表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

第一話:入学とモテ地獄の始まり

 春。

 ラナリア王国の首都、グランステラ。

 ここにある王立剣術学園は、国内の剣士志望者の憧れであり、私――アカネ・マサムネが目指してきた場所だった。


「ふん……やっと来たか。剣と誇りの学び舎ってやつに」


 私は大きく息を吸い、門の前で胸を張る。

 特待生としての入学。剣の腕一本で勝ち取った名誉だ。誰のコネでもなければ、貴族の血も引いてない。ただ、鍛錬と実戦の積み重ね。流した汗と血の分だけ、私はここに立っている。


 それが、誇りだ。


「よし、今日からが本番だ……最強の剣士になる。恋愛とか、色恋とか、そんなくだらねぇもんに構ってる暇はねぇ!」


 そう、私はこの学園に恋愛なんかしに来たわけじゃない。

 にもかかわらず――


「アカネ様〜! おはようございますっ! ああ……お美しい!」


「良ければ今日、放課後にお茶でもっ!」


「僕と手合わせしませんか!? いえ、むしろ手を繋ぎましょう!!」


「アカネちゃ〜ん! 朝ご飯食べたぁ!? 手作り弁当あるよ〜〜〜!」


「……………………」


 なにがどうなってんだ。


 初登校初日でこれってどういう状況だ!?

 私はただ、朝の稽古を終えて登校しただけだぞ!? しかも道中ずっと走ってきたから髪も乱れてるし、汗で襟元ベッタリなんだぞ!?


 これのどこに惚れる要素があった!?


 ……いや、落ち着け私。冷静になれ。

 もしかしたら、まだ“本格的なバカ”が発生する前の軽いジャブなのかもしれん。


「先に言っとくけどな」


 私は立ち止まり、騒がしい連中に向き直る。


「私は恋愛に興味ねぇんだよ!! 剣が恋人だ! 誰も入ってこれねぇからなッ!!」


 バシィィィン、と地を蹴る勢いで叫んだ。

 我ながら迫力には自信がある。ちょっとした魔物なら威嚇で引くはずだ。


 なのに。


「キャーッ! “剣が恋人”だってー!? 名言すぎるー!!」


「やべぇ……惚れた……もっと拒絶してほしい……!」


「ツンの奥にある情熱がたまんねぇ!」


「わたしも女だけど落ちそう……」


「……………………」


 やべぇのはお前らの頭だよ。


 これはまずい。

 どうやら私は――この学園で“ヒロイン”というやつに分類されてしまったらしい。


 まったく不本意にもほどがある!!


 私はヒロインなんかじゃない。

 恋にうつつを抜かして弱くなる女じゃない。

 私はアカネ・マサムネ。剣士だ。最強を目指す戦士だ。


 だから、お願いだから。


 ――モテるな私。


 剣術学園生活。

 それは、想像の十倍めんどくさい幕開けだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ