呪いたければ、地獄に墜ちる覚悟をしろ
レオンは次に総理に会ったとき、辞職させてやると憤った。
国籍不明の密入国者なんて、留学するのに相応しくない。
現に、祭りをめちゃくちゃにされた。
彼は真犯人だったが、実行したのは別人。
神族だった。
神族が神族を襲ったのだ。
これほど神王を悲しませる事件はないだろう。
祭りを取りやめて、観客に詫びを入れて帰らせた。
このままだと明日の夏祭りも中止だ。
恐怖で客が寄りつかない。
暫くの間自粛ムードになるだろう。
「こいつの処分はオレがするが、何か言いたいことがあれば受け付けるぞ」
「神は身勝手だけど、悪をなすのは神じゃなくて、人間なんだよ。宇宙人も悪いやつはとことん悪いけど。君は自分の不幸を他人のせいにしている。神のせいにしている。すべてカルマという業が呼んだ因果応報なんだ。君が不幸なのは、君のせいだよ。人の幸せを望まないからだ」
レオンはきっぱりと言い放つ。
怜音自身も不幸な身の上に育った。
だけど誰のせいにしたこともない。
これは自分の持つ業だからと背負ってきた。
人の幸せを願った。
そして小さな幸せを手に入れてきた。
怜音にもこの世を呪いたくなる暗い過去があった。
どうして自分は一般家庭に生まれず、結婚してこどもをつくってサラリーマンとして働く、大多数が思い描く幸せな人生を歩めなかったのかと。
どうして普通じゃなかったのかと。
どうして産まれる前から恨まれるような家に生まれてしまったのかと。
拷問一家の業は深かった。
警察がやらないことを一手に引き受けていたから。
怜音は慈善活動の裏で、無数の血を浴び、悪を始末してきた。
血の臭いは消えない。
心を蝕んでいった。
大多数が思い描く理想は、どんなに望んでも手の届かないところにあった。
本当の幸せと一般人が歩める普通の人生は、怜音には遠すぎた。
血を浴び続けた日本刀使いの怜音は、鬼族のみんな以外に信じられる人が一人もいなかった。
友達もいない、寂しい人生を送っていた。
だけど、鬼族のみんなは遊び相手になってくれたから、少しだけ気は紛れた。
「お前みたいな奴に何がわかるってんだよ。おれの家は貧乏だったんだ。なんで産まれたときから不幸だって決まってるんだよ。全部神の仕業だろ? 人の不幸を喜んで何が悪い。お前もおれと同じような貧乏人だったら、金持ちや幸せそうにしている奴を妬むね! そんな奴らから奪うのさ、幸せや金品を! 悪いのは、そんな人間を生み出した神だ! 世界だ! 環境だ!!」
座り込んだまま、間目白は叫び続けた。
呪いを吐いた。
悪いのは、おれじゃないと。
レオンは首を振った。
彼の意見を真っ向から否定する。
レオンは誰も恨まない。
現実を受け入れる。
「僕は前世もお金に困らないところで生まれた。だけど幸せだったわけじゃない。僕は拷問一家の鬼山一族の長として、悪鬼羅刹を斬って斬って斬りまくってきた。望んでやっていたわけじゃない。ただそこに生まれてしまったから、仕方なく心を殺しながら悪を斃してきた。悪に恨まれながら。そして十九のとき、僕は人間に裏切られて敵対する悪に殺された。僕は不幸だったけど、誰も恨んではいない。もし僕が貧乏な家の生まれだったとしても、誰も恨まなかっただろう。それが僕の業なんだって、受け入れていたと思う。君が不幸だったのは、プライドを捨てなかったからだろう。僕は慈善活動もしていた。君の声が届かなかったのは、君自身が人の優しさを無下にしていたからだ」




