【悪魔契約】の話
「邪王への礼に、以前話した【悪魔契約】をやってもらおうと思う。音楽祭のあとはできなかったからな」
「いやそれは、身体乗っ取られるんじゃなかったっけ。どこが礼?」
「大丈夫だ。【悪魔契約】は【神授契約】と違って、己でコントロールできる。生け贄は必要だがな。契約する悪魔が食べる」
「生け贄なんて、僕が出すわけないじゃない」
ジトッとした目で魔王を睨んだ。
魔王は残念そうに、表情を曇らせる。
「全く……魔王は僕のこと、わかってないね」
「ほんの冗談だ。悪魔達は魔神ではないから、供物も何も要らない。簡単に契約してくれるぞ。邪王ほどの器ならば」
魔王はどうしてもレオンに【悪魔契約】をやらせたい模様。
魔王は引き下がらない。
こうなると、魔王は頑なに食い下がるのだ。
「断る。よくわからないものには手を出さない。それが僕の信条」
「ちっ。大暴れする邪王を間近で見られる機会だと思ったのに……!」
魔王は底意地の悪そうな顔で舌打ちする。
やはり悪巧みしていた。
「なんで僕が大暴れするかな?」
レオンは魔王の顔を覗き込んで、ジト目で見つめる。
魔王はあさっての方向を向いた。
口笛を鳴らして。下手だ。
「【神授契約】でも神が大暴れしたんだから、【悪魔契約】では、もっと凄まじい災害でも起きるんじゃないか?」
そんなに危険なのかとレオンは神王の言葉を信じた。
「何!? 神王、貴様どちらの味方だ!! 邪王が不敵な笑みを浮かべて、大暴れするところが見たくないのか!」
「いや、見たいが……。邪王が暴れると、誰も止められんからな……。悪魔の力を持った邪王なんて、恐ろしい……!」
「そうか……仕方ない。じゃあ、二十時に来い。歓迎の準備をして待っている。オレの城だ」
「ふうん……了解」
魔王学園ではないそうだ。
ひとまず、【悪魔契約】は避けられるので一安心。
どんな風に身体が変化するかはわかりかねるが、醜態を晒す可能性がある以上、断固拒否だ。
意識を手放すわけではないとしても、知らない自分になるのは怖い。
魂が二つある状態になるということだろうか。
どちらにせよ、神王の助け船のおかげで助かった。
時刻は夜八時。
邪竜イコロスの背に乗って、日帝の魔王城へ向かう。
風が心地良かった。
星空も綺麗で、空中散歩を楽しめる時間帯だ。
魔王城に間もなく到着して、イコロスは一旦地獄界の住み処に帰ることにした。
「ご用がありましたら、テレパシーを送ってください。すぐに馳せ参じます、主様」
「うん。ありがとう」
背や頭を撫でて、レオンは感謝の意を示した。
イコロスは頭を下げて、バッサバッサと翼を広げ、飛んでゆく。
重力を操作できるレオンならば、イコロスに乗って来なくても、移動は容易いが、竜とお出かけするのが楽しいのでつい、ドラグライドをしてしまう。
もっと国が増えてきたら、また三王で世界旅行をしてみてもいいだろう。
交換留学生達も誘って。
みんなでこの世界を大いに盛り上げよう。
神族も魔族も仲良くなってきたので、魔王学園と神王学園で留学するかもしれない。
いや、神族は神の戒律を破ると頭痛がするのだった。
魔族も神に従い続けると頭痛がするので、仲が良くなっても相性は最悪なのだ。
文化までは取り入れられないか。




