告白
「ってことで、俺、実はクソ雑魚ナメクジなんだよ~」
酒場にて。
俺は偽装していない、本来のステータス画面を開いていた。
パーティーメンバーの武闘家と賢者の前で。
(ふっふっふ……)
ヲタには悪いけど、もっと手っ取り早くクビになる方法があった。
ステータスを見せる、というもの。
こんな画期的な方法に気づくとか、俺、もしかして天才?
「うっそだろ、おい……」
武闘家、ゴウキは言った。
いいぞ、めっちゃ驚いてる。
白い道着の腰に巻かれた黒帯もビックリしてるよ。
「ほ、本当なの……?」
賢者、アカネも驚いてる。
彼女の青を基調とした賢者のローブ……。これも今日で見納めかな。
「ま、そういうことだから、俺クビってことで――」
俺が立ち去ろうとした時だった。
「おまえ! そんなステータスでこの前シンドラゴンとやりあったのか! スゲーぜよ!」
えっ。
「ホントホント! まだ伸び盛りの時なのにシンドラゴンとやりあえてたなんて凄いわ!」
いや、ちょっ、えっ?
「マジかよ~。俺なんてLEVEL131でギリだったぜよ!」
いやギリじゃなかったよね。涼しい顔で討伐してましたよね確か。
「ワタシもよ! LEVEL121で付いていくのが必死だったわ!」
アナタも氷河期並みに涼しい顔して呪文ぶちまけてませんでした?
エターナルクロス何チャラでシンドラゴンのHPゴリゴリに削ってませんでした?
「くっそお! 流石は紅色の勇者ぜよ! アラタ、見直したぜよ!」
「本当よ! どんどんワタシたちを置いていくのね!」
違う違う違う違う。
ステータスそのままな紅色のクソ雑魚ナメクジだから。
置いてかれてんの俺だから。
「そうと決まれば明日、深淵の骸骨でも一狩り行こうぜよ!」
深淵の骸骨ってなに? あからさまに強そうなんだけど。そんなの狩ろうとしないでくんない。あ、でも良いか、強けりゃ強いほど俺が無能なのバレる良い機会が出来るわ。
「良いわねそれ! 続いて獄炎の覇王も狩りましょう!」
しれっと獄炎の覇王とか裏ボス的なの挟むの何なの?
ヤベーよ戦犯行為してる暇なくなるかも。
なんかちょっと緊張してきたよ。
「なるほど、良い案ぜよ! 食後のデザートぜよ」
どこの世界に獄炎の覇王を食後のデザートにするやつ居るんですか。
「よーし! テンション上がってきたぜよ! 今日は(炭酸飲料水を)飲むぜよ!」
「ええ! 炭酸で口の中シュワシュワさせてお祝いよ!」
こちとらシュワシュワする前に緊張で口の中乾燥しそうなんですが?
ちょっと踏み間違ったら明日シュワシュワ昇天しそうなんですが。
え、どうしよう、大丈夫かな。死なない程度に戦犯行為する隙なんてあるかな。
「マスター! 明日俺ら、深淵の骸骨と獄炎の覇王狩ってくるぜよ! みんなに知らせるぜよ!」
「オーケー!」マスターは言った。「おーいみんな! 紅色の勇者一行が深淵の骸骨と獄炎の覇王狩るってよ!」
うおおおおおおおおおおおおおおお! と酒場が盛り上がる。
「かっけー!」
「流石は紅色の勇者!」
「スゲー! どんな素材が手に入るんだ?」
「バッカ! そりゃオメー、王者シリーズを超えた装備の素材に決まってんだろ!」
「じゃあついにそれすら超えた装備が完成するのか!」
いやマトモにやったら紅色のご遺体が完成するだけだから。
皆さんあんま期待しないでください。
がっかりするから。
「皆さん! 今夜は全て私のおごりだああああ!」マスターは声を荒げた。「王者シリーズを超えた装備を括目できることに比べりゃ安いもんだあああああ!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおお! と酒場は盛り上がる。
(え、ええええええええええええええええええええええええ?)
完全に引き返せないとこまで来たあああああああああああああああ。
これは確実に無能っぷりがバレて追放されるパターンだ。
願ってもないチャンス来たよ。
無事に帰れるかはともかく。