ベランダで愛を叫んでいたら突然異世界転移してしまい、その愛を異世界の王女様に聞かれて勘違いされた挙げ句、いきなり初夜を迎えることになった男子高校生の話
なろうラジオ大賞6参加作品です。現実恋愛。
「好きだ!」
今宵も自分の部屋で幼馴染みの美織への想いを叫ぶ。クッションに。
「くそう!」
その後、俺は唐突に部屋の窓を開けるとベランダに飛び出した。
「美織ー! 大好きだー!」
溢れる想いを叫ぶ。
近所迷惑とか知るか。
「はぁはぁ……ん? うわっ!」
その時、目の前が強く光った。
眩しくて思わず目をつぶる。
「それはまことか?」
「へ?」
ゆっくり目を開けると、そこには金髪縦ロールの超絶美少女が顔を赤らめて立っていた。
「突然現れて、そんな熱い想いを告げられたのは初めてじゃ」
「……誰?」
「ふふ。何を今さら。
私をマルク王国の第一王女ミオリス・ドゥと知っての告白じゃろ?」
「美織?」
いや、顔はかなり似てるけど髪の毛が違う。てかここどこ?
「ミオリか。初めて呼ばれるが、悪くないの」
「……」
これは、まさか異世界転移?
ホントにあったのか。
「いや、だとしたら帰らないと。美織にこの想いを伝えるまで俺は……」
「安心せい」
「わっ!」
抱きしめられて顔面にふかふかのクッションが!
「もう伝わっておる」
「いや、違っ!」
確かに顔は美織だけど!
「よし。こっちじゃ」
「わっ!」
王女様は俺の手を強引に引いて部屋の中へ。
「え、ちょっ!」
そのままベッドへ!?
「これは運命じゃ。
私の伴侶はお主に決めた。
世継ぎがおれば父上も文句は言えぬ」
「いやいや、早すぎるて!」
いや、早いとかじゃなくて!
俺は美織がっ!
「近う寄れ」
「服を脱っ!?」
美織の顔でそんなっ!
「女に恥をかかせるでない」
「わー!!」
そんな格好で近寄られたらっ!
「くっ!」
いや!
「俺は!」
「ぬ?」
「俺は美織が好きなんだ! 美織じゃなきゃ!」
「ふふ。このミオリス、そこまで想われて嬉しい限りじゃ」
「違っ! そうじゃな……うわーー!」
「ちょっと!」
「はっ!?」
「大丈夫?」
「……え?」
気が付くと、見慣れた美織の顔が心配そうに俺を覗き込んでいた。
「ベランダから落ちたのよ。玄関の屋根がなければ危なかったんだから」
「……ゆ、夢?」
どうやら異世界転移ではなく、俺が気絶している間に見た夢だったようだ。
「……夢じゃよ」
「……へ?」
顔を上げると美織が赤い顔をしていた。
「も、もしかして、寝言聞いてた?」
「……全部」
終わった。
美織に似た金髪美女に迫られる夢なんて。
「その前のも、聞いてた」
「え?」
「ベランダで、愛を叫んでたやつ……」
「……え?」
「……バカ」
どうやら俺の青い春はこれから始まるみたいだ。
ありがとうミオリス様。