ー1話浜松快活クラブ上島店
下村勤は岐阜から愛知県浜松にツーリングに来ていた。浜松快活クラブ上島店に泊まって、明日二股町の「本田宗一郎ものづくり伝承館」に行くつもりだった。
クレヨンしんちゃんの36巻を読みながら、キリマンジャロブレンドを飲んでいると、パトカーのサイレンと拡声器の「運転手さん止まりなさい」の声が響いてきた。そのままコミックとコーヒーを持って、外に見物に出た。スリッパのまま。
快活クラブの駐車場に立っていると、バイクが入って来た。自分と同じFTRだ。
ライダーは下村の前に横付けし、スタンドも立てずに飛び降り、下村のバイクに駆け寄る。FTRは倒れず自立している。茫然と見ていると、ライダーは下村のバイクに跨がり、キー無しでエンジンを掛け、前輪を上げ後輪だけでターンし出て行った。
「え~なになになになに?」
下村は目の前のバイクを見る。キーシリンダーが無い。他は変わらない。
下村はスリッパで跨がってみた。
ヒュン
ヒュン
ヒュン
と脚が装甲に包まれる。下半身が固定され、後ろからドームが出て、コックピットみたいになり
ブン
と全天周モニターが点灯した。
脳無線Run起動の文字が出る。
「ガンダムかよ!さっきはこんなんじゃなかっただろ!」
関係なく、スリッパでクレヨンしんちゃん36巻とキリマンジャロブレンドを持った下村は、快活クラブ上島店を飛び出した。
「どこ行くんだよ!」
全天周モニターが答えた。
「ラボに帰還します」
「ラボってどこだよ!」
「本田宗一郎ものづくり伝承館地下」
「二股町かよ!快活に戻れよ!」
「変更は不能です」
下村は真夜中の152号を時速300キロで北上し始めた。赤信号や4輪はジャンプしながら。