神力と魔力と邪力
小一時間ほど駄弁っていると、魔王が地獄界から瞬間移動で帰って来た。
普段は使わないのが通例だが、三王は忙しいのでたまに解禁することがある。
「「おかえり魔王」」
「ただいま」
「処罰はどうなるんですか……?」
宇宙人の交換留学生の少女が恐る恐る訊いた。
「無論死刑だが、火あぶりの刑だ。地獄の業火は途轍もなく熱く苦しいもの。生まれてきたことを後悔するほどに」
まるで感情がないかのように、淡々と喋る魔王。
地獄の裁判は、私情を挟んではいけないので、魔王は機械的に行っている。
そして誰を裁いたかも覚えないようにしているそうだ。
恨みを買う仕事なので、魔王は夜に魘されないよう、万全の注意を払う。
魔王はポーカーフェイスが得意だが、何も感じないわけじゃない。
喜怒哀楽の人間的な感情も持ち合わせている。
怜音のように、裁くのが嫌かもしれないし、真意はわからない。
長年つるんでいても、魔王のことはわからないことだらけだ。
自分の感情を吐露することが殆どないから。
「あの人は、救われたがっていたんでしょうか……」
「さあね。彼は自らの不幸を周りのせいにしてきたから、相応の報いがあると思ったよ。呪ったら、二つの穴に落ちるって言うでしょ?」
「一つ目の穴には邪王に論破されて落ちた。二つ目の穴にはオレが裁いて落とした。オレ達魔族は魔力を源に力を使うが、呪いの力ではない」
「魔力は夢のエネルギーだもんね。こうしたいとか、ああなりたいとか、それが魔力を高める。神力は信仰のエネルギーで戦闘向きではないけど、プラスの感情が左右する良い力だ。僕の邪力は怒りで増大する負のエネルギーだよ。僕が一番戦闘向きかな」
種族が違えば、使う力の源も変わる。
怒ったら攻撃が単調になって弱くなるものだが、邪王レオンの怒りは違う。
仲間を傷付けられて赦せないなど、そういった怒りが自身を強くする。
究極的には、邪力は復讐の力だ。
だからレオンが憤怒の炎に身を焼かれたら、世界が崩壊するかもしれない。
そうならないように、レオンは力を使わずに済む、お祭り国家をつくっているのだ。
だが、今回みたいに悲しい事件が起きてしまうかもしれない。
交換留学自体を取りやめた方がいいだろうか。
「ねえ魔王。今までの事件、交換留学してから起きたよね」
「ああ。オレの発案だったな」
「交換留学そのものをやめた方が、平和なんじゃないかな」
「……やめるのか?」
「だから、魔王の意見を聴きたい」
「俺もできればそうしてもらいたいが、どうする」
「オレはこれからも交換留学を続けたい。またこのような事件が起きようものなら、オレが守る。全員に武器を持たせろ。邪王、結界を張る装置を開発してくれ」
「わかった」
魔王は異世界に行くのが楽しみなのだろう。
防衛力を高めることにした。




