動物のピアノと獣人のバイオリン
五曲目はピアノソロ演奏だ。
大きなハリネズミが演奏する。
地球産のハリネズミは小さいが、レオンが生み出したハリネズミは大きい。
五次元の世界は、三次元の常識を超える。
観客席からはカワイイ! と大好評だった。
曲はエルガーの威風堂々、六曲目がベートーヴェンの交響曲第九番だ。
両方ともピアノで弾くのは難しい曲。
ハリネズミのハリーは壮大な演奏をやってのけた。
観客がスタンディングオベーションをする。
レオンも感動した。
「心が踊る心地だったよ」
「そりゃ凄いな。心は踊るのか。ところで、心ってどこだ?」
「脳だったり、心臓だったり、オレは両方派だな」
「言葉のアヤだよ! 面白くもないツッコミどうも!」
「皮肉屋だな、邪王。せっかくの音楽祭というのに」
神王が嫌味な笑みを浮かべて肩を組んでくる。
レオンは神王を引っ剥がした。
むすっとぶすくれて、腕を組む。
「君は踊らないのか!! 心が!! あれだけの演奏をしたんだよ!」
「踊りはしないが、弾んでいるな。わくわくしている」
胸を押さえて、神王は答える。
不敵な笑みと共に。
「オレもだ。音楽とは、心を弾ませる良きものだな」
「そういえば、動物もお前の血で生み出したんだったな。お前は一体何者なんだ……」と神王が訊く。
「妖怪かな。鬼だし。生み出せないのは、二人の種族と人間と宇宙人くらいだと思う」
「そうか。不老不死の妖怪か」
「もう夏だぞ。怪談話祭りはどうだ?」
「それも考えたんだけど、お化けとか苦手な子が多くてね」
「考えたのか」
提案しておいて、面食らう魔王。
レオンは破顔一笑した。
「今度は日本の鬼族達を呼んでみてもいいかな……」
ステージでバイオリン演奏をする獣人十二人を眺めつつ、レオンは呟く。
祭りはみんなで楽しむものだ。
何人いてもいい。
前世では成し得なかったことも今世ならできるはず。
そしていつか、人間ともわかり合える日が来ればいい。
前世は幸せな人生とは程遠いものだったが、今世は幸せだ。
自分と同じ志を持った仲間に出会えたから。
ステージでは、バイオリンでモーツァルトのメドレーを弾いている。
うさぎ、ライオン、虎、猫、犬、蛇、猿、ねずみ、牛、豚、鳥、馬の獣が混ざった人だ。
全員女性。
皆見目麗しい姿で、真紅のドレスに身を包んでいる。
獣人といえども、そこまで獣っぽくはない。
人に近い種族だ。
華やかで艶やかな獣人達の演奏が終わると、昼休憩に入る。
レオン達も一休みすることにした。
レオンは王城に交換留学生も呼びつけて、昼食を摂る。
鬼女がデミグラスソースのオムライスを持って、やって来る。
交換留学生達が口々に感想を述べた。
「さっきの演奏! 凄かったですね! バイオリンって、重低音がカッコイイです! あんな風に弾けるようになりたいなあ……!」
手を組んで、うっとりとした表情の、交換留学生の人間の少女。
差別も何もしない、善良な子だ。
「僕は獣人の猫の人に一目惚れしました。美しい……僕の彼女になって欲しいです」
こちらは交換留学生の宇宙人の少年。
「メイシーは彼氏いるんだよね」
レオンは彼のハートを粉々に打ち砕いた。




