もしも神王ザッハとメドが逆の立場だったら?
神王は宇宙人を猛烈に敵視している。
今の交換留学生も信じ切れてはいない様子。
神王は悲劇を二度と生み出すまいと神族や天使達を召集して、神の加護を得られる儀式をした。
聖なる森で洗い清めた葉を複数枚並べて、天に祈りを捧げる。
レオン達は神王の神聖な儀式を傍で見ていた。
神に祈っても祈らなくても、レオン達の被害はそこまでではない。
祭りは中止になってしまったが、レオンの血族達は皆無傷だった。
神を一番に信じ、崇め奉っている神王だけが、悲しい結末を見てきた。
神は不公平だ、とレオンは思った。
そして簡単には助けてはくれない。
神は【神授契約】外では、いつも下々の者には手を貸さない。
見守っているだけだ。
結局、自分のことは自分で守るしかない。
本当に信じられるのは、自分だけかもしれない。
「お守り、作りたいね。手伝おうか」
「今の人口分作ってくれるか? 神族や天使達の」
「オレも手伝う」
「ありがとう、二人共」
神聖な力が宿っているお守りと強力な結界を張るレオンのお守り、強大な魔力のこもった魔王のお守りの三つを作った。
この三つをアルカディアの国民全員に配布したのだ。
国民を悪い宇宙人の魔の手から逃れられるように、祈りを込めて。
いつしか神族と魔族の隔たりはなくなっていた。
共通の敵が現れたことにより、共同戦線を張ろうという考え方になっていた。
この世界の種族は仲良くなった。
魔王学園があるなら、神王学園や邪王学園もつくろうという話題も上がる。
レオンは小さな学校以外の学校をつくるつもりがない。
これ以上仕事が増えたら、本格的に休みがない生活を送ることになるから。
「なぁ邪王、クロノベッドはあとどのくらい寿命を延ばす?」
「数千年は生きられるように設計してあるよ。何か欠陥があった?」
「いや、凄いなと思って。礼も何もしていないのが悪いと思っている」
「いいよ。お金払ったでしょ。後付けで」
「長生きすると、見えてくる景色が違う。どんどん移ろいゆく世界で、何年でも行く末を見守りたい」
神王や魔王達の種族は、とっくに墓に入るのが当たり前だった歳だ。
長生きするのは、レオンの種族だけだった。
それをクロノベッドで肉体の時を巻き戻し、延命している。
終末医療のような苦悶を伴う延命措置ではなく、健やかに無病息災で生きられる。
正に夢が詰まった奇跡のベッドだ。
ただ一つ欠陥があるとすれば、ベッドに寝る前に命を失っていたら、時間を巻き戻しても無意味だということ。
〈時空主〉の力で命も元通りになったら、神王とメドの立ち位置は逆だっただろう。
時空を操るだけで充分凄いが、蘇生は叶わない。
蘇生が叶うなら、失われた尊い命を現世に呼び戻すことができた。
現在の所業も神に近いが、失った命を呼び戻すことが可能ならば、神と同等以上の力を得られる。
神族の可能性はレオンも末恐ろしく感じている。
もし、その力を手にすることができれば――神王の地位が危ぶまれる。
そしてもし、敵の手に渡れば――死なない兵士を量産することができる。
仮初の魂を器に入れて、ネクロマンシーを平然とやってのけた連中だ。
倫理観など持ち合わせてはいないのだろう。
初めから狂っている敵の相手ほど、面倒なことはない。
話し合いで解決できるなら、その方が圧倒的に楽だからだ。
しかし、いつも最終手段の戦争になるのが世の常。
敵が話の通じない相手ならば。




