魔王と鬼女に幸あれ
縁者の挨拶に関しては、魔王直々に邪王から頼むとお願いされたので、新婦側の挨拶からになった。
通常は新郎である魔王の縁者による挨拶が先だ。
鬼女を立ててくれたのだろう。
魔王も気の回る男だ。
『魔王ブレイトは人の上に立つ器だ。彼の行動原理は人のためだと思っている。邪王と似ているところがあるから。我ら神族とも仲良くすると誓ってくれた。彼ら魔族は快くそれを承諾した。神族の長である俺も誓おう。この婚儀もまた歴史を変える大事であると。新たな種族と仲良くなれる架け橋になるだろうと。心より祝福する』
神王はにこりと微笑んで、マイクスタンドから離れた。
『ありがとうございます!! 邪王様、神王様!!』
司会者の巫女がマイクを持ちながら拍手した。
『他にメッセージをくださる方は、いらっしゃいませんか!?』
「では、私から」
交換留学生の宇宙人女子が手を挙げた。
年齢は百歳を超えているが、例の如くクロノベッドで若返っているので、少女のままだ。
『私も先日、好きな人と結ばれたばかりです。そのとき、魔王様はもちろん、【創世の三王】様が祝ってくれました。こんな素敵な世界に来られて、私は幸せ者です。お二人のご結婚に、微力ながらご支援させていただきたく存じます。おめでとうございます! 新婚旅行も是非楽しんでください!』
宇宙人女子は朗らかに適切な言葉を選んで祝福した。
魔王と鬼女が皆に頭を下げている。
数々の面々から祝福の言葉やご祝儀を贈られ、至極満悦の体だ。
あの無表情でわかりにくい魔王が、結婚式に列席する人々に笑顔で手を振っている。
愛想笑いではない。
本当に心の底から笑えるようになったんだなとレオンは感激した。
恋愛は人を変える。
良い方向に、とは限らなくとも。
結婚式が終わり、交換留学生達を次元移動できる空船で帰国させることにしたレオン。
名残惜しそうにしながら、魔王と鬼女を見つめている交換留学生達。
「新婚旅行に行くところまで、ご一緒したかったです」
「この百年間、色々なことがありましたね。ぼくはここに移住したいくらい、この世界が好きでした」
「今回は魔王には留守番……もとい新婚旅行に行ってもらうから、お見送りは僕ら二人とこちらの交換留学生でするよ」
「うー。残念ですっ!」
「魔王のことがそんなに気に入っているのか?」
「そういうわけではないですが……」
宇宙人の交換留学生の女子が指をつんつんとつつく。
悩んでいるときに、女性がよくやる仕草だ。
それも精神的に幼い人がやることで有名。
怜音だった頃に、鬼族で比較的若い鬼っ子が可愛らしく指をつんつんしていたのを思い出す。
レオンになっても、記憶は色あせない。
それどころか、鮮明に過去を思い返す日々がある。
走馬灯のように。
「それじゃ、出発!」
レオンが号令を出すと、空船が動いた。
行き先はまず日本。
次は中国だ。
鬼山怜音として復活したことを日本で公にした際に、中国のトップに交換留学の件を交渉していた。
中国人はIQの高い者が多いので、会話になるかどうか不明だ。
IQが10違えば会話が成立しないという話がある。
中国の国家主席が交換留学生をどの程度のレベルで揃えてくれるかはわからないが。
中国に行くのは、何気に初めてだったりする。




