なんか知らんけどクビになる人たち。
もうすぐバレる……。
「くそ……どうすれば……」
王立図書館にて、俺は頭を抱えていた。
今日の激闘を経て確信した。
俺の実力が……間もなくバレる……。
「ダメだ……どーすりゃ良いんだよ……」
俺は世界で名は知らないほど有名なギルドのリーダーだった。
でも、それは俺が強いからではなかった。
他の二人。賢者と武闘家が強いからだった。
「もうごまかしきれないな……」
俺は自分のステータスを開いた。
【名前】清水アラタ。
【年齢】 18歳
【LEVEL】 121
【HP】 932 【MP】 921
【力】 251 【素早さ】 247 【魔力】 239
この世界ではLEVELは150でカンスト。
HPとMPは999.
他のステータスは255でカンスト。
ステータスを見る限り、伝説のギルドメンバーのリーダーに相応しい。
しかしこれにはからくりがあった。
(バレるよなあ……)
俺はステータスを指でなぞって、『本来のもの』に戻した。
【名前】清水アラタ。
【年齢】18歳
【LEVEL】 21
【HP】 32 【MP】 21
【力】 51 【素早さ】 47 【魔力】 39
説明しよう。
このステータス、序盤の魔物こそ倒せるが、ちょっと先に居る紅スライムには歯が立たないくらいなのだ。
要するにクソ雑魚ナメクジなのである。
それを俺は固有スキルの『偽装』でステータスをいじってごまかしている。
「ぐぐぐ……。一体……どうすれば……」
今日は本当に危なかった。
シンドラゴンとか良く分かんねえ奴とやりあった。
アイツマジで手加減とかしねえんだもん(※普通です)。
爪がかすっただけで俺のHPほとんど持ってくんだもん(※あなたが弱いだけです)。
俺の渾身の一撃をかわすんだもん(※あなたが遅いだけです)。
つーか何なの?
なんで武闘家と賢者はあんな涼しい顔で倒すの?
無限爆裂拳ってなに?
エターナルクロスティンクルってなに?
いつの間にそんな技とか魔法覚えてんの?
俺たちLEVEL1の頃からずっと一緒に居たよね?
パーティー組んで三か月くらい、ずっと同じ経験値得てたよね?
なんであの二人は二次関数のグラフみたいに成長してんの。
おれずっと平坦なんですが。
『今日もお前のお陰で勝ったぜ清水!』
『ええ! あなたのお陰よ清水さん!』
いっつもそう言うけど99%キミらだからね。
いやもう最近だと100%キミらが倒してるから。
なんで気づかねーのよあの二人。
(ぐぐぐ……)
そうこうしてるうちに強い武器防具も集まり、いつの間にか俺は王者の鎧をまとい、王者の盾を左手に装備し、王者の剣を腰に差していた。
王者シリーズは全て赤を基調としており、俺は『紅色の勇者』という二つ名を得ていた。
『おいあれ』
『ああ。噂の!』
『紅色の勇者だぜ!』
『かっけー!』
街を歩けばひと騒動起こるほど有名になってしまった。
実力にそぐわない勇者になっていた……。
もう引き返せない所まできていた……。
ここでもしバレたら寄生虫だの紅いクソ雑魚ナメクジだの言われてしまううううううううう。
こうなるんだったら、賢者と武闘家に追いつけなくなった時に『偽装』なんかせず、静かにパーティーを去れば良かった。
(……ん?)
ここで、端っこの方の本が目に入った。
タイトルに吸い寄せられたのだ。
「……なんだ……これ……」
俺が手に取った本のタイトルは、
『パーティーを追放されたオレ、実は最強でした!』
なんじゃこりゃと思った。中を確認してみると、どうやら主人公が、メンバーに足を引っ張ってると思われて追放される話だった。今の俺に重なる。
『オマエ、役立たずだからクビな』
と、主人公は仲間に言い渡されて、パーティーを去っていくところまで読んだ。
(くそ……俺もいずれ、こうなるのかな……)
それ以上読み進めることをせず、俺は本を戻した。その拍子に、同じような本のタイトルを見つけた。
『追放されたけど、本当は俺が居たからパーティーは最強でした!』
……なんか既視感あるんだけど……。まあ読んでみるか……。
『オマエ、役立たずだからクビな』
さっきのやつと同じだ。
主人公がパーティーをクビになって去っていくパターンか。
なんだか自分の未来を見ているようで、これ以上読みたくなかった。
んだけど、
『追放勇者、実は強かった!』
……えっ、なんかまた追放されるっぽいやつきたんだけど。
なに? もしかして俺が追放される虫の知らせ?
……一応読んでみるか……。
『おまえもう用済み。クビな!』
またこれえええええええええええええ?
どんだけクビになんの?
えっ、マジで俺へのクビ宣告だったりする?
「どうなってんだ……どうなってんだ……」
俺はその辺の本を次々と読んでいく。
『トロトロしてるからクビな!』
またクビになってんだけど。
もう良いんじゃないかな。
『時代遅れだからクビな!』
いやだからクビは良いから。
胴体が亜空間彷徨ってるから。
もっと他のパターン――、
『足手まといなんだよ! クビな!』
もう良いっつってんだろがああああああああああああああ。
なんでこう頑なにクビになんの?
主人公クビになりすぎて、さらし首がそのへん転がってんだけど。
『なんでや! なんでワイがクビなんや! なんでやねん!』
こっちが『なんでやねん』なんですが。
『辞めます! ボクがこのパーティーを抜けます!』
コイツに至っては自分からクビになってんじゃねーか。
え、マジでどうなってんのここの本棚?
「ほう、『追放モノ』に目を付けるとは流石ですね」
と、何者かが話しかけてきた。
振り向くと、そこには黄色いバンダナを額に巻いたメガネの男が立っていた。
青と黒のチェック柄の上着を羽織っていて、小太りの彼は、ニヤリと微笑んでいる。




