第12話 進展@通学路
下校時刻が差し迫って、俺たちは勉強会を終了し、校門までやってきた。
二人で帰る雰囲気になっているが、掛田さんの家の方向はどちらだろうか。
「掛田さんって、どこの中学校出身だっけ?」
「豊中の北中学校。割ヶ谷は夏実と同じだから、西だよね?」
「あぁ、そうだ」
ということは、最寄駅までも同じだし、そこから三駅分も同じだ。
「じゃあ、途中まで一緒なんだ……、嬉しい――」
掛田さんは感情を包み隠さず、俺を見て微笑んだ。
つられて、俺まで笑ってしまいそうになる。
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ちょうど来た普通電車に乗って、横長の座席に二人横並びに座った。
手が触れそうで触れない距離にあり、なんだかこそばゆい気がする。
駅までの10分ほどは掛田さんが絶えず話してくれたから、暇や気まずいなんてことはなく過ごせた。
でも、この状況は苦ではないけど、少し緊張する。
肩にぶつかっても怒られたりはしないだろうが、隣に特別俺を見てくれる人がいたら、逆に気を遣ってしまう。
そんなことを掛田さんも感じているのか、俺と同じように静かだ。
一駅が経ったころ、掛田さんに肩を軽く叩かれてそちらを見た。
そしてやっと会話が再開した。
「なんつーか……。気になったんだけどさ、わたしたちって何?」
「なにって、どういう意味――?」
「友達って言っていいんかなーって」
何とも言えない部分だ。
今のところは夏実の共通の友達、みたいなことになっている。
それを友達と言っていいのか――。
そもそも、掛田さんの友達になるというのは、少々荷が重い。
「どちらにしろ、友達になろうとしたらなれると思う」
「ならさ。割ヶ谷、今からわたしと友達になってよ」
掛田さんの気持ちを知りながら、友達になるという選択を取るのは、少々深い意味が含まれそうだ――。
だが、今友達になってからのことを決めるわけでもない。
そう自分に言い聞かせた。
「なろう、掛田さん」
「ありがと。じゃあ、よろしくっ」
嬉しそうな声をされたら、なんだか俺まで嬉しくなる。
「そうだ、割ヶ谷――」
「ん?」
そう呼ばれたが、掛田さんが言いにくそうに斜め下へ視線を逸らしている。
少しして、やっとこちらを向いてくれた。
「最後に一回だけ、教室でやったゲームの続きしてもいい?」
「まぁ、一回だけなら」
何か聞きそびれたことでもあったのだろうか。
「もしも、今、わたしが割ヶ谷に告ったら、なんて返事する? さっきと全く、100パーセント変わらない?」
「回答する。……いいえ。ほんの少しは変わったかもしれない」
帰り道を一緒に過ごしたからなのか、友達になったからなのか。
理由は分からないけど、俺の何かは変わった気がする。
掛田さんが微笑んだ。
掛田さんは背後から夕焼けの強い日光に照らされている。
こんな人は世界で一人しかいない特別だ、そう思わせるような眩しさだった。
「じゃあね、また明日」
「ばいばい」
家の最寄駅に着いた掛田さんは、電車を降りて行った。
なんでこんなに積極的でいられるのか。
俺は思った。
俺に好きと分かられてしまった掛田さんは、もう無敵なのかもしれない――と。




