鬼っ娘と鬼明庵の邪王崇拝歌
鬼っ娘の二曲目は『鬼っ娘ラヴハート』。
観客席で観客がペンライトを振り回している。
因みに、今回のお祭りの入場料は、一万ドンだ。
真ん中の方は二割引。
後ろの方は半額にしている。
『鬼っ娘』
『シーソー』
『ラヴハート』
「それそれ!」
観客の合いの手が入る。
『私の心を』
『奪うのは』
『だれ?』
『だれ?』
「俺~~~!!」
ステージを歩いて、観客に向かって指を差す鬼っ娘達。
くるくると指を回して、天上を指し示す。
『それはダメよ』
『叶わぬ恋なのー!』
『でも大好き♡』
観客に向かって投げキッスをする鬼っ娘三人娘。
『私のハートは』
『誰にも奪わせないの!!』
『奪っていいのは、邪王様だけ♡』
レオンはずるっとこけた。
作詞作曲や振り付けは全部任せてある。
皆を楽しませるアイドルソングなのに、邪王崇拝歌になっている。
案の定、観客の一部がブーイングしていた。
「あの子達、今アドリブで僕にアピールしたのかな……?」
レオンは汗を拭いながら椅子に座り直した。
「多分そうだ。愛されているな、邪王」
魔王に肘で腕を小突かれる。
神王もこれは面白いと茶化してくる。
「僕がつくった曲じゃないのに。茶化さないでよ、神王。僕への賛美歌みたいだ」
ステージで汗を流して楽しそうに歌って踊る鬼っ娘。
――僕のために歌っているのか。
レオンはそう感じ取った。
自分のために頑張ってくれる鬼族の子達。
感動しないわけがなかった。
彼女らとの絆も深く刻まれている。心に。
前世のときよりも、他者と密接に関わるのが怖くなくなったのかもしれない。
愛を与えれば同じだけ返ってくるから。
いや、それ以上に返ってきているのかもしれない。
鬼山家の当主というだけで、辛い目に遭ってきた怜音。
今度の生は失ってきた青春を取り戻す物語だといいなとレオンは思った。
「アイドルって、ずっと笑顔だな。疲れないのか?」
神王が訊く。
「疲れていても、元気で勇気を与えられる存在がアイドルだよ」
「アイドルは大変なのだな。パフォーマンスが満点だ」
「夢と希望を与えるのがアイドルだから」
「曲が終わったぞ。捌けていく」
神王がステージを指した。
次はビジュアル系ロックバンド鬼明庵が登場する。
ステージの両端で、ボワッと炎が噴き出した。
青メッシュの赤髪ウルフカットで中肉中背、鬼石。
金髪ロングヘアで背の低い鬼雷。
金と緑の短髪で長身美形の鬼風。
紅色の逆立った髪型で大柄な鬼炎。
水色の髪のアシンメトリーで小柄な鬼水。
黒髪のオールバックで長身、鬼黒。
みんな真っ黒な衣装に身を包んで、金と銀のチョーカーと腕輪を着けている。
メイクもド派手だ。
『みんな、楽しんでるかー!?』
リーダーの鬼石が声を張り上げる。
「イエー!!」
大音声の歓声が上がる。
『いくぜ、俺達の歌、【鬼相天外】!! 聴いてくれよな!!』
ギターの鬼雷がソロで演奏する。
アゲアゲの曲だ。
熱気が凄まじい。
ここまで熱が届くほどに。
みんな頑張って練習したのだろう。
レオンは感慨深く皆を見守った。
『だから伝えられるよ 俺のハートが叫んでいる
声が届くまでずっと 何度でも歌おうぜ
枯らすまで花開け 俺達の熱いソウルで
響け轟け 君の元へ今すぐ駆け出すよ』
鬼風のベースと鬼雷のギターが音を紡いでいく。
ボーカルの鬼石も魂を込めた雄叫びを上げる。
鬼炎がドラム、鬼水はサブボーカル、鬼黒はダンス。
音楽祭は大盛況で、観客は二十万人を超える。
みんな汗を振り乱して、音楽に没頭している。
ボーカルの鬼石が両手を真上に上げて叩いて、観客の声援を煽る。
『せいやーっ! せいやーっ!
俺達のロックでハートにビート!
思い出せ地獄を生きた戦士達よ!!
音を楽しめ 皆の炎が燃えたぎる!!
俺は熱き父の魂受け継いでるぜ イェーッ!!』
この歌もレオンに向けた歌だった。




