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好きバレした掛田さんが可愛すぎる話  作者: 冷泉七都
第一章

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第11話 二人だけの教室

「なんつーか……ごめん。わたし急にあんなこと言っちゃって、さ」


 夏実が完全に居なくったのを確認して、掛田さんは申し訳なさそうにそう言った。


「いや、別にいいよ。俺も悪いとこあるし」

「割ヶ谷は何も悪くないって」

「いやいや……」


 微妙な空気感で居心地が悪いけれど、居たくないわけではない。


 俺は机に置かれた数学の問題集を解こうとする。

 しかしすぐに行き詰まり、さっきまではすぐ夏実に聞けたのに、いなくなってしまったからどうしようもない。

 掛田さんも俺と同じぐらいの学力だから、質問してもな……。

 そう思い掛田さんの方を見てみると、掛田さんが俺を眺めていることに気づいた。

 なんだか幸せそうな顔をしている。

 なぜ、そんなに俺で嬉しがることができるのだろうか。

 不思議でしかない。


「せっかくだからさ、勉強じゃなくて……さ。他のことでも――」


 俺の手が止まっているのを確認してから、掛田さんは聞いてきた。


「……それもそうだな」

「じゃーさ、お互いのことをもっと知りたいし、質問し合わない?」


 掛田さんの提案はこうだった。

 一、質問者が質問をする。

 二、回答者は回答するか、しないかを選ぶ。

 三、回答する場合は正直に答える。回答しない場合は質問者の命令を一つ実行する。

 四、質問者と回答者が入れ替わる。

 

 なるほど……。


「いいんじゃないか?」


 何かで見たことがある気がするが、面白くて良い考えだと思い賛成した。


「わたしから質問していい?」

「あぁ」


 掛田さんは一拍置いた。

 さっきの感情の爆発する前と同じ雰囲気を感じて、俺は少し怖くなる。


「もしも、今、わたしが割ヶ谷に告ったら、なんて返事してくれる?」

「…………」


 さっそく際どい質問が来た。

 答えるなら正直に答える――それがこのゲームの肝。

 相手が嘘吐きでない限り、知りたいことを知れる。


「回答するよ」

「うん――」


 掛田さんが固唾を飲んだ気がした。


「あの日と変わらない」


 あの日とは、初めて掛田さんの秘密を知ったときのことだ。

 言ってしまえば、ほぼ何も俺たちの関係は変わっていない。

 だから気持ちが変わったなんてことは、そうあり得ない。

 つまり……。


「掛田さん、身長は?」

「161センチ」


 掛田さんは、自分に対する質問には興味ない――という感じで、パパッと答えてしまった。


「好きな女子のタイプは?」

「こたぇ――」


 答えると言うとしたのに、掛田さんの声に遮られた。


「――好きになった人が好きとかは無しだから」

「……じゃあ、回答できない」

「つまんないし」


 掛田さんは「まぁいいや」と言って、立ち上がった。

 そして俺の隣にイスを持ってきて座った。

 まるで、ファミレスの四人がけテーブルにいるのに、二人横並びで座っているカップルのようだ。


「近づいたままでいて――。これが命令」

「あぁ」


 掛田さんは視線をまっすぐ前に向けたまま。

 俺も恥ずかしくならないように、前を向き続ける。


 しかし、掛田さんに本当のことを聞けるのは、ここしかないのかもしれない。

 意を決して、俺は質問する内容を決めた。


「掛田さんは、俺の何が良いの?」

「…………」

「……」

「……回答しない」


 今日の掛田さんを見ていると、言ってくれそうだと思っていたから、その返答には少し驚いた。

 そして思わず掛田さんの方を向いてしまうが、依然掛田さんは前を向いている。


「割ヶ谷には、自分で思い出して欲しいしっ」

「何かしたっけ?」

「自分で考えろ……。ほら命令は? 何でも」


 して欲しいことなんて思いつかない。

 今はただ、掛田さんに惚れられた原因を考えるのに必至だ。

 何を言えばいいのだろうか……。

 あっ――。


「このゲームは、いったんやめよう。脳が追いつかない」

「ふーん、いいけど」


 やっとこちらを向いてきた掛田さんは、逃げた――みたいな顔をしていた。

 したり顔の掛田さんは珍しくもあって、少し見過ぎた。



   / / / / /



 俺がゲームを終わらせてしまったから、再び真面目に問題に向き合うことになった。

 難しい数学は諦め、知識がほとんどの社会系のものをすることにして、まあまあ捗っている。


 ………………。

 …………。

 ……。


 キーンコーンカーンコーン――。

 チャイムの音が鳴った。


「あと30分で下校しないとなのか」

「そうだね……」

「掛田さん、もう帰る?」

「…………」


 なぜか掛田さんが黙ってしまったから、そのままそっとして帰る準備を始める。

 さっきまで元気だった掛田さんはどうしたのだろうか。

 15秒もすれば全て入れ終え、机の上に残したものがないか確認して立ち上がる。


「掛田さんは帰らないの?」

「…………」


 まだ返事がなく、俺はカバンを持って教室後ろの扉へと向かおうとする。

 が、掛田さんの座る席の背後を通ったとき、カッターシャツが摘まれて、進めなくなった。

 無言の数秒間が流れた。


「掛田さん?」

「あと30分もあるんだし、もうちょっと一緒にいない? 割ヶ谷は座ってるだけでいいから、さ」


 何とも言えない表情をする掛田さんを見ると、このまま帰るなんて出来なくなった。


「片付ける前に言ってくれよ……」

「……ごめん」


 なんでこんなに弱気なんだ――。

 もっといつも通りの掛田さんで過ごしてくれてもいいのに。


 俺は何も言わずに、もう一度、掛田さんの隣の席に座った。

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