答えの出ない問いと中国へ渡るレオン達
日本で交換留学生達を降ろして別れを告げ、こちら側の交換留学生達が帰って来た。
たった四ヶ月間の交換留学だったが、季節は冬になっていた。
レオンは屋敷には寄らずに、次の目的地へと出発する。
「邪王様、いいのですか?」
中国に交換留学に行く予定の魔族の子が話しかけてきた。
「あーうん。五十年に一度顔を出してるし、こないだも行ったし。僕には他にも家族がいるから。今の僕は邪王レオン。優先すべきは、【創魔界】の家族だ」
胸を張って宣言する。
そうだ、鬼山怜音としての生は一度終わったのだ。
いつ何時も縛られていると、今の家族に迷惑がかかる。
いい加減忘れなくてはならないと思っているものの、克明に思い出す。
過去生を。
前世に未練たらたらで、全く男らしくない。
レオンはもう約三百歳なのに、心だけは未熟なままだ。
見た目も少年のようだが、心が成熟しないことには、いつまで経っても成年とは呼べない。
未だにレオンはこどもなのだ。
誰かに支えになってもらって、甘えたい年頃である。
なんせ、人間年齢に換算したら、七歳とちょっとだから。
生まれたときから既に六歳まで成長しているのだが、その後は地球のときの流れに任せれば、小学生だ。
まだまだおふくろの味が恋しい年頃。
年齢にそぐわぬ精神は、【創魔界】の早すぎるときの流れのせいである。
創造神ヨウゲツは、何故この世界のときの流れを早くしたのだろうか。
他の神、時空神がいるとしても、創造神が最高神なので何か口を出すものだと思っていたが。
レオンを早く独りぼっちにするためか?
この世界の王はたった一人でいい、そういう考えなのだろうか。
いや、それならば初めから三王にしないはずだ。
レオンは答えの出ない問いに頭を悩ませた。
中国に渡り、中国の最高権力者と話し合い、交換留学生を中国に置いて行く。
その際、交換留学としてではなく、移住したいと中国の交換留学生が願望を口にした。
新たな国家をつくるつもりだそうだ。
少女は英語で喋る。
「祖国は人口が十億人以上いるのです。数億人くらい、移住しても良いくらいです。我が国は工業が盛んですが、海や空気を汚してしまっている状態です。そちらの世界では、そちらのルールに従います。どうか、受け入れを」
「それはできない。難しい問題だよ。移民受け入れは反対者が多数出てくる。それに、そちらの種族は人間。こちらには一人も存在しない。僕が言って聞かせれば、僕の血族達は文句も言わずに従うけど、人間が闇深い存在であることは間違いないから。差別がなくならないんじゃないかな。悪さもするんじゃないかな。もし、悪行を為すと、この世界よりも恐ろしい、本当の地獄の裁判が待っているよ。人間には耐えられないと思う」
レオンは魔王の【紅き閻魔】としての強さを知っている。
地獄の炎は温度調整が可能。
五百度から五億度まで。
あり得ないことを起こせるのが【創魔界】であり、地獄界だ。
そこを統べる王が魔王。
幾多の悪を裁き続けること、前世の怜音がやっていたことと殆ど同じことをしている。
魔王は精神力が強く、覚悟ががん決まりなので、【悪の正義王】とも呼ばれている。
悪の正義、一見すると矛盾した言葉だが、悪を裁く者もまた悪を為す、だがそれは正義であり、やらなければならないことであると意味する。
巨悪を討つには、それ以上の悪にならなくてはならない。
死という、とこしえの恐怖を与える存在に。




