かわいい子には旅をさせよ
「貴様に向けての歌だな」と魔王。
「うん」
「流石邪王のこども達だな。熱いハートの持ち主だ」と神王。
「良かった。楽しそうで」
陽光に照らされながら燃え上がるステージ。
みんなこの日のために一所懸命練習してきた。
それを誰よりも知っているのは、レオンだ。
歌詞もアドリブも今日初めて聴いたが、本人達が一番いい顔をしているので、完成度など気にしない。
楽しめれば、勝ちだ。
一緒にこのときこの瞬間を共有できる。
それが至上の喜びだ。
『俺が生まれた頃 二つの国があった
俺は旅に出たかったけど 親父殿に反対された
そのとき俺はむしゃくしゃして 仲間に八つ当たりした
後になって悔いても 遅いぜ 俺は悪い奴だから
でもな本当は気づいてたつもり 親父殿のありがたみを
反対したのは 俺が未熟だからだって
俺はもっと強くなる 親父殿を傍で支えられるように
そしていつか 旅に出るのさ 歌を歌いながら
音楽で世界 変えてやるぜ 俺達の熱い思い 届け!!』
鬼石は笑顔で鬼相天外を歌い上げた。
歌詞はきっと前々から思っていたことだろう。
鬼石は旅に出たいとレオンに懇願したことがあった。
レオンは即却下した。
まだレオンが行ったことがない未踏の地があったので。
そこはもしかしたら、誰も足を踏み入れられない土地かもしれないし、先住民がいるかもしれない。
不老不死のレオンだから、冒険が危険に感じない。
血族の命は一つだけなのだ。
知っていて、信じて送り出すことはできなかった。
本日四曲目の演奏『鬼面素歌』に入った。
観客に手拍子を求める鬼石。
レオン達も手拍子をした。
スゥーッと息を吸い込んで鬼石が絶叫する。
『オアァーーッ! オアァーーッ! オアァーーッ! オアァーーッ!
走れ走れ 夢に向かえ! 下向いてる暇なんてないぜ!
俺は 俺達は 過去を振り返らない! そういう約束だろう
道は続いてく 俺が死を迎えるまで忘れちゃいけない
ゴングはまだ鳴っちゃいないコト 俺達の旅はまだ
始まらない だけどいつか始まる そのときまで待て』
ドラムやギター、ベースの演奏が激しくなる。
みんな髪を振り乱して、身体を揺らして曲にノッている。
自分達に言い聞かせるような歌だ。
本当は旅に出たいけれども、我慢してくれているのだ。
『待ち続ける 俺は戦士 戦いの旅に出たいのさ
君達も溢れる思い 隠しているだろう
どうか届いてくれよ 俺達の思いよ 永遠に
響け響け 氷を溶かせ 熱き祈りで
永久凍土の道よ 俺達の炎の息吹で
開けろ開けろ 道を開けろ 俺達の道は俺達で作る
笑え 泣け 感情を押し殺すな 俺達は知っている
仲間と共に共有するコト
ありがとうを忘れない』
ギターがソロで後奏をしている。
彼らの熱き魂の籠もった歌はレオンに届いた。
そうだ、いつまで経ってもこども扱いしてはいけない。
こどもは親の玩具じゃない。
かわいい子には旅をさせよと言うではないか。
危険な旅になるかもしれないが、終わったら旅をする許可を出そうとレオンは心に誓った。




