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好きバレした掛田さんが可愛すぎる話  作者: 冷泉七都
第二章

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第13話 カフェップル

 チャイムと同時に、シャーペンで文字を書く音が止んだ。

 解答用紙の回収が終わると、教室中から喜びの声が上がる。

 これで全ての教科のテストが終了し、俺たちは自由の身となったのだ。


 まだ12時になっていないこともあってか、さっそく友達同士でどこかに遊びに行くとか話し合っている人もいる。

 掛田さんと夏実も、みんなと同じように盛り上がっているかと思えば、二人は俺めがけて近づいてくる。

 すると掛田さんは両手を合わせて、お願いするポーズをとった。


「割ヶ谷って、今から暇?」

「あぁ、予定ないから暇だぞ――」

「なら……さ。わたしたち、最近駅前にできたカフェ行こうと思ってるんだけど、割ヶ谷も来ない?」


 クラスメイトの女子によると、その話題のカフェはお洒落系の店で、聞いている限りでは男子は行きにくい雰囲気らしい。

 俺がそんなところへ食べにいくのは、ちょっと場違いな気がする。

 だから、やんわり断りたいのが本心……。


「でも、二人で行くんじゃないのか?」

「別に、わたしはわたしから誘ってるし」

「前にも行ったけど、問題なかったでしょ。……ね」


 夏実の、ね――の言葉の圧力が凄まじい。

 安易に断れないというのをひしひしと感じる。

 前回は普通のチェーン店だったし、はじめに掛田さんもいるなんて伝えられてなかったし、問題はあった気が、とは言いづらい。


「私、いくらか出すからさぁ――」


 そこまで言われると、もう行って仕舞えばいい気がしてきた。


「分かった。俺も行く」

「よしきたっ」


 夏実はそう言って、掛田さんはニコッと笑顔を見せてくれる。

 そんなに嬉しそうにされたら、さっきまでのどうしようかの悩みなんて忘れてしまいそうだ。


 掛田さんと夏実は一度自席に戻り、机に置いていたカバンを肩にかける。

 そして二人は廊下の方へ歩き出し、俺はついて行った。



   / / / / /



 俺たちは窓際の四人掛けのテーブルに座った。

 掛田さんはカフェモカに、この店で一番食べられているという自家製ミルフィーユを頼んでいる。

 そして夏実は、すでにそのミルフィーユを買ったことがあるらしく、紅茶とミルフィーユを注文していた。

 ちなみに、俺はドリップコーヒーだけにした。


「晴路、そんなに緊張しなくてもいいんじゃない?」


 店内に俺以外ほぼ女性しかいないことを再確認すると、なんだか顔を動かして周囲を見渡すのも危ない気がして、少しキョドっていたかもしれない。

 そんな俺に、夏実が露骨にニヤニヤしながら聞いてくる。


「いや。なぁ――、さすがに俺浮いてる気がするし……」


 からかわれて大声で言い返したかったのだが、こんなところでそんなことできないし、そもそも夏実の言う通りだから、だんだんと声を小さくさせてしまう。

 すると、夏実はなおさら楽しそうな表情をして、顔を縦に振り頷いた。


「大丈夫、大丈夫。ね、風花」

「ぇ、わたし? まぁなんつーか、そこにも男の人いるし、さ……」


 急に話を振られて驚きながらも、しっかりと返答する掛田さんだったのだが――。

 掛田さんの目が見遣る方向にいるのは、俺たちと同じ制服を着た男女のカップルだ。

 男女が仲良くしているだけで付き合っているとは限らず、友達かもしれない、と言われるかもしれないが、この二人は絶対に付き合っている。

 あの席の周りだけ、甘い空気が漂っている。


「あの人ら完全に付き合ってるよね」

「あぁ」

「……うん」

「やっぱりこういうところに来る男って、彼女とかとじゃないとあまり見ないよね――」


 夏実はどういうつもりで言ったのだろうか。

 なにも考えずに喋っていそうな顔をしているけれど、多分わざと。

 俺と掛田さん、特に掛田さんにその手の話題は少しタイムリー過ぎる。

 掛田さんも赤くなっている。


 俺は見たままでいるのもアレで、目を逸らそうと例のカップルを眺めてコーヒーを一口飲む。

 するとカップルの女子の方が、ミルフィーユをフォークで一口サイズだけ取って、彼氏の方へと差し出した。

 軽く口を開け、食べて――という合図を出す。

 そして彼氏はそれをパクッと食べた。

 いわゆる、あーん、だ。


「おぉ――」


 夏実が思わず声を漏らした。

 声はかなり小さかったのだが、俺と掛田さんには充分に聞こえた。


「おぉ、って……」


 俺のコーヒーが、少し甘く感じられる。


「……」


 何も言わない掛田さんが気になり、そちらへと視線を移せば、自分のフォークと俺の口元を交互に見ていた。

 なんとも言えない感情に襲われる。

 嬉しいのか、嬉しくないのかも分からない。


「割ヶ谷っ――」


 俺に見られていることに気づいた掛田さんは、慌てた様子で取り繕った。


「――これは違うっつーか……」

「「…………」」

「違うから……」


 掛田さんは手で自分の顔を隠した。

 そんな、完璧に取り繕えていない掛田さんが可愛かった。


 さすがに夏実もこのことには突っ込めなかったようで、俺たちは頑張って普通に食事を再開する。


 食後少し駄弁った後、俺たちはそれぞれの最寄駅で解散となった。

 掛田さんがいなくなってからの帰り道、俺は夏実と別れるまでテスト勉強の感謝などを伝えたのだが、夏実は終始ニヤニヤしていた。

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