――という結論に至った。

 しかし、累が風花のことを想っているという事実が少なからず嫌なのは確かだ。


 その後の表彰は頭に入らず、ただただ考えるだけで時間が過ぎていった。

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